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【専門家監修】発達障害の子どもの生成AI活用法|プロンプト・事例付

更新日

GeminiやChatGPTなどの生成AIが、生活に深く根付きつつあります。
総務省の調査(2026年版「情報通信白書」)によると、2025年時点で生成AIを利用したことがある人は58.8%に上り、2024年から倍増しているとのことです。

生成AIは、発達障害のあるお子さまの特性をサポートするツールとしても非常に役立ちます。
今回は、発達障害児支援のプロフェッショナルとしての視点から「本当に役立つ生成AIの使い方」について紹介します。

「13歳未満のお子さまの利用禁止(18歳未満は保護者の同意が必要)」という規約を設定している生成AIサービスも多くあります。
その場合には、保護者の方が生成AIの操作をし、出力された回答をお子さまと一緒に画面で見る(または読み聞かせる)ようにしましょう。

この記事で学べる情報

  • 発達障害の子どもにおすすめの生成AI活用法は?
  • 家庭内でのAI活用サポートのコツは?
  • 支援現場でのリアルなAI活用事例は?
アイキャッチ

発達障害のお子さま向け|おすすめの生成AI活用法

生成AIは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害の特性による「苦手」をフォローするツールとして活用できます。
特性による「苦手」な部分を、AIにサポートしてもらうことで「成功体験」を積みやすくなります。自己肯定感を高めていくことは、お子さまの健やかな成長に必要不可欠です。

お子さまの特性や発達段階によって、みられる「困りごと」はさまざまです。お子さまにあう活用法も一人ひとり異なります。今回ご紹介するものは「例」としてお読みください。

生成AIとやりとりする子ども(小学生)と見守る保護者

発達障害のお子さま向け生成AI活用法

発達障害のあるお子さまの「よくある困りごと」へ対策するための生成AI活用法を紹介します。
お子さまの状況や課題に応じた活用法を、一緒に探していくようにしましょう。

イメージを持ってもらいやすいように、「プロンプト(AIへの指示・質問文)」の例もあわせて紹介します。まずは、保護者の方がプロンプト作りに慣れることで、お子さまに教えやすくなります。プロンプトには、目的やお願いしたいことだけではなく、お子さまの特性(困りごと)や年齢・性別などを追加すると、よりイメージに近いアウトプットを得ることができます。

冒頭でもお伝えしたとおり、規約上「13歳未満は利用禁止」になっているAIサービスが多くあります。
その場合には、保護者の方がプロンプトの入力をして回答を出力したあとに、お子さまと一緒に画面を一緒に見たり、読み聞かせたりするようにしましょう。

 やることリスト(スケジュール)作り

「準備をして」や「片づけて」など、ざっくりとした指示が苦手(何から手を付けたらよいか分からず混乱する、やること・持ち物に抜け漏れがある等)なお子さまにおすすめです。
具体的な「やること」とその「段取り」をまとめてもらう、「抜け漏れチェックリスト」を作ってもらいます。例えば、「学校に行く準備」はいくつかのタスクで構成されています。まずはタスクを分解し(例:「服を着替える」「朝ご飯を食べる」「歯を磨く」など)し、AIに具体的な内容と手順をまとめさせ、チェックシート化してもらうのがよいでしょう。

プロンプト例|保護者の方用

ASDがある小学校3年生の子どもに「学校にいく準備」が自分でできるようになってもらいたい。抽象的な表現と複数の指示を理解することが苦手なので、一歩ずつ「やること」と「流れ」が分かるように朝のスケジュールをチェックリスト形式でまとめて。

実際のAI回答(一部抜粋)

小学3年生のASDのお子さんが、自分で朝の準備を進められるようにするためのチェックリストですね。
抽象的な言葉(例:「きちんと準備して」「早くして」)や、複数の指示(例:「顔を洗ってから着替えて」)を理解することが苦手な特性に合わせ、「1つの文につき、1つの具体的な行動(1文1動作)」でまとめました。
また、「今どこで何をするか」という流れがイメージしやすいように、場所ごとに区切ってリスト化しています。お子さんが自分で読めるように、難しい漢字は控えるか、ふりがなを振ってあげてください。

