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発達障害の子どもと二次障害|早期予防が大事【事例紹介】

更新日

発達障害のあるお子さまは、その特性による苦手や困難によって生きづらさを感じることがあります。それが心のダメージや大きなストレスとなり「二次障害」になりやすいと言われています。
発達障害は「見えにくく、分かりにくい障害」であるために、周囲に理解されづらいことも原因のひとつです。

二次障害は、できるだけ早期に予防をすることが何よりも大切です。お子さまの困りごとに寄り添い、適切なサポートをするための知識を持っておくことが必要になります。

今回の記事では、二次障害の原因と予防について分かりやすく解説します。

二次障害とは

二次障害とは、言葉通り「最初に何かの障害があり、その次に起こる障害」ということです。
生まれ持った障害である「発達障害」による困難ではなく、生まれてから現在に至るまでの間に経験したネガティブな体験によって心にダメージを負うこと(心的外傷体験/PTSD)で、精神疾患や行動上の問題が起こってくることを指します。

現在の医学では、発達障害の原因である「脳・神経系の機能障害」を治療することはできませんが、発達障害により引き起こされる二次障害は治療や予防をすることができます。

発達障害は脳・神経系の機能障害であるため、周囲にとっては目に見えづらく分かりづらいものです。そのため、困りごとが生じたときに周囲が「障害によるもの」であることを理解できずに、叱責をしたり配慮をしなかったりすることがあります。
このことが、発達障害の子どもが二次障害になりやすい原因になっています。

先生への注意や友達とうまく関われず、心が傷ついた子ども

二次障害の種類・症状

発達障害の二次障害には、頑張っても社会にうまく適応できないことなどが原因で心理的な苦痛を感じる「内在化障害」と、反社会的な行為を特徴とする「外在化障害」があります。

多くの方がイメージするのがうつ病などの精神疾患ですが、万引きや飲酒などの問題行動も二次障害によるものであるケースがあります。

内在化障害

「自分自身」に影響を及ぼす主に精神面の障害で、以下の症状などがみられます。

  • 抑うつ・うつ病、不安障害、対人恐怖、強迫性障害、依存症などの精神疾患
  • 引きこもりなどの非社会的な行為

外在化障害

「他者」に影響を及ぼす行動面の障害で、以下の症状などがみられます。

  • 万引き・窃盗などの犯罪行為
  • 飲酒・喫煙・家出などの非行行為
  • 暴力・暴言など反社会的な行為

これらの反社会的な行為の背景として、反抗挑戦性障害や行為障害が併発している可能性もあります。

とくに非行行為などの問題行動は、思春期によく見られる「反抗期」と捉えて、見過ごされてしまうことがあります。
二次障害である場合には、適切なアプローチをしないと解決することができず、放っておくことで悪化してしまう可能性があるので注意しましょう。

タバコをやめなさいと言う母親と、タバコを吸いながらケンカをする中学生男子

二次障害の原因

発達障害があるお子さまの二次障害は、ネガティブな体験によって心にダメージを負うことで起こります。

ネガティブな体験をしてしまう背景には、発達障害が見えにくく分かりにくいために、お子さまに対して適切な理解や対応がされないことがあります。
周囲が、不適切な対応をすることで悪循環が発生し、二次障害が深刻化してしまうのです。

ネガティブな体験の具体例

さまざまなケースがありますが、今回は一例を紹介します。

  • 宿題を忘れて、過度な叱責を受けた
  • 爪を噛むくせをからかわれた
  • 苦手な食べ物を無理に食べさせられて、吐いてしまった
  • 漢字テストに合格できずに、夜遅くまで居残りをした

これらの背景に発達障害の特性がある場合には、本人にとってはどうしようもないことであるために、否定的な対応をされた理由が分からず混乱したり、「なぜ自分はできないのか」と自己嫌悪したりすることで、心に深い傷を負ってしまうことがあります。

苦手なものを食べて吐きそうな子どもと、食べ終わるのを監視する先生

ネガティブな体験が起こりやすい原因

これらのネガティブな体験は、主に発達障害の特性によって引き起こされます。
「特性と環境とのミスマッチ」と「特性に対する周囲の無理解」が原因です。

 特性と環境とのミスマッチ

日常生活や学校生活において、特性にあわない環境で過ごさざるを得ないことで、失敗体験を重ねたり、ストレスが蓄積したりすることがあります。
例えば、聴覚過敏があるのに「騒がしいクラス」に在籍することになった、不安障害があるのに「保護者の方の転勤が多い」などです。

