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発達障害のお子さま向け「絵カード」活用ポイント|基礎知識編

更新日

絵カードは、言葉を覚えるための知育ツールとして知られていますが、発達障害のあるお子さまの生活や学習をサポートする療育ツールとしても活用することができます。

絵カードのスマホアプリも増えてきており、ご家庭内でも取り入れやすくなってきました。
一方で、発達障害のあるお子さまが利用する場合には、適切な使い方をしないと効果が出づらいことがあります。今回は、絵カードを効果的に使うための「活用ステップ」について詳しく解説します。
段階的な練習が非常に重要です。

絵カードを作るとき・使うときのポイントは、発達障害のお子さま向け「絵カード」活用ポイント|実践編でお伝えします!

アイキャッチ

「絵カード」とは

絵カードとは、「日々の行動」「身の回りのもの」など日常生活に関わる単語が、視覚的に分かりやすく描かれたカードです。

単語や言葉を教えるだけではなく、発達障害がありコミュニケーションが苦手なお子さまの学習や生活をサポートすることもできます。
とくにASD(自閉症スペクトラム障害)のあるお子さまの「視覚支援(目で見て理解できる環境を作ることでサポートすること)」のツールとして利用されることもあります。

  • 自分の気持ちを言葉で伝えることが苦手
  • 口頭での指示や説明を理解することが苦手(逆に、目で見える情報の理解は得意)

このような困りごとのあるお子さまの手助けをしながら、発達を促すサポートをすることができます。

絵カードイラスト

「絵カード」の活用ステップ

絵カードにはさまざまな使い方があります。

知育ツールとしては、「単語(物や行動等)の名称」「単語の組み合わせ方(服+着る、歯+磨く等)」「単語のジャンル分け(野菜、乗り物等)」など、主に言葉の理解を深めるために活用されることが多いです。

療育ツールとしては、言葉に遅れがあるお子さまや、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性があり「コミュニケーションが苦手」「耳で聞く情報よりも、目で見る情報のほうが理解しやすい(視覚優位)」というお子さまをサポートするときにも活用できます。
療育ツールとして「絵カード」を活用するときには、段階を追って練習を重ねていくことが必要です。
コミュニケーションスキルの習得レベルにあわせて、ステップごとに進めていくようにしましょう。

1. 要求を伝える練習

まずは、基本的なコミュニケーションの練習をおこないます。

子どもが「自分がしてほしいこと・やりたいこと」を伝えるために、絵カードを使って要求したいことを伝えてもらいます。
相手(保護者の方や先生)は要求されたことに対して応えてあげます。ここで要求を無視したり、拒否したりしてしまうと、コミュニケーションをとろうとするモチベーションが下がってしまうことがあるため、必ず絵カードで要求されたことをかなえるようにしましょう。

言葉の理解はしているものの、うまく話すことができないお子さまに有効です。
この練習を通じて、「自分の要求や気持ちを伝えて、相手に応えてもらう」というコミュニケーションの基礎を理解することができます。

コミュニケーションの基礎とは「要求したことに、相手が応えてくれる」という双方向のやりとりです。
絵カードを使って「要求をすることで、相手が応えてくれた」という成功体験を積むことで、コミュニケーションの楽しさを知ることができます。

子どもが「おやつ」の絵カードを出して「おやつがほしい」という要求をする、お母さんはおやつをもってくる

2. 指示を聞く練習

「相手に要求を伝えて、応えてもらう」というコミュニケーションに慣れてきたあとは、「相手の要求を聞いて、応える」ことを学んでいきます。
保護者の方や先生が「今やってほしいこと」を絵カードで指示し、お子さまがそれに応える練習をおこないます。

絵カードには、単語だけ(例:「歯」と「歯ブラシ」と「磨く」が別)のものと、行動(例:「歯磨き」で1枚)になっているものがあります。お子さまの発達段階に応じたカードを選ぶようにしましょう。

言葉の理解が未発達のお子さまの場合には、物を取ってきてほしい“もの”のカード(例:リモコン、ティッシュ、おかし等)をいくつか用意しておき、それを持ってくることができた場合には褒めるという練習を繰り返します。

言葉の理解がある程度できているお子さまの場合には、“もの”と“行動”がセットになっているカード(「トイレをする」「歯磨き」等)を見せて、指示をします。すぐに応じられない場合は、絵カードを見せて、一緒にその行動をおこなうことで、絵カードを見せられたときに取るべき行動が何かを理解させます。