【あさのおしたく チェックリスト】
①せんめんじょ(顔を洗うところ)でやること
・ [ ] トイレにいく
・ [ ] トイレの水をながす
・ [ ] 石けんで手をあらう
・ [ ] 顔をあらう
・ [ ] タオルで顔と手をふく
………

 気持ちの言語化

自分の想いや考えを言葉にすることが苦手なお子さまにおすすめです。
AIとの会話の中で整理をしたり、相手への伝え方のヒントをもらったりしながら、気持ちを伝える方法を学んでいくツールとして使います。
上手に言葉にできない場合でも、思いつくままに単語や絵文字を打ち込んだり音声入力したりすれば、AIが伝えたいことをまとめてくれます。

プロンプト例|保護者の方用

発達障害の子ども(小学校5年生)の「気持ちの言語化」を手伝ってください。私が子どもの言葉を代筆するので、子どもに話しかけるように対話をお願いします。

保護者の方がお子さまの言葉を聞き取りながら、代わりに入力してあげましょう(13歳未満の利用が禁止されている場合)。

実際のAI回答(一部抜粋)

保護者の方へ。お子さんが自分の気持ちを言葉にする練習ですね。安心してお話しできる場所を作りますので、ぜひ一緒に進めていきましょう。ここからは、お子さんに向けてお話ししますね。

こんにちは!ここでは、お友達に言いたかったことや、心の中にあるモヤモヤした気持ちを言葉にする練習ができるよ。
うまくまとまっていなくても、短い言葉でも大丈夫。「こんなことがあって嫌だった」「本当はこう言いたかった」など、思ったことをそのまま教えてね。

これからの練習の進め方
・ まずは、「あったこと」や「そのとき思ったこと」を自由に書いてみてね。
・ そのあと、「どんな気持ちだったか(悲しい、怒っている、びっくりしたなど)」を一緒に見つけるよ。
・ 最後に、「お友達にどうやって伝えたらいいか」の言い方を一緒に考えよう。

さっそく練習を始めてみよう。最近、お友達とのことで「どう言えばよかったかな?」と悩んだことや、モヤモヤしたことはあったかな?
………

 コミュニケーションの練習

友達とのコミュニケーションに苦手意識があるお子さまにおすすめです。
例えば、LINEやSNS等のチャットでのやりとりを想定した実践練習(ロールプレイをして、AIに良い点・改善点のフィードバックをもらう)、友達とケンカしたときの原因を考えてもらう、相手を傷つけない「言い換え」のヒントをもらう、コミュニケーションの暗黙のルールを教えてもらう、などの使い方があります。

プロンプト例|お子さま用

コミュニケーションが苦手な高校生です。友達とLINEでやりとりをしていたのですが、会話が終わったので返信をしませんでした。翌日「既読無視だ」と言われてしまいました。私はどうすればよかったですか。

実際のAI回答(一部抜粋)

LINEの会話を終わらせるタイミングは本当に難しく、悪気がないのにすれ違ってしまうのはよくあることです。相手は「まだ話が続く」あるいは「読んだなら何かしらの反応がもらえる」と思っていたのかもしれません。

友達が「既読無視」と受け取った理由
・ 相手にとっては、まだ会話が「終わっていない」タイミングだった。
・ 読んでくれたことは分かったけれど、反応がないため「嫌な思いをさせたかな」「興味がないのかな」と不安になってしまった。
・ 文字だけのやり取りは表情が見えないため、返信がない=冷たくされたと重く受け取る人もいる。

会話をきれいに終わらせるためのコツ
・ スタンプを1つ送る:「おやすみ」「了解」「またね」などのスタンプを最後にポンと送るだけで、角を立てずに「会話はこれでおしまい」という優しいサインになります。
・ 一言だけ返して区切る:「そっか!」「なるほどね」「じゃあまた明日!」など、相手の言葉を受け止めたことだけ伝えて終わらせます。
・ 自分のスタイルを伝えておく:「私、会話が終わったと思ったら既読で終わらせちゃうことが多いんだ」と普段から伝えておくと、相手も誤解せずに安心できます。