 特性に対する周囲の無理解

失敗や不適切な行動の原因が、発達障害の特性によるものだと理解できない場合に、周囲にいる人は「なぜできないのか」「努力不足なのではないか」とみなしたり、叱ったり否定的な反応をしたりすることがあります。
前述したように、発達障害は「見えづらく分かりづらい」ことから、起こる理由が分からないためです。

二次障害の悪循環

本人の「特性による苦手」と周囲の「無理解」によって、ストレスの蓄積や自己肯定感の低下に繋がり、二次障害が発生してしまいます。

二次障害が単なる「問題行動」と捉えられてしまった場合には、その行動に対し叱ればおさまると考えてしまいがちです。
しかしながら、単純に「叱るだけ」ではさらに問題行動が増え、二次障害の悪循環が生まれてしまうことがあります。

①失敗する:特性による苦手によって、失敗や不適切な行動をする

②叱責される:周囲が失敗や不適切な行動の原因が分からず、叱責や否定的な対応をする

③自己嫌悪に陥る:本人も原因が分からないため、自分を否定したり自信を失ったりする

④‍二次障害が発生する:自己肯定感が低下することで二次障害が発生し、反社会的な行動をする

⑤さらに叱責される:二次障害の原因が分からず、周囲は「単なる反抗」と捉え叱責する

③に戻る:本人も原因が分からないため、自分自身に対し否定的になる

事例に沿って、イラストとともに詳しく説明していきます。

事例

注意力・記憶力に苦手があるADHDのAさん

学校の宿題を忘れることが多く、みんなの前で叱られたことによって深く傷ついてしまいました。
その結果、二次障害として万引きをするようになってしまいました。

学校の宿題を忘れるという失敗をし、みんなの前で先生に叱られる男子
失敗経験から自己嫌悪に陥り、二次障害により万引きを働き、さらに大人に叱責される悪循環の図

二次障害による問題行動を解決するためには、心のダメージによって行動が起こっていることを周囲が理解しなければなりません。そして、お子さまの心を守り、自己肯定感を高めるサポートをしていく必要があります。
周囲がお子さまにとって不適切な対応をしていることに気づくことができない場合には、状況が悪化し続けてしまうということです。

二次障害による問題行動は、お子さまが「わざと」起こしているのではなく、本人としても「なぜやってしまったのか」が分からないケースがほとんどです。
それにもかかわらず、その行動を過度に否定してしまうと、さらにお子さまを混乱させ、自己肯定感を下げることになってしまうのです。

二次障害の治療法

現在の医学では、発達障害の症状(特性)を治すことはできませんが、二次障害は治療することができます
主に「薬物療法」と「認知行動療法」の治療方法があり、医師の診断のもとでおこなわれます。

 薬物療法

抑うつ・うつ病、不安障害などの精神疾患は、症状に応じた服薬によって治療をしていきます。

 認知行動療法

「ものごとのとらえ方」を見直すことによって感情や行動に働きかける心理療法のひとつです。
ストレスに対応する力を身につけることができます。

精神疾患が症状としてみられる場合には、まずその症状に対する治療をおこないます。
二次障害の根本の原因にアプローチするためには、認知行動療法を併用することや、お子さまの周囲の環境調整をおこなうことも取り入れていく必要があります。

認知行動療法は、発達障害の特性へのアプローチにも取り入れられることがあるため、発達障害のかかりつけ医に相談するのもよいでしょう。

医師に相談する子どもと父親

【障害種別ごと】二次障害のよくある事例

さらに理解を深めていただくために、発達障害の障害種別ごとに、よく見られる二次障害の事例を紹介します。
二次障害の症状や原因はお子さまによって異なりますので、参考としてお読みください。

ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASDは、対人関係やコミュニケーションの苦手・こだわりの強さ・想像力の困難を特徴とする障害です。

● こだわりが強い ⇒不安障害

マイルールや儀式的な行動があり、それに固執する傾向がある場合、学校生活などの中でそのこだわり行動が抑制されることがあります。
その結果、強い不安を感じるようになることがあります。

● コミュニケーションが苦手 ⇒うつ病、不安障害、不登校

同級生や先生など周囲の人とのコミュニケーションにずれが生じたり、対人関係がうまくいかなかったりすることでストレスがたまり、うつや不安障害に陥ることや不登校につながることがあります。

ASDの特性は「不安障害」に結びつきやすいと言われており、不登校や摂食障害、自傷行為などを引き起こしがちです。
自分の心を守るための防衛反応であるため、無理にやめさせようとせず、お子さまに寄り添いながら特性へのアプローチをしていく必要があります。

