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発達障害のあるお子さま向け|性教育のススメ【事例編】

更新日

前回のコラム「発達障害のあるお子さまへの正しい性教育【基礎知識編】」ででは、なぜ家庭内の性教育が必要なのかについて、「発達障害のあるお子さまへの正しい性教育【家庭での取り組み編】」では、性教育をおこなうときのポイントについて説明しました。(まだ読んでいない方は、本記事の前に読んでいただくことをおすすめします)

今回は、発達障害のあるお子さまの「性的な問題行動」の実際の事例に沿って、サポート方法をお伝えします。

「まだ子どもだから」「いずれ理解をするだろう」といって問題を放置してしまうのは絶対に避けましょう。時間とともに、大きなトラブルや犯罪に発展することもあります。
お子さま自身や家族、周りの人を守るためにも、適切な対応が必要です。

元学校教諭×二児のパパが教える発達に凸凹のあるお子さまへの性教育事例編

発達障害のあるお子さまの「性的な問題行動」の事例紹介

発達障害・知的な遅れがあるお子さまの「性的な問題行動」について、実際にあった事例を紹介します。

発達障害があるお子さまの場合には、その特性に応じたサポートが必要です。

お子さまの行動の原因を正しく理解し、本人の障害特性や発達の段階に合わせた適切なアプローチをすることが大切です。性的な言動であったとしても、「性的な問題」が原因ではないケースもあります。

お子さま本人に行動の理由を確認するときには注意が必要です。お子さま自身が、その理由に気づいていないことが多いためです。障害の特性によっては、「性への興味」を持っているが、「性的な行動」の持つ意味(社会的に恥ずかしい、いやらしいと思われるなど)を理解することが難しい場合があります。また、衝動性が強い特性がある場合には、「やってはいけないと理解しているのに、どうしてもやってしまう」ために、自分自身でもコントロールができないこともあります。

電車内で女性の胸を凝視する少年と、嫌がる女性

性的な行動の問題が起こったときには、周囲はかなり強く叱ったり注意をしたりしがちですが、それだけだと恐怖心を感じて、なぜそのような行動をしたのか理由が言えなくなったり、衝動性が強い場合には、隠れて(ばれないようにこっそりと)性的な行動を取ろうとするようになってしまうことがあります。

まずは冷静にお子さまの話を聞くことを優先しましょう。説明をすることや、自分の気持ちや考えを言葉にするのが難しいことがあるため、原因を見立ててから質問をしてあげると、答えやすくなることがあります。

中学生女児に話を聞くお母さん

ケース1. 電車の中で女性を凝視してしまう(中学生/男児)

  • 通学時に、女性のことをじっと見つめてしまい、「じろじろ見るな!」と叱責され、電車を降りるように言われてしまった。

 原因の見立て

① 異性への関心があった

② 実は、「女性」ではなく「持ち物」を見ていた

 サポート内容

家庭内で「知らない女性をじっと見てはいけない」という指導をしたところ、女性が道を通るたびに目をふさぐようになってしまった。

まず、なぜ「女性を見ていたのか」を確認したところ、「可愛いと思った」との回答があった。

そこで、女性への関心と思春期の成長について説明したうえで、ずっと人を見続けることは良くないことを伝え、「凝視」を止める練習をおこなった。

自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の特性にあわせ、「言葉を文字通りにとらえる」⇒対象や場面をより具体的に伝える、「曖昧な指示が理解できない」⇒定量的(〇分・〇回など)に指示を伝えるなど、理解できる表現を用いたアプローチをおこなった。

家族や先生以外の女性を見るときには、「〇分間に1度だけ、〇回まで」というルールを作り、「チラ見」をする練習をおこなった。その結果、「凝視」をすることはなくなった。

 ポイント

 性に興味を持つことを否定せずに、思春期において訪れることを説明する

 やってはいけないことと、代替案を特性にあわせた表現で伝える

今回は、見立て②ではなかったのですが、本当は女性ではなく「持ち物を見ていた」場合は、本人が好きなものを常に持たせておき、他人の持ち物を見たくなったら、自分の好きなものを見るようにする練習をおこなうこと、などの対処法があるでしょう。

椅子に座り、時計を見て女性指導員を見る練習をしてから顔を戻す男児

ケース2. 性風俗店で働くことになってしまった(高校生/女児)

  • 街で性風俗店の勧誘をされ、アルバイト契約を結んでしまった。

 原因の見立て

① 仕事内容を理解することができなかった

② 人に期待をされた経験が乏しく、必要とされたことが嬉しかった

 サポート内容

まずは、「どんな仕事をするのかを知っていたのか」「なぜ勧誘についていったのか」など経緯の確認をおこなった。

性風俗店での仕事内容は理解していたものの、「自分のことを必要としていた」という理由で契約。「知らない人にはついていかない」という指導をしていたが、街で何度か声掛けをされたため、「知り合い」と認識をしており、勧誘についていった、とのことだった。

18歳未満は性風俗店で勤務できないことが法律で決まっていること、仕事をすることで起こりうるリスクを伝え、アルバイト契約の破棄を促した。

ASDの特性により「言葉を文字通りに受け止めた」ことで、今回の事象が発生したため、「知らない人」の定義づけを本人が理解できる言葉でおこなった(学校の関係者、家族・親戚、保護者の方が知っている人以外)。

