「何度声をかけても席を離れてしまう」

「集中してくれない」

集団活動や学習中に、お子さまの離席行動に悩まれている保護者の方は少なくありません。

特に、発達障害（ASD）の特性があるお子さまの場合、その背景にはさまざまな理由が隠されています。 今回は、年中さんの男の子の具体的なケースを通して、離席の理由と、ご家庭でもできる効果的な支援についてご紹介します。

Aさんのケース：具体的なエピソード

年中さんの男の子Aさんは、グループで工作をする時間が苦手でした。みんなが先生のお話を聞いている間も、体をもじもじと動かし、落ち着きがない様子。しばらくすると、立ち上がって部屋の中をウロウロし始めてしまいます。

離席するたびに「座ってね」「お話を聞こうね」と声をかけるのですが、Aさんの耳には届いていないようで、こちらに注目を向けてくれません。どうすればいいのか分からず、保護者の方も困り果てていました。

困りごとの背景にある特性とは

Aさんのように、ASD（自閉スペクトラム症）の特性があるお子さまが離席してしまう背景には、

いくつかの理由が考えられます。

感覚刺激を求めている： じっと座っていることが退屈で、体を動かしたり、特定の感覚（床の感触、

壁の模様など）を求めたりして離席してしまうことがあります。体を「もじもじ」させていたのは、

まさにこのサインだったのかもしれません。

コミュニケーションの困難： 言葉での指示がうまく入ってこず、

「なぜ座っていなければならないのか」「何をする時間なのか」という状況が

理解できないことがあります。

見通しが立たない不安： 「この活動はいつ終わるんだろう」「次はどうなるんだろう」という

不安から、その場を離れてしまうことがあります。

発達の目安とAさんの現在地

一般的に、4歳から5歳のお子さまは、15分程度の短い時間であれば、座って話を聞くことができる

ようになってきます。しかし、これはあくまで目安です。

ASDの特性があるお子さまは、集団行動や社会生活のルールを覚えること自体に難しさがある場合も

少なくありません。Aさんの場合も、周囲の子どもと同じように座っていられないことは、

彼の意思の問題ではなく、発達の特性によるものだったのです。

ハッピーテラスでおこなった支援と、その後の成長

Aさんの離席の背景に「感覚」への配慮が必要だと考えた私たちは、言葉での声かけを一旦やめて、

別のアプローチを試みました。

それは、Aさんがもじもじし始めたタイミングで、彼の肩にそっと手を置くだけという

シンプルなものです。

これは「触覚」という感覚刺激を利用した療育の工夫です。

肩に置かれた手は、Aさんにとって「ここに座る時間だよ」ということを伝える、分かりやすく穏やかな合図となりました。

すると、どうでしょう。肩に触れるだけで、Aさんのもじもじが収まり、

離席する回数が少しずつ減っていったのです。

「座る」ことが苦手だったAさんは、今では短い時間でも着席できるようになり、グループ活動にも参加できる時間が増えました。言葉での指示がうまく伝わらない時も、肩に触れるというシンプルなサポートで、落ち着いて活動に取り組めるようになりました。

まとめ：一人で悩まず、まずはご相談ください

「離席」という困った行動の背景には、お子さま一人ひとりの特性が隠されています。

言葉で伝えることが難しいお子さまには、感覚に働きかける支援がとても有効です。

「もしかして、うちの子も…？」 そう思ったら、一人で悩まずに相談窓口に話してみませんか？

ハッピーテラスでは、お子さまの行動の背景にある発達の特性を読み解き、一人ひとりに合った療育を提案しています。お子さまの「できる」を一緒に増やしていくための相談を、

専門のスタッフが承っています。

お気軽にご連絡ください。