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発達障害の子どもの「独り言」。原因は?対策はできる?

更新日

発達障害のあるお子さまの「独り言」は、無理にやめさせる必要はなく、止めることがストレスになるため、「見守る」のがよいと言われています。
その一方で、

  • 周囲から注目されてしまった/いぶかしげな顔をされてしまった
  • 園や学校などでお友達や先生から指摘を受けてしまった

などの理由で、場面に合わせて、独り言を調整できるようになってほしいと願う保護者の方も多くいらっしゃいます。
今回の記事では、発達障害のお子さまの「独り言」の原因と、その対策法について紹介します。

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そもそも、なぜ「独り言」が多いのか

発達障害の特性によって「独り言」を止められないお子さまは少なくありません。
発達障害のあるお子さまの「独り言」の原因について、代表的な3つのケースを紹介します。

① 口にすることで自分を安心させている

ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性のあるお子さまの場合は、特定の言葉やフレーズなどを反復して口にすることで、心地よさを感じたり、安心できたりすることがあります。慣れない環境や人が多い場所にいるときなど、不安やストレスを感じたときに、心を落ち着かせるためにおこなっているケースです。
「こだわり特性」から、同じ言葉を繰り返して声で発するケースもあります。

人がたくさんいる場所で頭を抱えながら呪文のように独り言を言う少年

② 音に反射的に反応する、思ったことを口に出す

ASDの特性のあるお子さまの場合は、耳に入ってきた情報(アナウンス・会話・TVの音など)や、目に入ってきた情報(建物・看板・人物など)に対して、自分の頭の中に浮かんできた言葉を、反射的に発することがあります。

  • 自動音声が耳に入る→自動音声の続きを放送の前に話はじめる
  • 好きなアニメの看板が目に入る→キャラクター名を大きな声で言う
  • 特徴的な容姿をした人が目に入る→容姿に関して思ったことをそのまま口にしてしまう

いずれも、本人としては「入ってきた情報」に対して言葉を発しているのですが、周囲にいる人にはそれが分からないために「独り言」としてとらえられるケースです。ADHD(注意欠如・多動性障害)の「衝動性」や「多動・多弁」の特性によって、思いついたことや見かけたことを口に出すケースもあります。

街を歩いてきょろきょろしながら、ビルを見ながら「○○ビル」、ゲームキャラクターをみながら「SSRの勇者」という小学生男子

③ 声に出すことで頭の中の整理をしている

発達障害の特性がない方も、自分の作業に集中しているときに、思わず独り言が出てしまうことがあると思います。保護者の方の中にも、買い物リストを作るとき「卵もなかったな」や、料理をしているとき「ごはんのスイッチいれたっけ?」など、自分が考えていることを声に出した経験のある方がいるのではないでしょうか。
何かを思い出したり、手順を確認したりするときなど、頭の中にある情報をまとめようとして、無意識に声に出ていることがあります。

発達障害の特性によって「静かにすべき場所でも声を出してしまう」「声量のコントロールが苦手」という課題がある場合には、その「独り言」が目立ってしまうのです。

工作をしながら工程を声に出す小学生女子

これらの「独り言」を発してしまう原因に加え、ASDの「他者視点の弱さ」の特性によって「人目を気にした行動が苦手/周囲の反応が読み取れない」ために、場面を問わずに声を発したり、大きな声を出してしまったりすることがあります。

不安や緊張から、独り言が出ている場合には、無理にやめさせようとすることで、不安に対処できなくなって、かえってパニックになることがあります。
「独り言」を止めるのではなく、声のボリューム調整を学ばせること、独り言を言ってもいい場所を決めてそこに移動するなどをルールにすることで対処をしていくことが必要です。

ご家庭で実践できる「独り言」対策

お子さまの年齢・発達段階や、独り言の原因によって、効果の出やすいアプローチが異なりますが、まずチャレンジしたい3つの対策方法と効果の出やすい褒め方ついて紹介します。

① 声のボリュームを練習する

ASDの「あいまいな表現が苦手」の特性のあるお子さまの場合、「ちょっと静かにしてね」「もっと声のボリュームを落とそうか」「声が大きいよ」などという指示の理解が難しいことがあります。
声のボリュームを教えるときの注意ポイントを紹介します。

 抽象的な表現は避ける

「ちょっと」「少し」「もっと」など、具体的な尺度がくみ取りづらい表現は避けましょう。
声のものさしやTVのボリュームなど、定量的で明確な指示を出すようにしましょう。

【声のものさしを使った練習】
⓪心の中で  ①ひそひそ声  ②小さな声  ③ふつうの声  ④大きな声  ⑤どなり声
など、声のボリュームを段階ごとに数字に置き換えます。
視覚的に読み取れるグラフなどを用いて、お子さまに説明するのがベターです。

実際に⓪~⑤の声を出しながら、ボリュームの調整を練習します。決まった言葉(好きなキャラクター名や「お父さん・お母さん」など言いやすい単語)を、声を発さない⓪から順番に取り組みながら、自分の声の大きさをコントロールする方法を覚えていきます。

説明をするだけではなく、場面を提示してクイズ形式で実際に声を出させてみると理解度が高まります。「レストランではどの声?」「④の声を使うのはどんなとき?」などです。
「独り言」を①=心の中で声を発さずに言えること、静かにしなければならない場所で小さな声で話すことができるようになること、場面に合わせた声の大きさを覚えることを身につけていきます。

