柏教室

「パソコンに集中しすぎちゃう!」:ADHD傾向の「切り替え」を促すトレーニング

「うちの子、タブレットやPCを使うと夢中になりすぎて、なかなか次の活動に移れない」
「休み時間が終わってもチャイムが聞こえないくらい集中してしまい、切り替えが難しそう」

放課後等デイサービスに通う小学校のお子さんを持つ保護者の方から、こうした相談をいただくことがよくあります。特に、ADHD(注意欠如・多動症)にみられる特性・傾向があるお子さんの場合、興味のあることへの集中力が高い一方、注意の切り替えが苦手なことで、日常生活や学習において困りごとが生じることが少なくありません。また、こうした特性を背景にした行動により「話を聞く姿勢が育っていない」などの誤解を生むこともしばしば・・・。

この記事では、注意の切り替えが苦手な背景にある特性や、ハッピーテラスで行っている具体的な支援を通して、スムーズに切り替えられるようになるためのヒントをご紹介します。ぜひ最後までお読みください!

今回の事例

小学4年生のAさんは、ハッピーテラスでPC活動に取り組む際、一度課題に没頭すると、先生の一斉指示が耳に入らないほど集中してしまうことがありました。特に、大好きなPCを使ったプログラミング学習では、時間になってもなかなか画面から目を離せず、次の活動への切り替えに時間がかかってしまう様子が見られました。

学校でも、休み時間から授業への切り替えの際に、チャイムが鳴っていることに気づかなかったり、先生の指示に反応が遅れたりすることがあるようでした。

困りごとの背景にある特性とは

Aさんのように「注意の切り替え」が苦手な背景には、ADHDの「不注意」や「多動性・衝動性」といった発達障害特性が関係していることがあります。

注意には、「注意の持続(集中を持続する力)」「注意選択(必要な情報に注意を向ける力)」「注意の切り替え(注意・注目を切り替える力)」など、さまざまな種類があります。Aさんの場合、特に転換性注意と、一度向けた注意から離れることが難しいという点に課題が見られました。

ただし、こうした行動は本人の「やる気がない」わけでも「わがまま」なわけでもありません。そのため、無理に叱ったり急かしたりすることは、お子さんの自己肯定感を下げてしまうことに繋がりかねません。

PC学習のように視覚刺激が強く、自分のペースで進められる活動は魅力的で集中しやすい反面、「終わり」を認識し、気持ちを切り替えることがより一層難しいと想定されました。この困難さが、本人の「できない」という感覚や、周りの「早くしなさい」という言葉に繋がり、「できないかもしれない」という不安となってしまう可能性も考えられました。

ハッピーテラスでおこなった支援と、その後の成長

ハッピーテラスでは、Aさんの「注意の切り替え」をスムーズにするために、二段階の具体的な支援をおこないました。

1. 「画面オフ競争」で能動的な切り替えを促す

まず、PC学習の終わりを、ただの指示で終わらせるのではなく、Aさん自身が能動的に切り替える経験を積めるように工夫しました。

「さあ、あと1分でPCの時間はおしまいだよ。タイマーが鳴ったら、一番早く画面をオフにできた人が勝ちね!」

このように、PC作業が終わるタイミングで、画面オフにするのを「競争」というゲーム形式にすることで、Aさんは遊び感覚で切り替えに参加できるようになりました。最初は戸惑うこともありましたが、競争の楽しさや、自分ができた時の達成感を経験することで、次第に「自分で画面をオフにする」という行動がスムーズになっていきました。

そして、彼が画面をオフにできたときには、スタッフは間髪入れずに具体的に褒めることを徹底しました。

「みんなよく前を見ていたね!
「タイマーが鳴ったとき、ちゃんと話を聞いてたね!素晴らしいね!」

このような声かけを繰り返すことで、Aさんは集中力を保ちつつ、次の指示に耳を傾け、自ら行動を切り替えることの成功体験を積み重ねていきました。

2. 「物理的な移動」で次の行動を見通しやすくする

次に、Aさんが特に切り替えに苦手意識を持つ場面分析しました。その結果、「自由にPC作業をする」という自分のペースで進む活動から、「一斉指示に切り替える」という集団での活動への移行が特に難しいことが分かりました。

そこで、PC学習の時間が終わる際には、単に「次は何々をします」と声で伝えるだけでなく、物理的な「次にやること」を明確に提示する工夫を取り入れました。

例えば、「PCが終わったら、次は工作のテーブルに移動しようね」と声をかけ、実際に工作テーブルの様子を指し示したり、場合によってはスタッフが一緒に移動するサポートをおこないました。

このように、次の活動の場所や内容を視覚的物理的に提示することで、Aさんは「今やっていること」と「次にやること」の間に明確な区切りを感じやすくなりました。これにより、気持ちの整理がつきやすくなり、切り替えられる回数が目に見えて増えていきました。

まとめ

お子さんの「注意の切り替え」の苦手さは、ADHDの特性からくるものであり、ご家族やお子さんの努力不足ではありません。

ハッピーテラスでは、お子さん一人ひとりの発達特性に合わせた個別支援計画を立て、無理なく成功体験を積み重ねられるよう、日々のトレーニングに取り組んでいます。お子さんの困りごとにどう対応したら良いか分からないとお悩みでしたら、ぜひ一度ハッピーテラスにご相談ください!