今回、友達になんて言えばいいか
「ごめんね!会話が終わったと思ってスマホ置いちゃってた。無視したわけじゃないよ!」と、素直な理由と一緒に軽く謝るのが一番スムーズです。嫌われたわけじゃないと分かれば、相手もすぐにホッとするはずです。
………

 宿題のヒント

先延ばし癖がある、やる気が出づらいお子さまにおすすめです。
例えば、「夏休みなどの宿題」に手を付けられない場合、アイデア出しをAIにしてもらうことで着手するハードルを下げることができます。最初の一歩を踏み出すことにパワーが必要なため、どう進めたらいいかのイメージが湧くだけで「やれそう」な気持ちになりやすくなります。一歩ずつヒントを出してくれるため、お子さまのペースで取り組めます。

宿題をAIに丸投げすることは、倫理的にNGなだけではなく、学校教育の中で禁止されつつあります。「代筆して」ではなく「ヒントを教えて」とAIに依頼をすることがポイントです。

プロンプト例|お子さま用

ADHDがある中学生です。「【本や映画の名前、例:火垂るの墓】の感想文」の宿題をやらなければいけないのですが、どうしてもやる気が出ません。あと1週間で書かなければならないのですが、どうすればいいですか。

実際のAI回答(一部抜粋)

「火垂るの墓」はテーマも重く、ADHDの特性があると「やらなきゃ」と思うほど手が動かなくなるのはとてもよく分かるよ。やる気は後からついてくるものなので、まずはハードルを極限まで下げた簡単な「作業」から始めよう。

やる気スイッチを無理やり入れる3つのコツ
・ スマホの音声入力を使う:白い原稿用紙を前にするとフリーズしやすいので、スマホのメモ帳を開いて「めっちゃ悲しかった」「ドロップの缶が…」と、頭に浮かんだことをそのまま喋って文字にする。
・ 5分だけタイマーをかける:「5分だけやったらやめていい」と自分の脳を騙す。意外と5分経ってもそのまま続けられることが多い。
・ 場所を変える:自分の部屋ではなく、リビングや図書館など「他の人の目がある場所」に行くと、集中しやすくなる。

感想文が勝手に出来上がる3つの質問

答える順番考え方のヒント
1. 一番心に残った場面は?ドロップの缶、ホタルの光、親戚の叔母さんの言葉など、パッと思い浮かぶシーンを1つ選ぶ。
2. その場面を見てどう思った?「かわいそう」「自分だったら耐えられない」「理不尽で腹が立った」など、素直な感情を書く。
3. ……

………

 話し相手

特定の物事への強いこだわりがあり一方的に話し続けてしまうお子さま、多動性が強くおしゃべりが止まらないお子さまにおすすめです。
保護者の方や友だちなど相手が「人間」だった場合には、延々と自分の興味のあることだけを話し続けることは難しい(相手から嫌な反応をされる、対人マナーとして一方的に話し続けるのはNGなどの理由)ですが、「AI」の場合にはそれがありません。自分が話したいだけ会話を続けることができ、さらに自分が好きなことへの情報を学び続けることができます。

プロンプト例|保護者の方用

ASDの子どものお喋り相手になってください。特性上、過度にのめりこんだり、時間を忘れてしまったりしやすいので、10回のラリーが終わったら話を切り上げてもらえますか?

