柏教室

ASDの子どもが「同じ質問を繰り返す」理由と対応を現役指導員が解説!

こんにちは!

千葉県柏市の放課後等デイサービス(主に発達障害・特性のある中高生対象・就労準備型:プログラミングコース、e-Sportsコース、就労準備コース)

「ハッピーテラス柏教室」です。

「いま何時?」「次の予定は?」

お子様から何度も同じ質問を繰り返されるとき、保護者の方は「さっきも言ったのに…」と、戸惑いや疲れを感じてしまうことがあるかもしれません。特に、思春期を迎える中学生のお子さまとのコミュニケーションとなると、その対応に悩む場面も増えてくるのではないでしょうか。

実は、この「同じ質問を繰り返す」という行動は、自閉スペクトラム症(ASD)の特性の一つとして見られることがあります。これは、本人のやる気や聞く気がないわけではなく、発達障害・脳機能の特性によるものです。

今回は自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまが同じ質問を繰り返す背景にある理由と、ご家庭でできる具体的な支援や対応のヒントについて解説します。

こだわりやルーティンの背景にあるのは「同じでなければ不安」という気持ちかも?

自閉スペクトラム症(ASD)の「こだわり」特性があるお子さまは、「いつもと同じ」であることに強い安心感を覚えます。反対に、「いつもと違う」という変化に対して、私たちが想像する以上に強い不安やストレスを感じやすい傾向があります。

  • 決まった道順でなければ落ち着かない
  • 毎日同じ服を着たがる
  • 物の配置が変わると、元に戻さないと気が済まない

こうした特定の物事へのこだわりやルーティンは、変化の多い世界で自分を保つための、お子さまなりの大切な工夫だと考えることができます。これは「慣れや根性」、「わがまま」で解決できるものではなく、まず「変化が苦手」という特性への理解が、お子さまが安心して暮らせるような支援の第一歩となります。

なぜ「いつも通り」が伝わりにくい?:シンボル機能のつまずき

では、なぜASDのお子さまはそれほどまでに「違い」に敏感なのでしょうか。今回は「シンボル機能」の発達の弱さ、という視点から解説します。

シンボル機能とは、目の前にある具体的な物事でなくても、言葉やマークなどを使って物事を理解したり、表現したりする力のことです。例えば、私たちは形や色が少し違う複数のりんごを見ても、すべて「りんご」という一つのグループとして認識できます。これは、「りんご」という言葉が、それらの共通点をまとめたシンボル(象徴)だと理解しているからです。

しかし、ASDのお子さまの中には、このシンボル機能の発達がゆっくりな場合があります。そのため、一つひとつの物事を、個別のできごととして捉える傾向があります。

保護者の方が「いつも通りにやってね」と伝えても、お子さまにとっては「いつも通りって、いつのこと?場所も時間も人も違うのに、何を同じにすればいいの?」と混乱してしまいます。さっきと今とでは状況が違うため、「これはさっきと同じことなのか、違うことなのか」が分からず、不安になってしまうのです。

このシンボル機能の特性は、他にも以下のような行動として現れることがあります。

  • 言葉を文字通りに受け取ってしまう:「ちょっと待ってて」と言われると、具体的に何分何秒待てばいいのか分からず混乱する。
  • ごっこ遊びや見立て遊びが苦手:積み木を車に見立てて遊ぶ、といったことが難しい。

また、そのほかにも「あいまいなものの理解の苦手さ」も背景にあると考えられます。

  • 時間の感覚を掴むのが苦手:「あと少し」がどのくらいの長さなのか分からない。

「いま何時?」と聞き続ける中学生の女の子の事例

実際にハッピーテラスに通うお子さまの保護者から、このようなご相談がありました。

「中学2年生の娘が、10秒おきに『いま何時何分?』と聞いてくるんです。時計はリビングにあるのですが…」

このお子さまは、ASD(自閉症スペクトラム障害)と知的発達症の診断を受けていました。この繰り返しの質問は「エコラリア(オウム返し)」とも呼ばれるASDの特性の一つで、その背景には、不安の表れや、コミュニケーションのきっかけを探しているなど、さまざまな理由が考えられます。

このケースでは、お子さまが「時間」という目に見えず、刻一刻と変化するものに対して強い不安を感じている可能性が考えられました。「さっきと今とでは、もう時間は変わってしまったかもしれない」という気持ちから、何度も確認せずにはいられなかったのです。

不安を和らげた2つのアプローチ

そこで、ご家庭で2つのことを試していただきました。

  1. アナログ時計からデジタル時計へ
    ご家庭の時計を、針で時間を示すアナログ時計から、数字で表示されるデジタル時計に変えてもらいました。これにより、「長い針が…」と考える必要がなく、パッと見るだけで現在の時刻を正確に理解できるようになりました。
  2. タイムタイマーの活用
    「ちょっと待ってて」「あと〇分で出かけるよ」といった声かけの際には、スマートフォンのタイムタイマーアプリを見せるようにしました。残り時間が視覚的に(円グラフの色が変わっていくなどで)分かるようになったことで、「あとどれくらいなのか」が見て分かり、安心感につながりました。

こうした環境の調整をおこなった上で、お子さまから「今何時?」と聞かれたときには、すぐに答えるのではなく、「時計を見てごらん」と促したり、「〇時〇分だね。あと何分で出発だっけ?」と質問を返したりして、お子さま自身が時間を確認し、見通しを立てる練習を重ねていきました。

その結果、何度も時間を尋ねる行動は少しずつ減り、お子さまも落ち着いて過ごせる時間が増えていったのです。

まとめ:特性の理解が安心できる毎日への第一歩

今回は、ASDのお子さまが同じ質問を繰り返す理由と、その対応について解説しました。この行動の背景には、多くの場合、「先の見通しが立たないことへの不安」が隠れています。

大切なのは、「なぜ、この子はこの行動をするのだろう?」とお子さまの特性に寄り添い、不安の原因となっているものを取り除くための工夫をしてあげることです。

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子育ての悩みや発達に関するご相談など、いつでもお気軽にハッピーテラス柏教室までお問い合わせください。お子さま一人ひとりに合った支援を提供し、「できた!」の体験を積み重ね、自信を育むお手伝いをしています

ハッピーテラス柏教室では、現在「金曜:就労準備コース」「火曜:プログラミングコース」に空きがございます。発達障害の特性のあるお子さまの「就労・進路」にお悩みの小学校高学年~中学生・高校生の方がいらっしゃいましたら、些細なことでも結構ですのでぜひ、ご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新もお楽しみに!

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