注意欠如・多動性障害(ADHD)とは?【知っておきたい基礎知識】
注意欠如・多動性障害(ADHD)とは、不注意や多動、衝動性などを主な特徴とする障害で、発達障害のひとつです。発達障害について詳しく知りたい方は「発達障害とは」をご覧ください。
どんな障害なの?診断基準やチェックポイントはあるの?年齢ごと、性別ごとに違いはあるの?など、ご質問を多くいただく内容にそって概要をまとめました。
目次
1.注意欠如・多動性障害(ADHD) 主な症状とは?
注意欠如・多動性障害(ADHD)の主症状として、以下の3つの種類があげられます。
主な症状①:不注意
「不注意」とは、適切な場面や場所で注意を向けることや、集中をしつづけることが難しい状態を指します。例えば、学校で授業に集中できずに他のことに注意が向いたり、忘れ物をしてしまったりするようなことが該当します。
主な症状②:多動性
落ち着きがなく、じっとしていることが難しい状態を指します。例えば、学校の授業中に立ち歩いてしまうことや、手遊びが止まらないことなどが該当します。
主な症状③:衝動性
自分の行動や感情を抑制することや制止することが難しい状態を指します。例えば、順番待ちができない、ちょっとした友達との言い合いでつい手が出てしまうなどが該当します。
これらの症状の組み合わせにより、ADHDは以下の3つのタイプに分類されます。
注意欠如・多動性障害(ADHD) 3つのタイプとは?
- タイプ① 不注意優勢型
「不注意」の特徴が強く出ており、「多動性」や「衝動性」があまり目立たないタイプです。 - タイプ② 多動性・衝動性優勢型
「多動性」や「衝動性」の特徴が強く、「不注意」の特性があまり見られないタイプです。 - タイプ③ 混合型
3つの主な症状の特徴が全て見られるタイプです。
3つのタイプの中では、タイプ③混合型の人数が最も多く、「ADHD」とはどれか一つの症状に限定されるのではなく、いくつか混合している可能性があることを理解しておかなければいけません。
2.注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断基準とは?
いくつかの症状が存在するADHDですが、どのような基準により診断されるのか、ご説明します。
当てはまるチェック項目が多い場合にも、自己判断はせずにお医者さんに相談してみるとよいでしょう。
診断は、現在の状態や成育歴の問診、行動観察や発達検査などさまざまな要素にもとづき、医師が総合的な判断をおこないます。
個人によって特性が異なるため、精神疾患の診断のためのマニュアルとしてアメリカ精神医学会が「DSM-5」を発行しています。アメリカで生まれたマニュアルですが、日本でも多くの医師に使われている現状があります。
「DSM-5」においては、ADHDの診断基準を5つの項目に分けて定めています。
不注意や多動性、衝動性などの症状について
この項目では、不注意や多動性、衝動性の症状がどれくらい出ているのかをチェックする項目となります。
「不注意」と「多動性、衝動性」の2つについて、最低6ヶ月続いている内容が6つ以上あるかをチェックします。
不注意
- 学業、仕事、また他の活動中に、注意して遂行できないことや、不注意な間違いをしてしまうことがある。
- 課題や遊びをしている最中、注意を持続することが難しい。
- 直接話しかけられた時に、聞いていないように見えることがある。
- 指示をしても従うことができないことがあり、学業や職場でやらなければいけないことをやり遂げられない。
- 課題や活動を順序立てておこなうことが難しい。
- 努力して取り組まなければいけない課題に対して、取り組むことを避けたり、嫌がったり、取り組むけれどいやいやおこなうようなことがある。
- 課題や活動をおこなうのに必要なものをなくしてしまうことがある。
- 集中しなければいけないのに、周りの環境から刺激を受けて気が散ってしまう。
- 普段から日常生活を送るうえで忘れっぽい。
多動性、衝動性
- よく手足をそわそわ動かしたり、トントン叩いたりすることがある。
- 席についていないといけないのに、席を離れてしまうことがある。
- 騒いではいけないところなのに、走り回ったり、高いところへ登ったりすることがある。
- 静かに黙々と遊んだり作業したりすることが、なかなかできない。
- じっとしてられないことが多く、まるでエンジンがついているかのように行動する。
- しゃべりすぎてしまうことがある。
- 質問を最後まで全部聞く前に、出し抜くようにして答えはじめてしまう。
- 自分の順番が来るまで待つことが難しい。
- 周りの人がおこなっている作業などを妨害したり、邪魔したりしてしまう。
不注意や多動性、衝動性の症状が12歳になる前から存在していた
早いと4歳以前に特性がみられることがありますが、原則として12歳までに症状が現れます。
幼いころは不注意や衝動性の特徴が誰しもみられることから判断がしづらく、診断がされる年齢として最も多いのは、8~10歳ごろです。ただし、不注意優先型の場合は症状が目立たず発覚が遅れ、診断が成人した後に診断されることもあります。
不注意や多動性、衝動性の症状が2つ以上存在している
ADHDは不注意や多動性、衝動性などの複数の症状が混合する場合が多いため、このような項目が付けられています。
今起きている症状により、勉強したり、働いたりすることに対して、邪魔をしてまったり、活動の質を下げてしまっている証拠がある
ADHDをはじめ、全ての発達障害のお子さまに通じて言えることですが、お子さま本人や周囲の人に、社会的な困難が実際に起こっていることがポイントです。
お子さまの自立や成長のために、とくに注目すべき項目です。
症状が、何かの病気や他の精神病性障害の経過中にだけ起きているわけではないこと。また、他の精神疾患ではうまく説明できないこと
一時的な状態の悪化ではなく、「長期的・普遍的に困難が起きているかどうか」で判断します。
発達障害以外の病気や精神の障害で、ADHDに似た症状が出てくることがよくあります。似ていても原因や対処法が異なるため、見極めることが求められます。
3.年齢ごとにADHDの症状の現れ方に違いはある?
さきほど、ADHDの診断基準の説明の際に年齢のお話が出てきましたが、幼い頃というのは何よりも好奇心であったり、目の前のことに夢中になってしまったりするため、不注意や衝動性に当てはまることがよくあります。
「もしかして子どもがADHDなのではないか?」と保護者の方が気づくタイミングとして、小学校へ入学したあとが多いのは、これらが理由です。周囲のお子さまが徐々に落ち着いていく中で、衝動性、注意の散りやすさ、それに伴うさまざまな困難が目立ってくるからです。
障害による特徴のことは「障害特性」や「特性」と呼ばれます。
ADHDのお子さまの場合、小学生、中学生と上がっていくにつれて、どのような「特性」が出てくるのか事例を紹介します。あくまでも「例」であり、すべてのお子さまに当てはまるわけではありません。
関連するお役立ちコラム
体験会に参加してみませんか?
「できる!」を増やすプログラムの無料体験会を開催中。
資料請求のみのご希望も承っております。
まずはお気軽にお問い合わせください。