柏ルーム

友達と遊べない年長児、その背景にあるASDの特性と支援のヒント


年長さんになり、幼稚園や保育園で友達と遊ぶ機会が増えてくる時期。
「みんなと一緒に遊びたがらない」
「いつも一人でいることが多い」
「誘っても断ってしまう」
お子さまの様子を見て、このようなお悩みを抱えていませんか?
今回は、年長女児のAさんが、友達と遊ぶのが苦手だった背景にある発達の特性と、ハッピーテラスでおこなった具体的な支援、そしてその後の成長についてご紹介します。

Aさんのケース:具体的なエピソード
Aさんは、年長になってから、保育園で友達との関わりを避けるようになりました。
園庭で他の子どもたちが活発に鬼ごっこやボール遊びをしていても、Aさんはいつも隅の方で一人、黙々と砂遊びをしています。おままごとに誘われても、「今はいいの」と小さく言って断り、自分の世界に閉じこもってしまいます。
担任の先生からは、「Aさんはお友達と遊ぶのが苦手なようです」と言われ、このまま小学校に上がって、友達と楽しく過ごせるのか、ご家族は大きな不安を抱えていました。


困りごとの背景にある特性とは
Aさんのように、友達と遊ぶのが苦手な背景には、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性が関係していることがあります。
ASDのあるお子さまは、相手の気持ちを想像したり、場の空気を読んだりすることが苦手なため、コミュニケーションに困難を感じやすい傾向があります。
また、「シングルフォーカス」という特性から、一つのことに集中すると、周りのことが見えなくなってしまうこともあります。砂遊びに夢中になっているAさんの様子は、まさにこの特性が表れているのかもしれません。
他にも、下記のような特性が遊びの困難さにつながることがあります。

  • 五感の過敏さ:周囲の騒音や特定の声に圧倒され、集団活動を避ける。
  • 変化への抵抗:遊びのルールや流れが急に変わることに不安を感じる。
  • 言葉の遅れや表現の苦手さ:自分の気持ちをうまく言葉で伝えられず、トラブルを避けるために友達との関わりを控える。

これらの特性は、お子さまの「性格」や「わがまま」ではなく、生まれつきの脳機能の違いによるものです。
発達の目安とAさんの現在地
一般的な年長児の発達では、ごっこ遊びやルールのある集団遊びに興味を持ち始め、仲間と協力して遊ぶ経験を積み重ねていきます。
しかし、Aさんは、友達とのやりとりよりも、一人で完結する遊びを好む傾向がありました。これは、一般的な発達の目安とは異なる部分です。Aさんの場合、コミュニケーションや集団行動を苦手と感じる特性が、友達と遊べないという状況を引き起こしていると考えられます。
ハッピーテラスでおこなった支援と、その後の成長
ハッピーテラスでは、Aさんが少しずつ友達との遊びを楽しめるようになることを目標に、以下の3つの支援に取り組みました。
1. ソーシャルスキルトレーニング(SST)
「友達を遊びに誘う時の言葉かけ」「誘われた時の返事の仕方」など、遊びの場面で役立つコミュニケーションの具体的な方法をロールプレイングで練習しました。
2. 視覚支援の活用
「遊びの順番カード」や「今日の活動」といったイラストや写真を使ったカードを作成し、次に何をするかを見える化しました。これにより、先の見通しがつきにくいことへの不安を軽減し、遊びの切り替えをスムーズにおこなえるようになりました。
3. スモールステップでの集団遊び
最初は、スタッフとAさんのマンツーマンで遊び、慣れてきたら、1人の友達を誘って3人で遊び、徐々に人数を増やしていきました。
Aさんが好きな砂遊びに他の子が入っていく「仲間入り遊び」から始め、無理のない範囲で少しずつ遊びの輪を広げていきました。
これらの療育支援を通して、Aさんには驚くほどの成長が見られました。
最初は断っていた友達のお誘いにも、「いいよ」と答えられるようになり、遊びの輪の中に加わることができるようになりました。
また、以前は言葉での表現が難しかった「今日はこれで終わりにするね」といった気持ちも、少しずつ言葉で伝えられるようになり、コミュニケーション能力も向上しました。
何より、一番の成長は、友達と一緒に笑って過ごす時間が増えたことです。


まとめ:一人で悩まず、まずはご相談ください
お子さまが「友達と遊べない」という悩みは、保護者の方にとって大きな不安に繋がります。
しかし、その背景には、お子さま特有の発達の特性や、コミュニケーションの難しさが隠れているかもしれません。特性を理解し、適切な支援を行うことで、お子さまの「できる」は確実に増えていきます。
ハッピーテラスでは、お子さま一人ひとりの特性や発達段階に合わせた個別支援計画を作成し、スモールステップで「できる」を増やしていく療育を提供しています。
一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。私たち専門家が、お子さまの成長をサポートさせていただきます。