発達障害のある子どもを伸ばす「ペアトレ」の実践内容を紹介
「発達障害の子どもへの接し方を学ぶペアレントトレーニングとは」では、ペアレントトレーニング(以降、ペアトレ)の概要とその効果について説明しました。
この記事では、ペアトレの実際のプログラム内容の詳細をお伝えしながら、ご家庭でもチャレンジできる、お子さまへのサポートのコツや工夫を紹介します。
児童発達支援 ハッピーテラスキッズ・放課後等デイサービス ハッピーテラスでは、今回紹介する「褒め方」「無視のしかた」などのアプローチ方法を支援の中でも取り入れています。
目次
子どもの行動を分類する
ポイントは、お子さまの行動を観察し、「好ましい行動」「好ましくない行動」「危険な行動・許しがたい行動」の3つに分けることです。一般的には、「好ましい行動」か「危険な行動・許しがたい行動」の両極端になってしまうことが多く、「好ましくない行動」の分類と、その対応が上手にできていないことがよくあります。
■行動例
好ましい行動 | 好ましくない行動 | 危険な行動・許しがたい行動 |
---|---|---|
・歯磨きを自分からする ・お手伝いをする ・お礼を言う |
・ゲームをやめない ・宿題をしない ・手を洗わない |
・友だちや兄弟を殴る ・物を投げる ・道路に飛び出す |
「好ましい行動」は、褒めて定着をさせたい良いおこないを指します。やめさせたい悪いおこないは「好ましくない行動」と「危険な行動・許しがたい行動」の2つに分けることがポイントです。それぞれアプローチ方法が異なるため、正しく分類をすることが大切です。
ペアトレでは何をするの?
まずは講義で「行動の分類」について学んだうえで、ご家庭内でのお子さまの様子を観察し、この3種類に行動を分けていきます。お子さまへの適切なアプローチをおこなううえでファーストステップとなる「お子さまの行動をしっかりと見る」を学んでいきます。次回のペアトレで、ご家庭でのお子さまの様子と行動を発表し、他の保護者の方と共有をしてきます。
適切な「注目」を与える
注目には2つの種類があります。
肯定的注目(ポジティブ) | 否定的注目(ネガティブ) |
---|---|
褒める 評価する うなずく 笑顔を返す など |
叱る 怒鳴る ため息をつく 眉間にしわを寄せる など |
いずれの「注目」も、お子さまの行動に対して大きな効力を持っています。
好ましい行動には「肯定的注目」を与え、好ましくない行動には「注目をしない(否定的注目もしない)」、危険な行動・許しがたい行動には「ペナルティ(この場合も、否定的注目もしない)」を与えるのが、ポイントです。
実は、否定的注目にも行動を増やす効果がある場合があり、好ましくない行動や危険な行動・許しがたい行動に否定的注目を与えることで、その行動が減らないばかりか、増えてしまうこともあります。
一番大切なのは、好ましい行動”以外”を増やさずに、好ましい行動を増やすことで、好ましくない行動を取る時間を無くしていくことです。
ペアトレでは何をするの?
講義で基礎知識を学んだうえで、ロールプレイ(模擬場面を想定して役割を演じること、保護者役・子ども役)で実践練習をおこない、「注目」の与え方を習得します。よかった点・改善点を振り返りながら、より効果的なアプローチができるように、スキルを高めていきます。
宿題としてご家庭内でも実践をおこない、新たに見つかった課題を洗い出し、解決策を考えていきます。
好ましい行動を増やす「褒め方の工夫」
「好ましい行動」を増やし定着させるためには、褒め方に工夫をすることが大切です。
褒めるときのコツについて紹介します。
タイミング | 行動をはじめた「その時」 |
---|---|
視線 | 子どもの目線の高さ |
表情 | 明るく穏やか |
声色 | 優しく温かみがある、嬉しさや驚きが伝わる声の調子 |
言い方 | 短く、簡潔に伝える 説教は追加しない(「いつもそうしてくれたらいいのに」等) |
内容 | 行動を具体的に褒める 「いい子だね」など行動と関係のないことや、抽象的な表現は避ける |
性格タイプ別 | 性格に応じて褒め方をアレンジする(大げさに褒められたい、冷静に評価されたい等) |
ペアトレでは何をするの?
