中野ルーム

流動性推理とは?意味や特徴、支援のヒントを解説します

こんにちは!
児童発達支援事業所「ハッピーテラスキッズ中野ルーム」です。

「WISC-V(ウィスク5)検査の結果で“流動性推理(FRI)が低い”と言われたけれど、どういう意味?」

「家庭でどんなサポートができる?」

こうした質問をお受けしました。

2022年に改訂された新しいWISC-V(ウィスク・ファイブ)知能検査には、「流動性推理(FRI)」という新しい指標が加わりました。 これまでの検査(WISC-IV)では「知覚推理」としてまとめて評価されていた部分が、「視空間」と「流動性推理」の2つに分かれることになりました。

この記事では、「流動性推理」とは何か、そしてお子さまの「考える力」を遊びの中で育むヒントについて分かりやすく解説します。

流動性推理(FRI)とは?

流動性推理(Fluid Reasoning Index: FRI)とは、一言でいうと「初めて見る課題や新しい状況に対して、過去の知識や経験だけに頼らず、その場にある情報からルールや関係性を見つけ出し、論理的に答えを導き出す力」のことです。

「工夫して考える力」や「応用力」「新しい状況への適応力」と言い換えることができます。

WISC-V検査では、主に「行列推理(図形のパターンを見抜く)」や「バランス(天秤の重さの関係を考える)」といった課題を通して、この「見えないルールを見つけ出す力」を測定します。

WISC-Vでの新しい指標(知覚推理との違い)

これまでのWISC-IV検査では、「知覚推理(PRI)」という指標が、目で見た情報を処理する力全般を示していました。

今回のWISC-Vへの改訂で、この「知覚推理」が2つに分かれました。

視空間指標(VSI)

目で見た形や位置関係を正確に捉える力(例:積み木の見本を正確に再現する)。

流動性推理指標(FRI)

目で見た情報から「法則」や「関係性」を見つけ出し、新しい問題に応用する力(例:図形のパターンの続きを推測する)。

この変更により、「目で見た形を把握するのは得意だが、そこからルールや規則性を推測するのが苦手」「単純な活動はできるが、応用問題になると戸惑ってしまう」といった、お子さま一人ひとりの認知特性を、より詳しく理解できるようになりました。

流動性推理が得意な子・苦手な子の特徴

流動性推理の力は、お子さまの思考の特性や、日常生活での行動からも観察することができます。

🎯 得意な子の特徴

  • パズルや論理的なゲーム、戦略を考える遊びが好き
  • 初めての課題にも意欲的で、応用問題で力を発揮する
  • 物事を筋道立てて考えることが得意で、数学や科学などが得意な場合がある

🚩 苦手な子(低い場合)の特徴

  • 「いつもと違う」ことや、急な予定やルールの変更が苦手で、混乱しやすい
  • 見通しを立てることが苦手で、新しい環境や活動に不安を感じやすい
  • 一つのやり方にこだわってしまい、うまくいかない時に別の方法を試すなどの「柔軟な切り替え」が難しいことがある
  • お友だちとのトラブルの解決策を見つけたり、会話の中の「暗黙のルール」を理解したりするのが難しい場合がある

なぜ「流動性推理」が幼児期に大事なの?

幼児期(5歳〜7歳前後)は、まだ難しい抽象的な課題ではなく、積み木やブロック、おままごとといった「具体物を通した試行錯誤」の中で、この力の土台が育まれていく非常に時期です。

「こうしたら、どうなるかな?」といろいろ試したり、「なんで?」と好奇心を持って物事の法則を発見したりする経験自体が、流動性推理の基礎となります。

また、この「柔軟に考える力」の困難さが、発達障害の特性と関連している場合もあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の特性である「同一性へのこだわり」や「変化への強い不安」は、流動性推理の苦手さの現れと捉えることができます。反対に、形を正確に捉える「視空間(VSI)」は非常に高いという特性が見られることもあります。

注意欠如・多動症(ADHD)の場合、不注意や衝動性といった「実行機能」の弱さが、流動性推理の課題(例えば、ルールを最後まで注意深く観察する前に答えてしまうなど)に影響を与えることがあります。

重要なことは、幼児期に「考える楽しさ」の土台を育むことだと考えられます。検査の結果も活用しつつ、お子さまが「何に困って良そうか」を解釈しながら、小学校の入学に向けて「これはなんだろう」「どうやってやるんだろう」などの「試行錯誤してみる自信」につながるように支援していきます。

家庭や支援の場でできる工夫

流動性推理をはじめとして、各種検査結果の指標については「上げよう」と思ってあげるものではありません。重要なことは、ここから想定される「困っていることの原因」について予測をして、少しでも生きにくくなくするための工夫を試行錯誤することです。

そのうえで、お子さまが夢中になって「試行錯誤」できることです。

✅ パターンを見つける遊びを取り入れる

  • ビーズで色の並びを作る
  • 絵カードで仲間分けをする

✅ 自由な発想を歓迎する

  • 「この箱、何にみえるかな?」など、正解が一つではない問いかけをする

✅ 「どうしてそう思ったの?」と理由を聞いてみる

  • 考えていることを言葉にする練習をすることで、「内言」を育てることにつながり

✅ 失敗を責めず、試行錯誤を応援する

  • 「うまくいかなかったけど、工夫していたね」と声をかける

「うちの子の特性かな…」と思ったら

流動性推理の力が高い・低いというのは、お子さまの認知特性(考え方のクセ)の一つです。 言葉で理解するのが得意なお子さまもいれば、目に見えないルールを直感的に見つけるのが得意なお子さまもいます。

  • 「WISC-V検査の結果をどう解釈すればいいか分からない…」
  • 「うちの子の特性に合わせた関わり方や支援のヒントが欲しい」
  • 「幼稚園・保育園でも、新しいルールに適応するのが難しいみたいで心配…」

こうしたお悩みや相談がございましたら、一度ハッピーテラスキッズ中野ルームまでご連絡ください。

ハッピーテラスでは、児童発達支援・放課後等デイサービスを通じて、発達検査の結果や一人ひとりのお子さまの発達状況や特性に応じたアプローチをおこなっています。 「苦手」の原因を見極め、お子さまの「好き」や「得意」を活かしながら、少しずつできることを増やしていきましょう。

【ハッピーテラスキッズ中野ルーム】
メール:kids-nakano@happy-terrace.com
電話:03-5328-1810