発達障害の子どもの不潔なクセ|爪噛み・鼻ほじり等|対策編
前回のコラム 発達障害の子どもの不潔なクセ|爪噛み・鼻ほじり等|原因編 では、発達障害の特性によって「不潔・不衛生なクセ(人から汚いと思われてしまう行動)」をしてしまう理由について解説しました。
今回は、発達障害のお子さまによく見られる「不潔・不衛生なクセ」へのご家庭でのサポート方法を紹介します。
家庭でのサポート方法
不適切な行動へのアプローチをするときには、お子さまの行動の原因を見極めることが大切です。原因にあわせた対処をしないと効果がみられないことがあるためです。
前回のコラム 発達障害の子どもの不潔なクセ|爪噛み・鼻ほじり等|原因編 をあわせてご覧ください。
ご家庭内でサポートをするときのポイントと、不潔・不衛生なクセへの対処例を紹介します。
サポート時のポイント
不潔・不衛生なクセをやめさせようとするときには、お子さまの特性や行動の理由を踏まえてアプローチすることが大切です。
注意や指摘をするだけでは、効果がみられないことがあります。ご家庭でサポートをするときのポイントを紹介します。
否定しない
まず、行動そのものを否定せずに、お子さまに寄り添うことが大切です。
お子さまの不潔な行動を見かけると、つい大きな声を出したり、無理やり行動をやめさせようとしたり、叱ってしまいがちですが、かえって逆効果になることがあるため注意しましょう。
不適切なことだと理解していない場合には、そもそも叱られている理由が理解できません。
まずは、保護者の方が冷静になって、行動自体を否定せずに、なぜその行動をとったのかの理由をヒアリングするようにしましょう。
「汚い」と言わない
人前で鼻をほじったり性器をいじったりすると、思わず「汚いからやめなさい」と注意をしてしまいがちですが、特性によって誤学習をさせてしまうことがあります。
人前でやってはいけないものの、プライベートな空間であれば問題がない行動の場合には、「汚い」という表現は避けるようにしましょう。行動自体が悪いことだと認識してしまうことがあるためです。
「汚い」という感覚が分からない場合もあるため、「病気になることがあるからやめようね」「大事なところだから外では触らないよ」等、その行動によるお子さまにとってのデメリットや、行動をやめるべき理由を分かりやすく伝えることが大切です。
「代替案」を提示する
「不潔・不衛生なクセ」であったとしても、お子さまにとっては意味のある行動であることがあります。
例えば、自分を安心させるため、心地が良いため、おもしろいため等があります。とくに、ストレスや不安によって自分を落ち着かせるためにその行動をしている場合には、「代わりにやってもいいこと」がないと行動を止めることができないケースがあります。
行動の理由をふまえ、人前でやっても問題がない行動を代替案として提示するようにしましょう。
原因別のサポート方法
今回は、代表的な原因に沿って対処法を説明しています。
原因がひとつではないこともあります(他者視点の持ちづらさと自己刺激行動の両方の掛け合わせ等)。行動の原因によってアプローチ方法が異なりますので、あくまでも参考としてお読みください。
原因が「衛生観念がない、もしくは低い」である場合には、その行動をとることによって、お子さまにとって不都合なことが起こる理由を分かりやすく説明するようにしましょう。
「衛生観念はある」ものの特性によって不適切な行動をしてしまう場合には、お子さまに理由を聞いたうえで、理由にあわせた代替案をお子さまと一緒に考えるようにしましょう。
衛生観念の低さ
知的な遅れがある場合には「衛生」そのものの理解が難しいケースがあるため、不適切な行動の代わりに取るべき行動を分かりやすく教えて、「実際にやってもらって、褒める」ということを繰り返すことで、行動を定着させていきます。
「衛生」の理解はできるものの、相手の立場になって想像をすることが難しい場合には、お子さまを主語にした言葉で、その行動をとることによるお子さま本人のデメリットを教えていきます。
お子さまへの説明時のコツは「身だしなみ」の必要性を教えるときと同様です。
自己刺激行動
感覚刺激が必要になっている理由を探るようにしましょう。ストレスや不安・不満がある可能性があるため、お子さまにヒアリングをしながら、理由にあわせたアプローチをおこなっていきます。
ストレスや不安を軽減させる方法や、人前でやっても気にならない代わりの自己刺激行動を考えていきましょう。
衝動性の高さ
人前でやってはいけないことは理解しているものの、「すぐにやりたい」という気持ちを止められない場合には、なるべく「少しだけやる」「短い時間でやる」「(人に)分からないようにやる」ようにする練習に取り組みます。
例えば、鼻ほじりをしてしまうケースでは「2秒で終わらせる」などの練習をすることで、不適切な行動の時間を短くするアプローチです。
場面理解の難しさ
特性によって場面や状況にあわせた立ち振る舞いができない場合には、その行動をやってもいい場所を明確に指定することが必要です。
代替案を提示するときには、保護者の方からの押し付けではなく、お子さま自身が納得できるもので、代わりの行動として効果(安心できる・気持ちが落ち着く等)が得られるものにするのがポイントです。
すぐに行動を差し替えることが難しいことが多いですが、徐々に不適切な行動を減らせるようにじっくりと向き合っていくことが大切です。
また、チックや精神疾患が原因として考えられる場合には、医学的なアプローチが必要になることがあります。医療機関に相談をするようにしてください。
効果のある代替案を家庭の中だけで見つけることが難しいケースもありますので、療育機関(放課後等デイサービス・児童発達支援等)を頼ってみるのも、選択肢のひとつです。
行動の原因を知ることが大事
不潔・不衛生なクセの背景には、お子さまなりの「理由」があることがあります。
特に多いのが、ストレスや不安があるときに、自分を落ち着かせるためにおこなう「自己刺激行動」です。別の強い刺激を与えることで、ネガティブな感覚をかき消そうとしているケースです。
例えば、聴覚過敏があり「苦手な音」がしているときに、「痛み」という感覚を与えるなどがあります。手持ち無沙汰なときに、「やることがない・暇」という状態に耐え切れず刺激を与えることもあります。その理由を踏まえずに、無理に行動をやめさせようとすると、強いストレスを感じたり、パニックが起こったりすることがあります。
ただ単に「やめさせる」のではなく、その理由に応じて「原因を取り除く=ストレス・不安を解消する等」「代替行動をさせる」ことが重要です。
例えば、指しゃぶりの原因が「安心したいから」という場合には、安心感を得るための代わりの行動を考えていきます。お子さまに合わせた代替行動にすることが大切ですが、好きな素材のタオルを触る等があります。
今回の記事では、代表的な例について紹介をさせていただきましたが、お子さま一人ひとり「原因」が違えば、「対処法」も異なります。
不潔・不衛生なクセへのアプローチで最も重要なのが「行動の理由を知ること」です。
一方で、ご家庭の中だけでは、原因を突き止めることや、お子さまに合う代替行動を見つけること、代替行動を定着させることが難しいケースが多いです。
そんなときに頼れるのが、療育を提供する障害福祉サービスである「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」です。
児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、お子さま一人ひとりの発達段階や特性を見極め、“今”一番必要な療育を提供しています。
お子さまの発達が気になっているものの、誰に相談したらよいか分からない・どのようなサポートをしてあげるべきか分からない…そんなお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。