「注目」と同様に、講義とロールプレイ練習、家庭での実践を通して、よりよい対応をするためのフィードバックを受けながら、繰り返し練習をおこなうことで、お子さまへの効果的な「褒め方」を習得していきます。
子どもが「好ましい行動」をできたときにおこなう「スペシャルタイム(子どもが保護者と、自分の好きなことをして過ごせる時間)」の取り入れ方についても学んでいきます。
好ましくない行動を減らす「上手な無視」
先ほど、好ましくない行動には「注目をしない(否定的注目もしない)」とお伝えをしました。つまり、お子さまの行動を「無視」するということです。
上手な「無視」のポイントを紹介します。
タイミング | 行動をはじめた「その時」 |
---|---|
視線 | 子どもと視線を合わせない(子どもに背を向ける、本を読むなど) |
表情 | 無表情(怒りや不機嫌さを出さない、ため息もつかない) |
声色 | 抑揚のない落ち着いたトーン、淡々とした話し方 |
子どもの存在を無視するのではなく「行動を無視すること」と、好ましくない行動がとまったら「すかさず褒めること」も大切なポイントです。お子さまと視線を合わせないように気をつけつつ、褒めるために変化を見逃さないように注意を向けましょう。
無視をすることで、一時的に行動が悪化することや、「なんで無視するの?!」などと感情的になることがあります。それでも、お子さまに対して反応をしないように耐え抜くことが重要です。
「無表情であること」を意識し、ついついやりがちな「眉間にしわをよせる・ため息をつく・イライラした表情をする」ことはしないようにしましょう。
ポイントは、「“今”改善したい好ましくない行動」を絞り込むことと、常に「本当はこうしてほしい好ましい行動」をセットで考えておくことです。ただ、無視するだけではなく、好ましい行動をとってくれるように、方向づけていかなければいけません。好ましくない行動をなんでもかんでも無視することは問題があり、「叱る」ということが発達上、重要な意味を持つ場面もあります。欲張りすぎず、改善したい行動を絞り込みましょう。
「発達障害のある子どもを叱ってはいけない」は間違い?正しい叱り方は」の記事もぜひ読んでみてください。
ペアトレでは何をするの?
こちらも同様に、講義とロールプレイ練習、家庭での実践を繰り返し、スキル向上を目指します。上手な無視にはコツを習得するだけではなく、お子さまの性格や状況に応じた解決策を、考えながら学んでいきます。
「無視」をするときに、多くの保護者の方が、難しさや不安を感じることに「状況の一時的な悪化」と「子どもとの関係性の悪化」があります。どのように対応をすればいいのか、このまま無視を続けていいのか?というお悩みに対して、対処法を学ぶことができます。
子どもを「無視」するのは心が痛む…という方も少なくないでしょう。「無視」が、お子さまの成長にどのような効果をもたらすのかを理解することで、適切なアプローチができるようになります。
危険な行動・許しがたい行動を止める「警告とペナルティ」
危険な行動・許しがたい行動へのアプローチは、4段階に分かれます。
1.警告(イエローカード)
人や物に危害を与えてしまう、子ども自身が怪我をしてしまうなどの行動が見られたときには、怒らずに「やめてほしいこと」か「代わりにやってほしいこと」を明確に伝えましょう。
これを「警告」と言います。警告をおこなう回数を事前に決めておき、従わなかった場合には「ペナルティ」を与えます。
警告に従うことができたときには、すかさず褒めるようにしましょう。
2.ペナルティ
「ペナルティ」として、好きなものや活動を一時的に制限します。ポイントは、前もって制限する時間を決めておくことと、ペナルティの前後に叱ったり説教をしたりしないことです。
お子さまの年齢や状況に応じて適切な制限時間は異なりますが、おおよそ5~20分が目安です。
3.タイムアウト
「タイムアウト」とは、子どもが頭を冷やすための時間を設けることです。興味が逸れる対象(外の景色、テレビ、まんが、おもちゃなど)がないスペースに、子ども一人で一定時間(目安は年齢×1分程度)過ごさせます。部屋の隅などにお子さまを座らせて、保護者の方はその部屋からは出ます。「ただ座って待つ」ことで落ち着かせることが目的です。
ポイントは、お子さまに、タイムアウトの時間を伝え、タイマーや時計が見える位置に置いておくことで、いつまで待てばいいのかお子さまが見通せるようにすることです。
4.家族会議
なかなか問題が解決しない場合には「家族会議」をおこないます。
問題の解決方法についてお子さまを交え話し合いましょう。
お子さまの行動を否定したり叱ったりするのではなく、お子さまの意見を聞きながら、本人にあった「約束」を取り決めることを目的にします。決めた約束は、常にお子さまの目に触れる場所に掲示しておき、お子さまだけではなく「親も約束を必ず守る」ことが重要です。
ペアトレでは何をするの?
警告のときに「代わりにやってほしいこと」を伝える=指示を出すときのコツも学んでいきます。こちらも、他と同様に、座学・ロールプレイ練習・家庭での実践をおこないます。子どもが危険な行動をしたときに、ついつい感情的に叱ってしまいがちだという保護者の方は少なくありません。発達障害の特性を踏まえたうえで、適切なアプローチを学んでいきます。
ペアレントトレーニングで正しい子どもへの接し方を学ぶ
今回紹介をした「ペアレントトレーニングの実践内容」は、家庭内だけでやろうとすると難しいケースがあります。お子さま一人ひとり、問題や適切な接し方が異なるために、本などで情報を知るだけでは効果が出づらいことがあるためです。
こんなときはどうすればいいの?やってみたけどうまくいかない…など悩みや課題が出てくることでしょう。ぜひ、まずは体験会に参加してみることをおすすめします。
ペアレントトレーニングでは、これらの家庭内での取り組みを学ぶだけではなく、「学校・園との連携のしかた」「先生とのコミュニケーションの取り方・連絡帳の使い方」など、外部の機関とのやりとりのコツなども知ることができます。
「学ぶ」ことだけではなく、同じ悩みを抱える保護者同士のコミュニケーションがとれること、お子さまのことを一人で抱えずに誰かに話せることで、不安やストレスの軽減につながることも、ペアレントトレーニングのメリットです。
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