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発達障害のあるお子さまへの合理的配慮【事例紹介】

更新日

小中学生に通う生徒の8.8%が発達障害の可能性があることが、2022年12月におこなわれた文部科学省の調査で明らかになりました。
ニュースなどでも多く取り扱われ、学校での支援の拡充が注目されています。

障害のある子どもへの支援について調べる中で、「合理的配慮」という言葉を目にした方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、「合理的配慮」について、分かりやすく説明をしていきます。

実際に提供されている合理的配慮の事例もご紹介します。

学校における合理的配慮とは

学校における合理的配慮とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に教育を受けるために、学校側が必要かつ適当な変更・調整をおこなうこと」です。

障害のある子どもが、学校生活を送るときに生じる障害による障壁(バリア)に対し、子ども一人ひとりの状況に応じて、学校側が個別に対応をするというものです。
「障害者差別解消法」では、公立学校での合理的配慮の提供は法的義務になっています。

障害のあるお子さまへの支援に関する法律は、定期的に見直され、整備されてきています。
一方で、学校側では、発達障害への理解不足が課題となっており、どのようなサポートを提供すべきかが分からずに、十分な支援がおこなわれてないことがあります。

学校側だけに任せるのではなく、保護者の方自身が、お子さまの特性を理解し、お子さまに合ったサポートが何かを知っておくことがポイントとなります。

そもそも「合理的」とは

「合理的配慮」の「合理的」とはどういうことかというと、「必要かつ適当」であり「過度の負担を課さない」ことだとされています。
「合理的」と捉えられないものは、学校側に配慮事項として申請をすることができません。
また、お子さまへの適切なサポートをおこなうためにも、合理的か否かは重要なポイントです。

 障害による困難さであること

合理的配慮は、障害によって、学校生活に困難さが生じている場合に提供されるものです。
その障壁(バリア)が障害によるものではないものは、合理的ではありません。
例えば、「○○さんが苦手だから、別のクラスにしてほしい」「景色を見たいから、窓際の席がいい」などです。

一方で、特性を知らない方からすると「障害とは関係がない、わがまま」に見えることでも、実は特性に原因があるということもあるため、学校側に説明し理解を促す必要があります

 本人が必要としていること

障害による「苦手」であっても、本人が助けを必要としてないことは、合理的ではありません。
本人自身が努力や工夫をすれば解決できることであれば、お子さまの成長を促すためにも、過剰な配慮は避けるべきと言えます。

 子ども一人ひとりに合わせること

「ADHD」「ASD」「SLD(学習障害)」など診断名でひとくくりにし、障害種別ごとのテンプレート化された支援をおこなうことは、合理的ではありません。
診断名が同じであっても、お子さまごとに発達段階や特性はさまざまです。お子さまの状態に合わせたサポートが必要です。

 学校側に過度な負担にならないこと

求める配慮事項が、学校側の体制面や財政面などによって対応が難しい場合には、合理的ではありません。

例えば、「識字障害があるので、個別対応の先生を常時つけてほしい」「聴覚過敏があるので、個室を用意してほしい」などです。
学校側が対応できること・できないことをすり合わせていくことが重要です。

学校側と当事者側(お子さま本人と保護者の方)の合意のうえで、配慮事項は決定します。
適切なサポートを受けるためにも、保護者の方自身が「依頼できる基準」を知っておくことが大切です。

発達障害のお子さまへの合理的配慮事例

発達障害のあるお子さまへの学校における合理的配慮の事例を紹介します。
先述したとおり、お子さまの発達段階や特性によって、一人ひとりに合う配慮事項を見つけることがポイントとなるため、参考としてお読みください。

CASE1:割り込んで発言をしてしまう

授業中に、先生が説明をしているときや、他の生徒が発言をしているときに、割り込んで話をはじめてしまう。休憩時間に、友達との会話をさえぎって、自分の話をしてしまうことがある。

原因となる特性例

ADHD(注意欠如・多動性障害)
衝動的に発言する、話したい気持ちを抑えられない、人の話を聞くことができない 等

ASD(自閉症スペクトラム障害)
明文化されていないルールの理解ができない、場の空気を読むことができない 等

配慮事例

 クラスで「話すとき・聞くときのルール」を決めて、前もって共有をする。 「話し終わるまで、他の人は発言するのを待つ」「相手のほうを見て話す」「意見があるときは挙手する」等。