声のものさしはこちらよりダウンロードできます。

 間接的な表現は避ける

「声が大きいよ」「ここはバスの中だよ」「人がいるよ」など、直接的ではない言い回しは避け、取ってほしい行動をはっきりと伝えましょう。
ASDの「文脈を読む(言葉にされていないこと、空気や行間を読むこと)のが苦手」の特性がある場合は、その言葉の意図が理解できないことがあります。
声のものさしを使いながら、「誰にも話しかけないで声を出したいときは①だよ」「バスに乗っているから②の声にしようね」など、場面の説明とともにお子さまに指示をはっきりと伝えるようにしましょう。

声のものさしを指さすお母さんと、声をだす子ども(ものさしを使った声のボリューム練習)

② 「独り言」を話してもいい場所・場面を事前にルールにする

ASDの「場の空気を読むのが苦手」「明文化されていないことが苦手」の特性があるお子さまの場合、事前にルールを決めておくことをおすすめします。
「静かにすべきところ」を直感的に察することに難しさがあるため、

● 独り言を我慢する場所
「図書館」「バス・電車」「学校の授業中」「ゲームセンター」「校庭」など
● 独り言を言ってもいい場所
「自分の部屋」、外にいるときにどうしても言いたくなったときは「人がほかにいない個室(トイレ・休憩室)に移動する」

などのルール決めをしておきましょう。
場当たり的に「ここでは静かにしてね!」と言っても、すぐに対応できなかったり、パニックになってしまったりすることがあります。
その場で静かにできたとしても、自分の中ではルール化されていないために、行動が改善されない可能性が高いと言えます。

「独り言」を止めることで大きな負担がかかる場合には、先ほどお伝えした「声のものさし」×「場所・場面の設定」でルールを決めるようにしましょう。
「一人で電車・バスに乗っているときは①の声」などです。

電車に乗っているときは①の声だよ、と説明する父親と、場面を想像する子ども

③ 「独り言」を我慢できたときの状況や場面を振り返る

前回のコラム【発達障害のお子さま】本当に効果がでる「しつけ」のポイント で紹介した「“できた”に注目」をする方法も、ぜひ取り入れてみてください。
一日中独り言を止められないということはなく、声を発していない場面があるはずです。
その場面がどんな状況・環境なのかを考え、同じ場面を再現するサポートをするようにしましょう。
例えば、「自分が好きなマンガを読んでいるとき」「音楽を聴いたり、ノイズキャンセラー(耳栓)をつけたりしているとき」「お気に入りのぬいぐるみが手元にあるとき」など、お子さまによって独り言を止められる条件があります。

不安やストレスによって独り言が出てしまう場合には、できるだけ精神的な負担がかからない状況を作ることで改善されるかもしれません。
お子さまによって「独り言」の原因はさまざまであるために、原因に応じたアプローチが必要です。
まずはお子さまの様子を観察し、「独り言が我慢できた」瞬間を見逃さないようにしましょう。

電車の中で外を見ながらひとりごとを呪文のように唱えていたが、マンガを読んでヘッドフォンをすると静かにできた少年

褒め方のコツ

独り言を我慢したり、場面に応じた適切な声のボリュームで話したりすることが出来たときには、褒めるようにしましょう。
この「声の出し方」に関しては、褒めるタイミングがとても重要です。

声の大きさをコントロールするときには「静かにしている」「大きな声を出さない」という状態を持続させることが大事です。
「順番が守れた」「歯磨きができた」など、ある一つの行動を達成してほしいときには、「できた」という結果を褒めるのに対し、良い状態を持続させてほしいときには「できている」ことを褒めることが大切です。

例えば、「(独り言を含め)おしゃべりしない、トイレや体調が悪いときには①の声で言う」というルールを決めていた場合、
適切な行動ができている=静かにできている状態であるときに、「静かにしているね」と声をかけ、その後もその状態を持続させるために「今も静かにできているね」「いいね!ちゃんとルールを守れているね」という声掛けを複数回おこないます。
「良い状態を持続する」ことが良いことであることを理解してもらうためです

逆に、「大きな声から小さな声にコントロールできた」場合など、行動を切り替えたとき“だけ”褒めてしまうと、子どもは褒められたいために、あえて「大きな声を出す」ようになってしまうことがあります。

褒め方のコツは、発達障害のある子どもを伸ばす「ペアトレ」の実践内容を紹介|好ましい行動を増やす「褒め方の工夫」でも紹介していますが、これに加えて、持続させるための褒め方を心がけるようにしましょう。

冒頭でもお伝えしたとおり、「独り言」は無理に止めないようにしましょう。
やめさせるのではなく、「他者に迷惑がかからないように小さな声にする」ことをまずは目指すのがおすすめです。
そのあとに「静かにしなければならないところでは言わない」練習をするなど、段階的なアプローチをしていきましょう。

専門家に相談することも選択肢のひとつ

発達障害による独り言について調べると「独り言はやめさせない」「周囲に理解を求めることが大切」などと語られることが多いようです。
もちろんいずれも重要なことではありますが、その一方で「お子さまの将来の自立」を考えたときには、適切な場面で適切な言動がとれることを目指す必要があります。

お子さまによって「できる範囲」に差があったとしても、その「できる範囲」で社会的な行動を習得することが大切です。
できることやできるスピードは異なっても、成長しない子どもはいないと、私たちは考えています。
ご家庭だけで対策が難しい場合や、アプローチ方法が分からない場合には、専門家に相談することも選択肢のひとつです。
どう伝えればいいか分からない、注意することで子どもが傷つくかも…と悩んでいる保護者の方は少なくありません。

児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」・放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、お子さま一人ひとりにとって“今”必要な療育を提供しています。
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