根本にあることは「自己肯定感の低さ」によるものであるため、自信を持たせるためのトレーニングを中心におこない、ご家庭での「褒め方」を保護者の方にレクチャーをおこなった。

 ポイント

 リスクを想像することが難しいケースもあるため、できるだけ具体的(身体が傷つくことや病気になる可能性)に説明をおこなう

 「アルバイト」をしようと思った理由を深堀し、根底にある理由を知る

特性による失敗経験から自己肯定感が低くなってしまうケースは少なくありません。
なぜお子さまがそのような行動をとったのか、確認をすることが大切です。

チャラついた風俗スカウトの男性と断る女子高校生

ケース3. 特定の異性にストーカー行為をしてしまう(中学生/女児)

  • クラスメイトの男児を、毎日待ち伏せし、つきまとってしまう。

 原因の見立て

① ASDの特性「こだわり」により、特定の人物に強い執着がある

② 他者視点の弱さから、自分の行動が、相手にとって不快だと理解できない

 サポート内容

待ち伏せやつきまといは「ストーカー規制法」と呼ばれる法律に触れることがあることを説明。

男児を好きな気持ちに寄り添い、行動の代替案を女児と一緒に考えた。「顔を見ることができればいい」との話があったため、男児の写真を持ち歩き、近づきたくなったときにはその写真を見ることとした。

 ポイント

 行動が不適切である理由を明確に(法律に触れるなど)説明する

 特定の対象に過度に執着してしまうことを、ASD特性によるものと理解する

「子ども同士のことだから」と見過ごさないように注意しましょう。
行動をやめさせるときには「代わりの案」を一緒に考えるようにしましょう。

好きな男児の写真をみる女児

ケース4. 人前で告白をする(高校生/男児)

  • クラスメイトが大勢いる前で、好意を寄せる女児に告白をしてしまう。

 原因の見立て

① 注意欠如・多動性障害(以下、ADHD)の特性「衝動性」で、突発的に行動をしてしまう

② 相手の気持ちを想定することや、周囲の反応を理解することができない

 サポート内容

なぜクラスメイトがいる前で告白をしてしまうのかを確認したところ、「彼女がほしいから」という回答があった。

行動に対し、告白の相手や周囲にいる人がどう思うのかのイメージがつかないために、なぜ迷惑だと言われるのか、冷やかされるのかが理解できていない様子だった。

「告白」のソーシャルスキルトレーニングを実施。まずは、お子さまが告白したい相手役となり、ロールプレイ(ある場面を想定し、役割を演じながら疑似体験すること)をおこなった。告白をされた側の立場を理解したあとには、役を交代し、告白の練習をおこなった。このときには、恥ずかしさを抑えることと、恋愛感情に発展してしまう可能性を回避するため、ロールプレイの対応をするのは同性の男性スタッフが対応をおこなった。

付き合うためには「相手に自分を好きになってもらう」ということが必要であることを伝え、そのためにやらなければならないことについて話をした。身だしなみを整える、接し方を変えるなど、「彼女を作るための確率を上げるアドバイス」を実施。

 ポイント

 ロールプレイ体験を通して、他者との関わり方や適切な接し方を身につけさせる

 「お付き合い」をするためには双方の合意が必要なことなど、恋愛における知識を教える

「●●をすれば彼女ができる」という言い方をすると、アドバイスに従って行動をしたのに彼女ができなかったときに「嘘をついた」ことになってしまうため、言い回しに注意しましょう。

好きな子を想像しながら告白ロールプレイングをする男児と相手役の男性指導員

性的な問題は、早期に対処が必要

思春期になると、特性による「恋愛トラブル」など性的な問題が増えることがあります。
特性だから仕方ない、子どものうちは大丈夫などと、問題を看過することはやめましょう。
恋愛の失敗によって、自己肯定感が下がってしまうことや、二次障害(うつなどの精神疾患)になることもあります。

子どものときにトラブルに発展しなかったとしても、大人になってから困るのはお子さま本人です。
問題行動に早期にアプローチをすることで、周囲との適切な関係性を築きやすくなります。
発達障害や知的な遅れがあるお子さまの場合には、特性や発達段階に応じた対応をする必要があります。

ご家庭だけでは、解決が難しいことも少なくありません。ぜひ、専門機関や施設に相談をしていただくことをおすすめします。
児童発達支援ハッピーテラスキッズ・放課後等デイサービスハッピーテラスでは、お子さまの性的な問題行動はもちろん、お子さま一人ひとりの状況に応じた療育をおこなっています。

ご相談や体験会への参加は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

先生紹介:比良先生

元学校教諭×二児のパパの視点から、ご家庭で役立つ情報をお伝えします!

大学卒業後、高等専修学校に保健体育の教諭として従事。
その後、ハッピーテラスの教室長、エリアマネージャー、支援スタッフ向け研修講師、全国のハッピーテラスの保護者向け勉強会の講師など、発達障害のあるお子さまの支援に幅広く携わる。
【保有資格:高等学校教諭一種/学習支援エキスパートサポーター/ひきこもり支援相談士】


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