 「話すとき・聞くときのルール」を目に見える場所に掲示する。ルールを守れなかったときは、注意をするだけではなく、ルールに従った「正しい行動」をとりなおしてもらう

 先生からの指示を受け取りやすい(表情・しぐさ・声など)場所に座席を配置する。

 休み時間や放課後に、話を聞く時間を設定する(友達と過ごす時間を確保することも大切)。

特性のあるお子さまだけルールを課すのではなく、クラス全体のルールとすることで、「自分だけができない、自分だけが責められている」と思わせないようにすることができます。
発言をやめさせるのではなく「順番を待ってから話そう。待っている間に、話したいことを紙に書いてから発言をしよう」等と伝えることで、落ち着いた対応ができるようになります。

CASE2:文章を書くことが苦手

授業の内容や連絡事項(持ち物や宿題等)を板書されたときに、ノートに書き写すことができない。口頭で説明されたことをメモすることができない。

原因となる特性例

ADHD(注意欠如・多動性障害)
衝動的に発言する、話したい気持ちを抑えられない、人の話を聞くことができない 等

ASD(自閉症スペクトラム障害)
明文化されていないルールの理解ができない、場の空気を読むことができない 等

SLD(学習障害)
読み書きに苦手がある 等

配慮事例

 板書が間に合わない場合には、スマホやタブレットで写真を撮ることを許可する。

 板書内容を紙で書いて事前に渡す。穴埋め式のプリントを用意する。(学校側に負担のかかり過ぎない範囲で対応をする)。

 あいまいな表現を使った指示は出さずに、できるだけ定量的かつ具体的な表現で指示を伝える。

「板書(メモ)をとることが苦手」は発達障害あるあるです。
どのような工夫をすれば授業に参加できるようになるのかを、お子さまの特性に応じて考えていくことが大切です。
ASD特性がある場合には、説明時の表現のしかた(定量的・具体的・言い回しは統一する等)についても学校に共有をするとよいでしょう。

CASE3:テストを受けることが難しい

とくに集中力が必要とされる場面において、周囲からの刺激(他の生徒が文字を書く音や紙を動かす音等)が気になり気が散ってしまう。緊張から、パニックになることがある。

原因となる特性例

ADHD(注意欠如・多動性障害)
注意が続かない

ASD(自閉症スペクトラム障害)
感覚過敏がある、完璧に終わらせたいというこだわりがプレッシャーになる 等

配慮事例

 個室でテストをおこなう。

 聴覚過敏がある場合には、イヤーマフ(耳栓)の着用を許可する。

 パニックを起こしていたり、緊張して感情が高ぶっていたりする場合には、時間を改めてテストをおこなう。

テストは学校生活の中でもとくにストレスを感じやすい場面です。
通常の授業であれば、障壁になっていない特性であっても、テストなどの緊張感のある場面で、特性による苦手が強くみられることもあります。

このほかにも、「味覚過敏があり、給食を食べることができない」という場合には「弁当の持参を許可する」、「教室から飛び出してしまうことがある」という場合には「外に出たくなったときには感情カード(喜怒哀楽やストレス指数をカードにしたもの)を提出させる」などがあります。一つの困難さに対し、一つの対処だけでサポートをすることが難しいケースもあります。

例えば、コミュニケーション(話す・聞く・説明するが苦手、人間関係がうまく築けない等)や感情のコントロール(怒りをおさえられない、かんしゃくを起こす等)、集団行動(チームで活動することができない、協調性がない等)などの課題については、段階ごとに目標を設定し、学校・家庭(+放課後等デイサービス)と連携をとりながらサポートを進めていきます。

合理的配慮を依頼するときの流れ

学校へ合理的配慮の提供を依頼するときの流れについて紹介します。
お子さまの状況や特性について、適切に学校に説明をする必要があるため、事前に情報を準備することからスタートします。

STEP1:障害による「困難」を整理する

まずは、障害の特性によって生じている、学校生活における「困難」を洗い出していきます。
入学前であれば、保育園・幼稚園や障害福祉サービス(児童発達支援等)での集団生活や日常生活の中で見られた困難でよいです。
どのような特性があり、教育の場でどのような難しさが生じているか・生じる可能性があるかを、紙などに書き出してまとめていきましょう。

お子さまに「学校で困っていることはある?」などと聞いたときに、障害による特性とは無関係のものがあげられることがありますが、保護者の方が振り分けをしていくことが大切です。

