柏教室

発達障害と「姿勢の悪さ」:パソコン作業における疲れにくい姿勢を保つポイントを解説!

こんにちは!

千葉県柏市の放課後等デイサービス(主に発達障害・特性のある中高生対象・就労準備型:プログラミングコース、e-Sportsコース、就労準備コース)

「ハッピーテラス柏教室」です。

「うちの子、なんだかいつも姿勢がふにゃふにゃしている…」
「パソコン作業をしていると、すぐに肩が凝って集中力が切れてしまう…」

ご家庭や学校、職場で、そんな風に感じたことはありませんか?もしかしたら、その「姿勢の崩れ」の背景には、発達障害の特性が関係しているかもしれません。

今回は発達障害の方に多くみられる「姿勢」の問題について、特性や原因について理解を深めながら、パソコン作業(プログラミング・文字入力・タイピングなど)における姿勢を保持するためのトレーニングについてご紹介していきます!

ぜひ最後までお読みください!

※もし痛みや身体の変形など、医学的な評価が必要だと感じた場合は、本記事だけで判断せず、医師にご相談ください。

【目次】

発達障害と姿勢の関係

発達障害のある人が「姿勢が崩れやすい」原因

PC作業・タイピングにおける「良い姿勢」とは

発達特性による姿勢の悪さへのアプローチ

おわりに

発達障害と姿勢の関係

まず、発達障害について簡単にご紹介します。

  • ASD(自閉スペクトラム症) の方の中には、感覚が非常に繊細だったり、逆に鈍感(鈍麻)だったりする方がいます。例えば、椅子の素材がチクチクして気になってしまい、そわそわして姿勢が崩れることがあります。また、複数の情報を同時に処理するのが苦手なことや、自分が「どう見られているか」を意識することが苦手なゆえに、「姿勢を保つ」という無意識の行為にまで注意を向ける余裕がなくなってしまうこともあります。
  • ADHD(注意欠如・多動症) の方の中には、注意を持続させることが難しいという特性があります。そのため、同じ姿勢をじっと保つこと自体が、大きな苦痛やストレスになる場合があります。体を揺らしたり、頻繁に立ち歩いたりするのは、脳の「覚醒水準」が落ちないように保つための無意識の「自己調整」であることも多いのです。
  • LD(学習障害)やDCD(発達性協調運動障害) の方は、体の動きをスムーズに連携させる「協調運動」や、体の中心を安定させる「体幹コントロール」に難しさを抱えていることがあります。これが、文字を書いたり、ボールを投げたりといった動作だけでなく、日常的な姿勢の保持にも影響しています。

一番大切なことは、これらの姿勢の崩れが 「本人のさぼり・なまけではなく、無意識に起こることが多い」 と理解することが必要です。

発達障害のある人が「姿勢が崩れやすい」原因

では、具体的にどのような仕組みで姿勢は崩れやすいのでしょうか。今回は、4つの仮説をご紹介します。

  1. 感覚処理の偏り
    私たちは、自分の体が今どうなっているのか(傾き、手足の位置など)を、無意識のうちに感じ取っています。これは、耳の奥にある平衡感覚や、筋肉・関節からの信号(固有受容覚)などのおかげです。しかし、これらの感覚システムがうまく機能しづらいことがあります。そのため、自分では「まっすぐ」座っているつもりでも、実際には傾いていたり、どこに力を入れて良いかわからなかったりすることがあります。
  2. 筋緊張の調整の難しさ
    私たちの体は、適度な筋肉の張り(筋緊張)によって支えられています。この調整がうまくいかないと、「低緊張」といって、力が入りにくく体を支えるのが難しくなります。逆に、常に力が入ってしまう「過緊張」の状態で、つま先立ちが癖になっているようなケースもあります。どちらも、安定した姿勢を保つことが難しい要因になっています。
  3. 体幹の弱さ
    体幹とは、文字通り「体の幹」となる胴体部分のこと。この部分が弱いと、木の幹が細いと枝葉を支えられないように、頭や手足をうまく支えることができません。感覚の問題や筋緊張の問題は、結果的にこの体幹の弱さに直結することが非常に多く、座っていても、立っていても、歩いていても、体の軸がぶれている(ふにゃふにゃしているように見える)ように見られやすくなってしまいます。
  4. 課題・環境のミスマッチ
    本人の身体的な要因だけでなく、外的な要因も大きく影響します。例えば、課題が難しすぎて集中力が途切れたり、周りが騒がしくて注意が散ったりすると、姿勢を保つための余力まで失われてしまいます。また、「椅子や机の高さが体に合っていない」という環境要因もあります。

もう少し具体的に、特性ごとの姿勢の傾向を見てみましょう。

  • ASD:感覚過敏によって、特定の素材の椅子を嫌がったり、背もたれに背中がつくのを不快に感じて浅く腰掛けてしまったりすることがあります。また、つま先立ちで歩くことが習慣化し、ふくらはぎの筋肉が常に張っているというケースも見られます。
  • ADHDの:椅子をガタガタ揺らす、貧乏ゆすりをする、立ち歩くといった行動は、一見すると落ち着きがないように見えます。しかし、これは脳の覚醒レベルを調整するための「動いて整える」という、本人にとって必要な行動である可能性を理解する必要があります。

もちろん、これらはあくまで傾向であるため「姿勢が悪いから発達障害」ということではありません。また個人差は大きいですが、「低緊張」や「固有受容覚の未発達」は、多くの特性に共通して見られる、体幹の弱さや姿勢の不安定さに繋がる重要な要素です。