特性上、好きなこと・興味があることに夢中になりすぎてしまう「過集中」が起こりやすいです。前もって保護者の方が「●回まで」というルールをAIに伝えておくことで、カウントダウンしながらやりとりを進めてもらうことができます。

実際のAI回答(一部抜粋)

10回のお約束ですね、しっかりカウントしながらお話しします。時間を忘れてしまわないよう、毎回メッセージの最後に「あと〇回」と目安を書いて、終わりの見通しを持てるように進めますね。
ここからはお子さんとお話しします。お子さんにかわってあげてください。

こんにちは!今日はお話しできるのを楽しみにしていたよ。
あなたの一番好きなことや、最近ワクワクしたことは何かな?ゲームのこと、本のこと、好きなキャラクターのこと、なんでも大歓迎だよ。好きなことを教えてね。

【お話できる回数:あと10回】
………

いくつか「おすすめの使い方」を紹介しましたが、とくにコミュニケーション学習の場面で役立てるのがおすすめです。
発達障害(ASDやADHDなど)の特性によって、コミュニケーションに苦手意識のあるお子さまは非常に多いです。生成AIは「怒らない・焦らさない・空気を読まなくていい」という点で、非常に相性の良い学習ツールと言えるでしょう。

生成AIと会話する女子中学生、AIキャラクターが子どもを褒める。

大人になってからの生成AI活用法

子どもの頃からツールを使った特性への対策の練習に取り組むことは、将来的な自立を目指すうえで非常に重要です。
社会人になると、自分自身で対応するスキルが求められる場面が増えるためです。
子どものうちからAIの上手な使い方を身につけておくと、大人になってからもスムーズに活用できるようになります。

職種や仕事内容によって、AIを使う場面はさまざまです。代表的な活用法について簡単に紹介します。

  • スケジュール管理
    仕事の期日設定をしてもらう、カレンダーツール(GeminiとGoogleカレンダーは連携可能)の更新・管理・リマインドを設定してもらうなど、スケジュール管理ツールとして活用できます。
  • 文章作成
    メールや資料、プレゼンテーション時など、伝えたいことの要約・分かりやすく伝えるための説明の仕方、相手に失礼のない言い回しを考えてもらうなど、苦手な文章作成のサポートツールとして活用できます。
  • タスク整理
    仕事内容の細分化(具体的な仕事に細かく分ける)、仕事の優先順位付けの手伝いなど、マルチタスク(複数の仕事を同時に進める)に取り組むためのフォローをしてもらうことができます。
  • コミュニケーションにおける失敗の原因分析
    相手を怒らせてしまった場合の理由をAIに分析してもらう(実際に伝えた言葉をAIにチェックしてもらう、相手の受け取り方を確認する)、原因を踏まえて適切な伝え方の例を教えてもらうなど、コミュニケーションのヒントをもらうことができます。
生成AIを活用して仕事のスケジュール管理をする社会人男性。「資料作成の納期」のスケジュールを組んでもらう。

保護者の方向けの生成AI活用法

保護者の方自身が生成AIを活用するのもおすすめです。発達障害のことを理解したり、サポート方法のヒントを得たりするツールとして役立ちます。

ただし、AIが回答するのは「一般論」であり、「お子さまに合った内容」では必ずしもないことを踏まえる必要があります。さまざまなメディアで「発達障害の子ども向けAIライフハック」が紹介されていますが、注意が必要です。
同じ特性があっても「(お子さまのために)やったほうがいい」は子どもによって異なり、効果がみられないことや状況を悪化させてしまうことがあるためです。

一方で「(保護者の方・先生などの周囲の人がお子さまに対して)やってはいけないこと」は、多くのお子さまにおいて共通するポイントが多いことから、AIからヒントを得るときには「NG行動」を聞くのがおすすめです。

  • 合理的配慮依頼書の作成
    学校や園の先生に提出する子どもの特性と必要な合理的配慮の文章作成をしてもらうときに役立ちます。学校・園側にやってほしいことではなく「先生に避けてほしいこと(NG行動)」についてAIに説明をまとめてもらうようにしましょう(例:あいまいな表現を使われるとパニックになることがあります)。
  • 話し相手になってもらう
    誰かには話しづらい悩みを聞いてもらう相手としても役立ちます。人には言いづらい・理解してもらえないけど吐き出したい気持ちを、AIにぶつけてみるのもおすすめです。
    相手は人間ではなくAIなので、顔色をうかがったり、反応を心配したりする必要もありません。