「要求を出す」ができるようになったあとに、「要求を聞く」にチャレンジしていきます。
このときに、お子さまが理解しやすい(すぐ行動がとれる)絵カードに絞っておくようにしましょう。例えば、
・物を持ってくる=子どもが持ち運べるもの(リモコン、おかし等)
・行動=その場ですぐにできる(手洗い、トイレ等) などです。

リモコンを持ってくる子どもと、リモコンの絵カードを見せながら褒める父親

3. 手順(段取り)を理解する練習

基本的なコミュニケーションのスキルを身につけた(①②をクリアしている)あとは、手順(段取り)を理解する練習に取り組んでいきます。
口頭の指示だけでは理解ができない場合や、目で確認できないことに不安を感じる場合にも有効です。

作業の手順を理解する
歯磨きやお風呂などの手順を「使うもの」と「行動」の絵カードを見せながら教えていきます。

行動の段取りを理解する
園や学校に行く前の「朝の準備」などの段取りを「行動」の絵カードを見せながら、事前に教えていきます。
実践するときには、行動ごとの絵カードを見せることで、「次に何をするか」が理解しやすくなります。

絵カードで指示をしたのに、お子さまが行動をとらなかった場合、
・理解をしていない
・理解はしているが、やりたくない
のどちらなのかを見極める必要があります。
やりたくない」の場合には、そもそもアプローチが異なるため、絵カードを使った練習をする場合には、苦手な行動は避けるようにしましょう。
「理解をしていない」の場合には、その行動のとり方を学び直すようにしましょう。

一日の流れや予定変更を理解する
園や学校の一日のスケジュールについて絵カードを見せながら教えていきます。もともと予定していた行動が変わる場合には、変更がある前後の行動を再度おさらいしたうえで、変更点を明確に伝えます。
特性によって、見通しが立たない(何をするか分からない)ことや、急な予定の変更があることが苦手なお子さまは少なくありません。事前に「やること」や「流れ」を「目で見える情報」で教え、不安な気持ちを軽減させることで、パニックが起こりづらくなります。

慣れない環境で自分がなにをされるか分からない場面(例えば「病院」「美容院」など)に、強い抵抗感があるお子さまは多いです。
病院であれば、診断の流れ:服をめくる⇒聴診器⇒お医者さんが身体に当てて音を聞く…などの段取りを、行動の前に絵カードで見せることで「次に何をするのか」を知ることができ、安心感につながります。

絵カードを使って朝の段取りを教える父親と話を聞く子ども

【番外編】想像力を高める練習

とくにASD特性があるお子さまの場合、「想像力」に課題が見られることがあります。
放課後等デイサービスや児童発達支援などの療育の現場では、絵本を使いながら「絵から状況を把握する」「登場人物の気持ちを考える」「次の展開を予測する」などのトレーニングをおこないますが、絵カードを活用することもできます。

例えば、「いつ」「だれが」「どこで」「なにをした」の絵カードをそれぞれ3~4つずつ用意し、くじのようにして引きながら、物語を作っていく練習などがあります。

紙芝居のように絵カードを使えば、さまざまなバリエーションを用意できるためおすすめです。
「遊び」としてゲーム感覚で楽しんで取り組みながら、発達を促すことができます。

いつどこでだれが何をしたカードを組み合わせながら、物語を作る子どもと一緒に楽しむ母親

絵カードを上手に取り入れるコツ

絵カードの認知度が高まる一方で、なかなか効果が出ない、慣れてくれないと悩まれる方も多いようです。
今回お伝えしたように、絵カードをうまく取り入れていくためには、コミュニケーションスキルの習得レベルに合わせた、段階的な練習が必要不可欠です。

コミュニケーションとは「双方向のやりとり」であり、それを学ぶことがファーストステップです。「双方向のやりとり」が理解できていない段階で、絵カードを見せたとしても、お子さまはなかなかいうことを聞いてくれないでしょう。

発達障害の特性によってコミュニケーションが苦手なお子さまは少なくありません。
コミュニケーションが「楽しいこと」になるように、褒めることが何より大切です。
そのためにも、スモールステップでの練習がポイントになります。一歩ずつ、「できた」ことを増やし、成功体験を積ませるサポートをしていきましょう。

「靴を履く」絵カードに従って靴が履く子どもと褒める父親

児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」 放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、
お子さま一人ひとりの特性や発達段階に寄り添い、“今”必要な療育を提供しています。
お子さまだけではなく、保護者の方へのサポートもおこなっています。
ご家庭での「褒め方」や「接し方」に悩んでいる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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