発達障害のある子どもがお風呂を嫌がる理由とその対処法
「子どもがお風呂嫌いで困っている」子育てあるあるのひとつではないでしょうか?
発達障害のあるお子さまの場合、障害特性が原因で「お風呂に入ること」に大きな苦痛を感じるケースがあります。また、自分の状況や気持ちを言葉にするのが苦手で「なぜお風呂に入ることが嫌なのか」をうまく説明できないお子さまも多くいます。
お風呂を嫌がるのが「まだ遊んでいたいから」「面倒くさいから」という理由であることもしばしばですが、「障害特性」が関係している場合には、適切なサポートが必要です。
目次
「お風呂が苦手」なお子さまの特性あるある
発達障害の特性は十人十色であり、お子さま一人ひとりによって「苦手」な理由は異なります。まずはその理由を知ることが「お風呂嫌いの子どもへの対応」のファーストステップです。
「お風呂嫌い」の原因となる障害特性の代表例を紹介します。お子さまに当てはまるものがあるか、チェックしてみてください。
障害種別を記載していますが、併存しているケースもあるため、参考までにご確認ください。
【代表例】障害特性とお風呂が苦手な理由
ASD自閉症スペクトラム障害 ADHD注意欠如・多動性障害 DCD発達性協調運動障害 |
感覚過敏(触覚過敏)がある ASD
シャワーが痛い、熱すぎると感じることがある。
強いこだわりやマイルールがある ASD
お風呂の手順(リンスを〇回流す、首→右肩→右腕…など決まった順に洗う等)が自分の中で決まっており、その通りにやらなければ気が済まない。その手順の多さから「面倒くさい」という気持ちになってしまう。
過去の体験がフラッシュバックする ASD
シャンプーが目に入ってしまったことや湯舟で溺れかけたこと等が以前にあり、そのときの恐怖心や痛みがトラウマになってしまっている。
「清潔」の概念が分からない、他者視点が分からない ASD
お風呂に入る=身体を清潔にしなければならない理由が分からない。人からどう思われるかを想定すること(他者視点に立つこと)が難しい。なぜ身だしなみを整えなければいけないのか、社会ルールを理解していない。それによってお風呂に入る必要性を感じない。
行動の切り替えが苦手 ADHD
今やっていること(TVを見る、ゲームをする等)をやめることができない。興味があることを優先してしまい、お風呂がどんどん後回しになる。
見通しが立たないことが苦手 ADHD
「お風呂に入る」ことは複数の作業(服を脱ぐ、髪の毛を濡らす、泡立てる等)から成り立っているため、何からどのように取り組むのか、いつまでに終わるかなどの行動の見通しが立たずに不安になる。
手先の不器用さがある DCD
身体を洗う、こするという動作に困難さがあり、ちゃんと洗うことが苦手。また洗い忘れがあることを指摘され、自信がなくなってしまい、お風呂に入ること自体に抵抗感がある。
お風呂に入ること自体に抵抗感があるのか、お風呂での「顔に水がかかる」「体や髪を濡らす」「湯船に浸かる」「身体を触られる(洗われる)」などの工程に苦手があるのかを見極めてみましょう。お子さまの様子をうかがいながら、何がハードルになっているかを知っていくことが大切です。
特性による「苦手」に対して、無理に改善をさせようとするのは避けましょう。どのような工夫をすれば、「お風呂が嫌」ではなくなるのかを考えていくようにしましょう。
障害特性への工夫とコツ
発達障害の特性を踏まえ、「お風呂嫌い」を克服させるための工夫とコツを紹介します。
特性や状況によっては、すぐに効果が出ないこともありますが、継続をして一歩ずつ毎日取り組んでいくことが大切です。
①「お風呂に入る意味」を子どもが分かるように説明する
「他人からどう思われているか」を意識するのが苦手なお子さまの場合は、身だしなみを整えることが本人にとって“当たり前”ではないことがあります。「清潔」でいるべき理由を論理的に説明するようにしましょう。自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さまは「自分視点」でしか物事をとらえにくい傾向があるため、「自分が損をする」という説明をすることがポイントです。