AIの回答の正当性を判断することはとても難しいため、お子さま本人のことを実際にみて知っている療育の専門家の意見を聞いてみることが重要です。
AIから提案された特性対策を実践してみる場合には、実際に取り組んでみて、お子さまの反応をみてみたり、感想を聞いてみたり(例:「この方法だと楽になりそう?」)することが大切です。

癇癪を起す子どものことを考えながらAIと会話する保護者。

発達障害のお子さまが家庭でAIを活用する際のサポートと注意点

発達障害のあるお子さまが生成AIを使うときに、気を付けなければならないポイントについて紹介します。

AIは非常に便利なツールである一方で、使い過ぎによってお子さまの成長によくない影響をもたらすことがあります。
さらに、発達障害の特性とAIの弱点が組み合わさったときに、困りごとやトラブルに発展してしまうリスクがあります。

発達障害の特性を踏まえ、「生成AIの適切な使い方」を教えていくことが非常に重要です。

生成AIの利用ルールと環境を作る

先ほど「生成AIのリスク」について触れましたが、「AIを避けるべき」ということではありません。
正しくAIを使うために、ルールを設定したり、お子さまにあう使い方を探したり、保護者の方がサポートをしていくことが大切です。

最近では「13歳未満のお子さまの利用禁止(18歳未満は保護者の同意が必要)」という規約を設定しているサービスも増えてきています。
まずは、利用するAIの対象年齢を確認しましょう。

まずは、保護者の方と一緒に使うところからスタートし、段階的に慣れていくようにしましょう。

生成AIの利用ルール

 答え合わせ(ファクトチェック)をする
AIの答えを鵜呑みにせず、必ず教科書や本・図鑑等で答え合わせをするようにしましょう。
単に「自分で調べなさい」というのではなく、「検索エンジンで〇〇について調べてみようね」「教科書のどこを見ればよいかな?」など、一緒に答え合わせをする練習をしたり、情報の探し方のヒントを与えたりするようにサポートしていきます。

 個人情報は入力しない
名前や住所が流出してしまう「個人情報漏洩」のリスクについて伝え、AIに入力しないことを徹底しましょう。
AIに入力をした情報は、AI内でデータとして学習されてしまう可能性があります。その結果、入力した本名や学校名が見知らぬ誰かの回答として表示されてしまう(世界中に流出してしまう)危険性があります。
「自分の名前」「学校名」「住んでいる場所」「友達の名前や悪口」など、「AIに絶対に書いてはいけない具体的な言葉」をリスト化し、お子さまに分かりやすく伝えておくことが大切です。

 「答え」を出すだけで終わらせない
「自分で考える力」を養うための工夫を取り入れ、「答えを写して終わり」にしないようにしましょう。
お子さまの発達段階に応じてフローを決めることがおすすめです。
例えば、以下の流れを「AIを使う前」に説明し、ステップごとに声掛けをしていきます。

1. AIで回答を出させる
2. なぜその答えになったのかを考えさせる(答えの出し方を学ぶ)
3. 答えの導き方を保護者の方に対して説明させる

これらのルールは、お子さまの目に触れやすい場所に貼っておくなどの工夫もおすすめです。口頭だけで伝えると、忘れてしまったり、ついルールを破ってしまったりしがちなので、パソコンやタブレットの画面横に貼っておくのがよいでしょう。

AIの回答を教科書を照らし合わせながら確認する子どもと見守る保護者

AI利用時の環境設定

 過集中対応
「使い過ぎ」対策のために、タイマーとセットで使う、Wi-Fiの強制終了を導入するなどの工夫をしていきましょう。
プロンプト(AIへの指示を出すときの文章)に「やりとりは〇回までで切り上げる」などのルールを組み込み、AI側に回数制限しておくのもおすすめです。