  • 座っているとき:背中が丸まる猫背、頻繁に頬杖をつく、椅子を前後に揺らす、体育座りを長く続けられない、椅子からずり落ちそうになったり、床に足を投げ出して座ったりする。
  • 立っているとき:どちらかに体が傾いている、ふらふらと安定しない、顎が前に突き出ている、腰が極端に反っている(反り腰)、膝が常に曲がっていたり、逆に反り返っていたりする(反張膝)。
  • 歩く・走るとき:足裏全体で着地するようなペタペタ歩き、まっすぐ走れない、何もないところでよく転ぶ、動きがぎこちない。
  • 学習・作業をしているとき:文字を書いたり、キーボードを打ったりする短い時間でさえ姿勢が保てず、すぐに集中が途切れてしまう。

なお、発達障害と感覚特性について詳しく知りたい方は、「感覚特性」とは?感覚過敏・感覚鈍麻ってどんな症状?もぜひお読みください!

https://happy-terrace.com/column_data/sensory-characteristics/

PC作業・タイピングにおける「良い姿勢」とは

ここからはパソコン作業時の姿勢にフォーカスします。正しい姿勢は、疲れにくさ、集中力の持続、そして作業効率の向上に直結します。今回は注目すべきポイントとして、「足→椅子→机→画面→入力デバイス」の順番で確認していきます。

  1. :まず、足の裏全体が、しっかりと床または足台(フットレスト)についていることを確認します。これが全ての基本です。足元が不安定になると、その歪みが膝・腰・背中へと全身に影響を及ぼします。
  2. 椅子:理想は座面の高さが調整できるもの(37~43cm目安)。座った時に膝の裏と椅子の先端の間に指1~2本分(3~5cm)の隙間ができるように深く座り、骨盤をグッと立てることを意識します。
  3. :高さ調整機能があれば60~72cmが理想ですが、固定なら65~70cmが一般的。座った時に、前腕が机とほぼ水平になり、肘の角度が90°以上になる高さを目指します。
  4. 画面:目から画面までの距離は40cm以上確保しましょう。画面の上端が、自分の目線の高さか、それより少し下に来るのがベスト。視線が自然と水平より10~20°下を向く角度に調整します。
  5. 入力デバイス:キーボードは体の近くに引き寄せます。手首が上向きに反り返らないように注意し、厚みのあるキーボードを使う場合はパームレストを併用すると楽になります。
  6. 休憩:タイマーなどを活用し、25分~45分作業したら、2分~5分の小休憩を挟み、立ち上がって伸びをしたり、深呼吸をしたりする習慣をつけましょう。

なおタイピング時の「手首」の位置は、場面によって使い分けることが重要です。

  • 置く(つける)メリット:腕の重さを机やパームレストに預けられるため、安定しやすく、疲れにくい。
  • 置く(つける)デメリット:手の可動域が狭まり、キーボードの端や上段のキー(数字キーなど)が打ちにくくなる。
  • 浮かせるメリット:指や手の自由度が高く、どのキーへもスムーズに動かすことができる
  • 浮かせるデメリット:常に腕の力で支えるため、軸が乱れやすく、長時間だと疲れやすい。

発達特性による姿勢の悪さへのアプローチ

ハッピーテラスでは「プログラミングコース」「就労準備コース」を行っています。ここでは、就労準備コースで行った「セルフモニタリング」の内容を少しご紹介します!

① 正しい姿勢を「知る」:まずは下記のチェックリストを、イラストを使いながら確認をしていきました。なお、発達障害の特性で見られる「視覚優位」の特性によって、言葉だけだと実際に自分の身体がどうなっているのかがわかりにくいことがあります。そのため、絵を見ながら、ポイントとなる体の部位を実際に手で触りながら行うと、より意識がそこに向かうようになります。

足:床か足台に、足裏が「ベタッ」とついているか?
骨盤:一度スッと立ち上がるようにしてお尻を座面に置き直し、骨盤を立てて背もたれに軽く預ける。
肘:角度は90°以上で、前腕は机と水平か? 肩の力は抜けているか?
画面:目線と同じか、少し下にあるか? 距離は40cm以上離れているか?
手首:反っていないか? 「置く」か「浮かす」か、今日の自分で選ぶ。
休憩:タイマーをセットしたか?(25~45分作業 + 2~5分休憩)

② 体の「土台」を育てる

次に、基本的な体の使い方を楽しく学べるようなトレーニングを行います。たとえば、前傾姿勢になりがちなお子さまであれば、背中をまっすぐ起き上がらすための筋肉に意識が行くようなトレーニングが有効です。

③ 「環境」を調節する

慣れてきたら、活動の最初に「姿勢とパソコンの調節」という時間を1分だけ設けるようにしていきました。

おわりに

発達障害のある方に多く見られる「姿勢の崩れ」は、感覚、筋緊張、体幹、そして環境といった様々な要因が複雑に絡み合って生じます。「体の土台を育てる(ボトムアップ)」と「環境を整える(トップダウン)」を両輪で進め、最終的に「自分で気づける力」を育むという流れを作ることが必要です。

ハッピーテラス柏教室では、現在「金曜:就労準備コース」「火曜:プログラミングコース」に空きがございます。発達障害の特性のあるお子さまの「就労・進路」にお悩みの小学校高学年~中学生・高校生の方がいらっしゃいましたら、些細なことでも結構ですのでぜひ、ご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新もお楽しみに!

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