例: 身体を洗わずに、汚れが肌についたままにすると、肌が病気になることがあるんだよ。
例: シャンプーをしないと、髪の毛がくさくなっちゃうよ。くさいと、友だちが遊んでくれなくなるかもしれないよ。
②お風呂に入る「事前予告」をする
行動の切り替えが苦手、見通しが立たないことが苦手なお子さまの場合は、事前に「いつ」「何を(具体的に)」するのかを説明しましょう。
例: 〇時になったら、ゲームをやめて、お風呂に入る準備をするよ。
例: お風呂に入ったら、まずシャワーで髪の毛を濡らして、シャンプーをするよ。そのあとにスポンジで身体を洗ったあとに、湯船に5分つかろうね。そのあとに身体を拭いて、髪を乾かして、〇時くらいには部屋に戻ってくるよ。
③お風呂が「楽しい場」になる工夫をする
- 入浴剤(お湯で溶けるとおもちゃが出てくるものや、色がつくもの、泡風呂など)を使う
- シャンプー等でごっこ遊びをする
- お風呂用のおもちゃを使う、お風呂でできるゲームをする
など、お子さまが興味をそそられるような工夫をしてみましょう。
いつもと違う湯舟(色がついている、泡立っている等)に抵抗感を持つお子さまもいるため、お子さまに合わせて調整をすることが大切です。
例: 今日はあわあわのお風呂にするよ。
例: じょうろとやかんをもって、お風呂でおままごとをしよう!
④子どもが恐怖心や苦痛を感じない方法を探る
お風呂に入ることに「怖さ」を感じている場合には、先に保護者の方が手本を見せることで安心感を与えられることがあります。
例: お母さんが先にシャンプーをするね。目をぎゅっと閉じてれば、痛くないよ。
例: シャンプーハットをかぶっていれば、泡が目に入らないよ。
感覚過敏によって「苦痛」がある場合には、
- シャワーではなく桶を使う
- お風呂の温度を調整する
- 刺激の弱いスポンジや手で身体を洗う
- シャンプーが入らないように、シャンプーハットをかぶる、ガーゼで目を隠す、水中眼鏡をかける
などの工夫がありますが、お子さまが苦手と感じることとその対処法は一人ひとり異なるため、専門家などに相談しながら対応することをおすすめします。
お子さまの「お風呂嫌い」の理由に応じて、さまざまな工夫にチャレンジしてみましょう。どの工夫がお子さまに効果がでるのかは、やってみないと分からないことが多くあります。伝え方や指示のしかた、できるようになったときの褒め方などを工夫することで、積極的にお風呂に入ってくれるようになることもあります。
「発達障害のあるお子さまへの接し方·伝え方のコツ!注意点は? 」と「「発達障害のある子どもを叱ってはいけない」は間違い?正しい叱り方は 」の記事も、ぜひあわせて読んでみてください。
お風呂に入れたら「褒める」ことを忘れずに!
お子さまの成長スピードは一人ひとり異なります。お子さまに合わせたスモールステップで、一歩ずつ達成感を得られるように進めていきましょう。例えば、「湯船に1分以上浸かれるようになる」「駄々をこねずにお風呂に向かえる」「一人でお風呂に入る」など年齢や状況に応じた目標設定をすることが大切です。
「できた!」が増えたときには、行動ができたそのタイミングに·できるだけ具体的に褒めることを心がけましょう。
適切に「褒める」ことで、自己肯定感が高まり、好ましい行動を定着させやすくすることができます。
逆に、できなかったときに叱ったり、「いつもそうやって入ってくれたらいいのにね!」のように説教をしたりすることは、避けましょう。
叱られることを恐れて、やるモチベーション自体が下がったり、せっかくやったのに、余計なことを言われるなら最初からやらないという気持ちになったりしがちです。
お子さまのこと、ご家庭での困りごとやお悩み、まずは話してみませんか?
児童発達支援ハッピーテラスキッズ・放課後等デイサービスハッピーテラスでは、無料プログラム体験会を開催しております。
お気軽にお問い合わせください。