発達障害のお子さま向け「絵カード」活用ポイント|実践編
前回のコラム発達障害のお子さま向け「絵カード」活用ポイント|基礎知識編 では、絵カードを効果的に使うための「活用ステップ」について紹介しました。
段階的な練習が重要であることをお伝えしましたが、今回は、実際に絵カードを「作るとき」「使うとき」に押さえておくべきポイントについて解説します。
目次
「絵カード」を作るときの注意点は?
市販されているものやスマホアプリを活用するほかに、ご自宅でオリジナルの絵カードを作る方法もあります。実際に使っているものを写真にしたり、ネットからイラストをダウンロードしたりして作る方も多いようです。
ご自宅で作る場合には、絵カードを使いやすくするために以下のようなコツがあります。
- ラミネート加工をして強度を高める
- お子さまが片手で持てるサイズにする
- すべて同じサイズにする
上記に加え、発達障害の特性に応じた工夫が必要です。
子どもが理解しやすいものにする
一目見ただけで、何が描かれているかが誰にでも理解できるものにしましょう。
情報量が多かったり、示したいこと以外の要素が入っていたりする場合や、実際に使うもの・することとギャップがある場合などにお子さまが混乱してしまうことがあります。
具体的なNG例と対策を紹介します。
● 「ハサミ」カード:背景に、のりや道具箱が描かれている
● 「手洗い」カード:洗面台全体を撮影しており、コップが写りこんでいる
⇒注意を向けるべき対象が分からないため、示したい対象だけが描かれたものにする
● 「座る」カード:子どもがキャラクターの服を着ている
⇒キャラクターに注意が向いてしまうため、できるだけシンプルなものにする
● 「制服を着る」カード:実際の制服と大きく違う(性別や色、デザイン等)
● 「お箸を使う」カード:利き手と逆になっている
⇒実態とのギャップがあると理解できないことがあるため、実際に使うものの写真かそれに近いイラストにする
● 「静かにする」カード:しーっとハンドサインをする大人と、お口チャックをする子供が描かれている
⇒二人の人物の異なる行動が描かれており、どちらを指しているか分からないため、「子どもがする行動」だけ描かれたものにする
多くの絵カードアプリには、オリジナルの絵カードを作る機能がついています。「単語」と「イラスト・写真」を登録して絵カードにすることができます。
とくに写真撮影をするときには、不要な要素が入ってしまいがちなので注意しましょう。
年齢や発達段階に応じた絵カードにする
お子さまの成長にあわせて、絵カードを変えていく必要があります。
使う言葉が増えるだけではなく、絵カードを利用する目的が変わってくるためです。
例えば、言葉の理解を促すために、単語そのものや言葉の組み合わせ方を覚えることを目的とするのであれば「単語ごと」の絵カードが望ましいですが、言葉の理解が十分なお子さまの場合には「行動が1枚」になった絵カードのほうが使いやすいです。
基本的な会話はできるものの、特性による苦手への対策として絵カードを使うことを目的とするのであれば、お子さまの困りごとに合わせたカードだけを携帯させるようにしましょう。
例えば、以下のようなものがあります。
● 「制服を着る」カード:「体調が悪い」「分からない」「トイレに行きたい」などの困りごと
● 「お箸を使う」カード:「怒っている」「うれしい」「かなしい」などの感情
お子さまに必要なサポートが何かを考え、定期的に見直しをしていただくのがおすすめです。
お子さまによって、必要となるものや使いやすいものが異なるため、実際に使ってみて効果があるかを検証してみるようにしましょう。
「絵カード」を使うときのポイントは?
保護者の方が、絵カードを使って指示を出すときにやってしまいがちなNG行動があります。
絵カードを効果的に使うために、注意していただきたいポイントをお伝えします。
指示通りに動けたのに褒めない
絵カードで指示した行動ができたときには、その場ですぐに褒めることが大切です。
「行動の切り替えが苦手」という特性のあるお子さまの場合には、指示をすぐに聞けないことがあります。だらしないのではなく、特性によるものであることを理解しつつ、アプローチしましょう。
褒めることで良い行動が定着しやすくなります。逆に、褒めずに「行動できて当たり前」と接してしまうと、お子さまのモチベーションが下がり、指示を聞かなくなってしまうケースがあります。
禁止をするときだけに使っている
叱りたいときや行動をやめさせたいときにだけ、絵カードを使いがちになることがあります。
例えば「走らない」「ゲームをやめる」のようにレッドカードのように使ってしまうと、絵カード自体に抵抗感を抱くようになってしまいます。
よくない行動を禁止するのではなく、適切な行動を示すことで、行動の切り替えができたときに褒めることができます。「手をつなぐ+歩く」「宿題をする」などに変えるとよいでしょう。
絵カードを見せるだけ
絵カードに頼りすぎてしまい、話すコミュニケーションがおろそかになってしまうことがあります。
絵カードを使うときにも、声がけをしながら、口頭でも指示を伝えることが大切です。
耳からの情報(口頭での指示)と目からの情報(絵カードでの指示)の両方を同時に伝えることで、発達を促すこともできます。
「絵カード」はいつまで使う?
お子さまの発達段階や状況によって異なります。
ただ、将来的な自立を目指すためには、絵カードがなくてもコミュニケーションが取れることを目指すのが望ましいと言えるでしょう。
段階的に絵カードでの指示を減らしていったり、絵カードを使わずともコミュニケーションがとれるように「会話」の練習をしたりすることも大切です。
不安な気持ちが起こりやすいとき(慣れない場所に行く、予定の変更がある等)にだけ使う、など場面を限定するのもよいでしょう。
また、「言葉」でのコミュニケーションが苦手であっても、目で見るより耳で聞くほうが得意というお子さまもいます。
絵カードの内容を認識するのに時間がかかり、口頭での指示のほうがすぐに反応できることがあります。この場合には、絵カードでのサポートがお子さまに合っていない可能性があります。
お子さまの様子をみながら、適切なサポート方法を見極めることが大切です。
児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」 放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、
お子さま一人ひとりの特性や発達段階に寄り添い、“今”必要な療育を提供しています。
個別・小集団での療育を通じて、将来の自立を見据えたコミュニケーション力を育むお手伝いをします。
発達障害のあるお子さまは「コミュニケーション」に課題があることが多いと言われていますが、その原因はお子さまによって異なり、当然必要なサポートも変わってきます。
家庭内療育をしているけど効果が見られない、正しくできているか不安…と悩んでいる方はぜひお気軽にお問い合わせください。