 読み書きの苦手対策
SLD(学習障害)がある場合や、自分の考えや気持ちを言葉にするのが苦手な場合には、「音声入力機能」や「読み上げ機能(テキスト読み上げソフト)」を使う、「単語」で入力をする、などの工夫を取り入れるようにしましょう。
長文を読むことや難しい表現の理解が苦手な場合には、プロンプトに「〇文字以内で答えて」や「〇歳が理解できる答えにして」などの依頼を組み込むのもおすすめです。

 有害な情報の遮断
生成AIの多くは、保護者の方が子どもの利用を制限・管理するコントロール機能がついています。
お子さまにとって有害となり得る情報の遮断(セーフサーチなど)を設定するのも忘れないようにしましょう。

お子さま自身で、欲しい答えを導き出すためのプロンプトを考える練習に取り組むのもおすすめです。自分の考えや疑問点を言語化し、相手に伝えるトレーニングになります。

生成AIとおしゃべりする小学生女児。「あと3回で今日のお喋りは終わりだよ」とAIが会話回数のカウントダウンをする

AIリテラシーを学ぶ機会を作る

AIリテラシーとは、生成AIのシステムを理解し、適切に使いこなすための判断力のことを言います。
知っておくべきポイントには、AIの得意・苦手、誤情報、情報漏洩、権利侵害などがあります。まずは保護者の方が正しい「AI」に関する知識を学ぶことが重要です。

今回は、AIリテラシーの中でもとくに重要なポイントをピックアップし、紹介します。

生成AIの誤情報

なぜ「答え合わせ」が必要なのかについて説明しましょう。

  • ハルシネーションとは
    AIが「事実とは異なる情報を、まるで真実のように自信満々に答える現象」を指します。
  • 情報の偏りとは
    AIはWeb上のあらゆるデータを学習して回答を生成するため、「世の中の偏見」「偏った意見」がそのまま反映されることがあります。
生成AIが自信満々に「カレーライスは日本の飲み物です。」と回答する。間違いであることをすかさず指摘する父親。

生成AIの権利侵害

AIで作ったものが「自分の作品として認められない」「他者の権利を侵す(法律に触れる)」可能性があることについて説明しましょう。

  • 著作権
    AIの回答や画像は、Web上の作品を学習して作られるため、意図せず他の人の作品や既存のキャラクター等と似通ってしまうことがあります。その結果「著作権」に触れてしまう可能性があるのです。
  • 学校でのルール
    学校では、文部科学省の「初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン」に従ってAI使用のルールや指導方針が決められています。
    例えば「生成AIで出力した場合は、用いたことを明記する」「生成AIで作った作品をコンクールに出すことは不適切・不正である」などがあります。
既存キャラクターと酷似したイラストを生成するAI。喜ぶ子供と「見たことあるキャラクターだな‥」と懸念を示す親。

参考:文部科学省|生成AIの利用について

療育の現場でのサポート事例|「生成AI」支援ケース

放課後等デイサービス ハッピーテラスでの、実際に取り組んでいる生成AI活用サポート事例について紹介します。
発達障害のあるお子さまのサポート歴15年以上の「北川先生」がおすすめする活用方法です。

より実践的でリアルなAI活用情報をお伝えします!

作文練習

発達障害のお子さまの苦手あるあるの中でも「作文」は代表的なもののひとつです。
原因となる特性はさまざまですが、例えば、「ワーキングメモリの弱さ」がある場合に、文章をまとめたり構成をしたりすることに困難がみられることがあります。自分の考えや気持ちを言葉にすることが苦手なお子さまも多いです。

AIを使って「作文を代筆してもらう」のではなく、作文の作法(ルール)や表現方法の型を学ぶことが目的です。これを何度も繰り返すことで、お子さま自身の「文章作成スキル」を高めていくことができます。

まずは、AIに自分の体験や気持ちなどのキーワードを入力して「見本の作文」を作ってもらい、回答を読んでみます。次に、この文章を作文用紙に書き写します。
自分の体験に基づく文章を「見本」とすることで、文章を書く時のルールや表現の仕方を学びやすくなります。