友達の輪に入れずストレスが溜まる子ども

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHDは、不注意・多動性・衝動性を特徴とする障害です。

● 不注意 ⇒抑うつ・うつ病

不注意によって、宿題を忘れる・物を失くすなど失敗体験を繰り返してしまうことがあります。
失敗をすることで自己肯定感が下がり、うつ病などの精神疾患につながることがあります。

● 衝動性 ⇒反抗挑戦性障害、行為障害

衝動性によって、思ったことをつい口にすることでをついたり、反抗的な反応をしたり、怒りの感情を露わにしたりすることがあります。
これが習慣化することによって、二次障害に移行することがあります。

ADHDのあるお子さまが適切な支援や対応を受けられず、自己肯定感が下がってしまった場合には、反社会的行為を特徴とする二次障害に進行してしまう傾向があると言われています。
特性に応じたアプローチをできるだけ早期におこない、自尊心を守ってあげることが大切です。

怒りのコントロールができずに髪を抜く女子学生とドン引きする同級生

SLD(限局性学習障害)

SLDは、知的発達に遅れはないものの、「読む・書く・計算する」のうち特定の学習に対して困難がある障害です。

● 学習困難 ⇒うつ病、不登校

学力の遅れが、学校生活の中での自己肯定感の低下をまねき、うつ状態に陥ることや不登校につながることがあります。

学校生活の中では、基本的にクラスの中の多数派にあわせて教えることが多く、SLDのあるお子さまにとっては「あわない」進度や学習方法であることがあります。
「勉強についていけない」ことに悩み、自分のことを卑下してしまうことがあります。お子さまの特性やペースに合わせた学習方法を取り入れ、できることを一歩ずつ増やすことによって、自己肯定感を守ることが大切です。

勉強についていけずに焦る子ども

二次障害の対策

二次障害の最大の原因は、お子さまの自己肯定感の低下です。
お子さまの心を守ってあげることで、二次障害を予防することができます。

  • きっかけとなる「失敗体験」を減らすこと
  • 「成功体験」を増やし自信を持たせてあげること
  • 特性に応じたサポート(配慮や支援)をすること

が何よりも大事です。
そのためには、まず保護者の方がお子さまの特性を理解し、学校の先生など周囲の大人たちに理解を促すことが必要です。

二次障害は軽度のものも含めると、発達障害のある子どもの多くに見られる事象です。できるだけ早期に、特性にあわせたアプローチをすること、自己肯定感を守るためのサポートをすることで、二次障害を予防することができます。

自己肯定感を高めるために、成功体験を重ねることが必要です。小さなゴール=「スモールステップ」を設定することで、一歩ずつ「できた!」という実感を持ってもらうことができます。

スモールステップの詳しい内容は、以下のコラムをあわせてお読みください。

学校との連携については以下のコラムをあわせてお読みください。

できた事を自慢する子どもと褒める親

発達が気になるお子さまを対象とした障害福祉サービスである
⚫︎ 児童発達支援(未就学児のお子さま向け)
⚫︎ 放課後等デイサービス(小学校~高校生までのお子さま向け)
のご利用もぜひご検討ください。
お子さまの特性にあわせた支援をする「療育」だけではなく、保護者の方がお子さまを理解するためのサポートを受けることができます。

お子さまが自己理解をすることも必要

発達障害は「見えにくく、分かりにくい障害」であるとお伝えしましたが、それは周囲にとってだけではなく、お子さま本人自身も自分のことを理解するのが難しいということです。

特性によって「どうしてもできない」ことであるにも関わらず、周囲ができないことを否定されたとき、お子さま自身は「なぜできないのか、自分はなんてダメな人間なんだ!」と非常にネガティブな気持ちになり、心に深い傷を負ってしまいます。

保護者の方をはじめ、周囲の大人たちが「その子どもの特性を理解し、サポートをする」ことは二次障害の予防をするうえで非常に重要ですが、お子さまが自己理解をするための支援をすることも大事です。

小さい頃は保護者の方がフォローをすることができますが、将来の自立した生活を目指すためには、お子さま自身が「自分の障害のこと」「特性によって苦手なこと」「サポートが要ること」を理解することが必要です。

児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」は、お子さまの「できる!」を増やし、自己肯定感を高めながら、「苦手」との付き合い方を学んでいくサポートをおこなっています。まずはお気軽にご相談ください。


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