STEP2:学校側に依頼をしたいことを整理する

STEP1で書き出した「困難」の中で、お子さま自身で対処できるものとそうではないものを整理していきます。
お子さま本人に「これは自分でできそう?」など、意思を聞いてみることも大切です(年齢や発達段階によっては、お子さま自身で判断することが難しいこともあるため注意してください)。
どのようなサポートがあれば、対処できるかが分かっている場合には、その内容をまとめるようにしましょう。

また、学校側にサポートをしたもらいたいものは、優先順位をつけるようにしましょう。
障害福祉サービス(放課後等デイサービスなど)を利用している場合には、施設のスタッフに配慮事項の相談をすることもおすすめです。

STEP3:学校に相談をする

本人もしくは保護者の方から、学校に合理的配慮の提供について申し出をします。
発達障害などの目に見えづらい障害がある場合には、当事者側から意思を伝えることが大切です。
学校側では、担任の先生などお子さまと関わる学校関係者への実態把握をおこないます。

STEP4:学校との調整をする

本人・保護者の方と学校側で、お子さまの状況や支援内容についてすり合わせをおこないます。
この際に、STEP1・2でまとめた情報が役立つので、資料などにして持参するようにしましょう。
双方の合意のもとで、配慮事項が決定されます。

STEP5:振り返りと見直しをする

学校側では、合意形成後より、支援計画に沿って合理的配慮の提供を進めていきます。
お子さまに学校での様子を聞きながら、適切な配慮がされているかを確認していきましょう。

振り返り面談をおこない、現状の確認と今後の配慮事項や支援の方針について振り返りをしながら、今後の支援を見直していきます。

学校側にも人員などの制限があるため、特性による困りごとのすべてに対するサポートをすることが難しいケースが多いです。
お子さまの状況をふまえ、最も必要な配慮事項は何かを考え、優先順位をつけながら取り組むことがポイントです。

家庭・学校・福祉の連携がポイント

療育のスモールステップとは|うまくいかないときのコツ|学校と連携をする の記事で紹介したとおり、学校にサポートを依頼するときには、放課後等デイサービスと連携することができます。

障害児通所支援事業(障害福祉サービス)である放課後等デイサービスでは、お子さまの発達段階や特性を見極めながら、日々支援をおこなっています。
放課後等デイサービスとの連携を図ることで、お子さまの障害や適切なアプローチ方法について、学校側により深く理解をしてもらうことができます。

文部科学省と厚生労働省によって、放課後等デイサービスと学校の連携を推進する取り組み「トライアルプロジェクト」が発足されました。

家庭・学校(教育)・放課後等デイサービス(福祉)の三者で連携が推進される理由には以下があります。

  • 学校側が発達障害のお子さまへの対応に慣れていないことが多いこと
  • 三者間で情報共有をすることで、お子さまに必要な支援を見極められること
  • 三者それぞれで、お子さまへのアプローチが異なると、お子さまを正しく導くことができないこと 等

お子さまへの適切な配慮事項を決めるためには、発達障害の特性への理解が必要です。家庭や学校だけでは難しいことが多いため、療育機関である放課後等デイサービスに頼ることがよいでしょう。
またお子さまへのアプローチ(指導や支援)が、三者で異なる場合、「学校ではこう言われたのに、放課後等デイサービスでは違うと言われた」など、お子さまが困惑してしまうことがあります。
情報共有を密におこない、一貫した支援をおこなうことが大切です。

お電話や学校への訪問、関係者の話し合いなどをおこないながら、連携をとっていきます。
具体的には以下の対応があります。

  • お子さまの状況(発達段階や特性、困りごとや課題等)について情報共有をおこなう
  • お子さまに必要な支援をおこなううえでの役割分担をおこなう
  • お子さまのへの支援方針を決める(学校側と放課後等デイサービスの支援計画の共有) 等

お子さまの安心・安全と一貫した支援を目指すためにも、家庭・学校(教育)・放課後等デイサービス(福祉)の連携が推奨されています。

未就学児のお子さまの場合にも、保育園・幼稚園と、児童発達支援(未就学児を対象とした障害福祉サービス)との連携を図ることができます。

「放課後等デイサービス ハッピーテラス」では、お子さまの学校生活をサポートするだけではなく、お子さま自身が「自立」を目指すための支援をおこなっています。
学校での困りごとへの対策はもちろん、社会に出るために必要なスキルを習得するためのプログラムを提供しています。
まずはお気軽にお問い合わせください。


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