生成AIが作成した「夏休みの思い出を作文にしてみたよ」の内容を原稿用紙に書き写す子ども。

自分に向いている仕事探し

発達障害の特性のあるお子さまは、漠然とした「将来」を想像することが苦手な傾向があります。
「将来の夢」を考えるとき、「進路」を決めるとき、「勉強の必要性」を学ぶときなどに、自分に向いている仕事は何かを知ることがヒントになります。

AIに自分の特性(発達障害によって苦手なことだけでなく、性格タイプを入れるのもおすすめ)や得意・苦手(好きなことでもOK)を伝えたうえで、「自分にあう職業」「その職業を目指すために、どんな勉強をどれくらいすればいいか」「実現難易度」について教えてもらうことで、自分の将来をイメージしやすくなります。

例えば、「電車が好き」という強い興味関心と、「細かい作業が得意」「数字に強い(算数が好き)」「大きな音が苦手」という特性や得意・苦手をAIに入力します。AIは「時刻表のデータ入力」「交通系システムのプログラマー」など、具体的な職業の選択肢を提案してくれます。「その仕事に就くためには、今勉強している算数がこう役立つよ」とAIに解説してもらうことで、現在の学習に対するモチベーションアップにも繋がります。

AIに向いている仕事を相談する中学生。「プログラマーはどうかな?」とAIが提案している。

ネット詐欺対策

発達障害や知的な遅れがある方は、その特性によって詐欺被害に遭いやすいと言われています。
原因となる特性は人によって異なりますが、言葉の裏が読めない・目先の利益に飛びつきやすい・コミュニケーションの困難による社会的な孤立などがあります。
とくに、ネット詐欺は、非常に身近にあり、お子さまの被害も少なくありません。

例えば、「懸賞が当たりました」「有料サイトの支払い督促」のようなメールが突然届き、詐欺だと思わずにURLをクリックしてしまう(ワンクリック詐欺)などです。
そのようなメールが届いた場合に、AIにメールの内容をそのまま入力して「これは詐欺ですか?」と確認することで、被害を未然に防ぐことができます。

大人になると保護者の目の届かなくなる場面が多くなるため、子どものころから癖付け(習慣化)させておくのがおすすめです。

AIに相談したところ「振り込め詐欺の可能性が高いよ!」と指摘され、驚く高校生。

【番外編】AIを使いたがらない

ニュースやWebメディアなどで「AIに思考を支配される・AIを使うと脳が溶ける(認知的降伏)」といったネガティブな情報を見聞きしたことで、「AIは怖いものだから使いたくない」と強い拒否反応を示すケースがあります。

とくにASD傾向があり知的レベルが高いお子さまにみられます。最近ご相談が増えてきているので、詳しく解説していきます。

発達障害の特性(ASDの拡大解釈や白黒思考等)がある場合、この「怖い」という感情にブーストがかかったり、「AI=すべて悪」と思い込んだりしてしまうことがあります。ネガティブな反応を示しているときに、無理に使わせようとするのは避けましょう。

「悪い顔をしたAIロボットが人間を操る」「脳が溶ける」と思いながら、AI利用を拒否する中学生

以下のステップで、使っても大丈夫な場面を探っていくのがおすすめです。

①感情を否定せず、話を聞く
まずは、お子さまの気持ちに寄り添いながら、「なぜ怖いと思ったのか」を聞いてみるようにしましょう。
どんなニュースを見たのか、どんなところが怖かったのかなど、お子さまの恐怖や不安の正体を探っていきます。

②「認知的降伏」について説明する(お子さまによってはスキップOK)
認知的降伏は、簡単に言うと「自分で考えることをやめて、AIに思考や判断を丸投げするようになる状態」を指します。認知(=自分で考える・判断する・覚える)を放棄してAIに降伏(=屈して従う)するということです。
脳は使わないと衰えてしまいます。AIに依存して、認知することを放棄した結果「脳が溶ける」と言われるような状態になってしまうのです。
適切な使い方(AIの回答は答え合わせをする、丸投げせずに自分でも考える)をすれば、避けられることを伝えましょう。

少し難しい内容なので、お子さまの理解度合いによって伝え方をアレンジする必要があります。
認知的降伏には触れず、「AIには意思(人間を支配しようという考え)がないこと」や「電卓と同じ、人間が使う便利な道具」という説明に変えるのもよいでしょう。

③「怖い」を感じない使い方を探る
実は「AIそのものが怖い」わけではなく、特定の機能に恐怖を感じていることがあります。「自分っぽくない言葉になるのが嫌だ」など、何に抵抗感があるのかを聞いてみるようにしましょう。
「ここはAIを使っても気にならない(怖くない)」「ここはAIを使わずに自分でやりたい」と分類をしていきます。

④思考や判断を伴わない「遊び」で使う
「考えを支配される」という怖さを軽くするために、まずは思考や判断をAIに委ねない「遊び」からはじめてみましょう。AIが作ったものを人間が笑って楽しむ、という体験は支配される恐怖の軽減につながります。
例えば「ダジャレを10個考えて」「変な早口言葉を作って」「ネズミにおびえるライオンの絵を描いて」など、クスッと笑えるような使い方をすることで、AIに対する過度な警戒心や抵抗感を和らげやすくなります。

お子さまが納得できない場面で、無理にAIを使わせる必要はありません。しかし、今後の社会ではAIが「当たり前」のツールになり、将来的に「使いこなせること」が求められる場面も出てくるかもしれません。
「絶対に使わない」とシャットアウトしてしまうのではなく、「使っても大丈夫な場面でだけ使う」という、柔軟な付き合い方を目指していくことが大切です。

音声入力を活用しながら楽しそうにAIと会話する中学生。

子どもにあうAIの使い方を探ることが大切

生成AIは、発達障害のあるお子さまの「苦手」をフォローし、「得意」を伸ばすために非常に役立つツールです。
スケジュール管理やコミュニケーションの練習、将来の仕事探しなど、その活用方法は多岐に渡ります。

生成AIを適切に使っていくためには、良い面だけでなく、リスクや注意点をしっかり理解していくことが大切です。
お子さまの特性や困りごと、性格などによって「合う使い方」は一人ひとり異なります。
「便利なツールだから使ったら?」とお子さま任せにするのではなく、保護者の方がお子さまに寄り添いながら、お子さまと一緒に使い方について考えていくようにしましょう。

お子さまに必要な支援・配慮のこと、困りごとへの対処法に関する相談先として、療育をおこなう障害福祉サービス「児童発達支援(未就学児向け)」「放課後等デイサービス(就学児向け)」があります。
ハッピーテラスでは、お子さま一人ひとりの特性と発達段階に合わせ、“今”必要な療育を提供しています。
まずはお気軽にご相談ください。

【参考文献】

Evan F. Risko, Sam J. Gilbert(2016)「Cognitive Offloading」, 『Trends in Cognitive Sciences』

過度のインタネット利用が子ども達の脳発達を阻害する|東北大学 加齢医学研究所 川島隆太

R. A. Bjork(1994)「Memory and metamemory considerations in the training of human beings」, 『Metacognition: Knowing about knowing(MIT Press)』

How AI assistance impacts the formation of coding skills|Anthropic

Cognitive and attentional mechanisms in delay of gratification|American Psychological Association

志賀敏宏(2015)「セレンディピティの構造研究−偶然と必然の相互作用−」

Nathaniel Barr, et al.(2015)「The brain in your pocket: Evidence that Smartphones are used to supplant thinking」, 『Computers in Human Behavior』

Simon Baron-Cohen, Alan M. Leslie, Uta Frith(1985)「Does the autistic child have a “theory of mind” ?」, 『Cognition』

David Premack, Guy Woodruff(1978)「Does the chimpanzee have a theory of mind?」, 『Behavioral and Brain Sciences』

Yalda T. Uhls, et al.(2014)「Five days at outdoor education camp without screens improves preteen skills with nonverbal emotion cues」, 『Computers in Human Behavior』

Alexis Hiniker, et al.(2021)「Kids’ Interactions with Voice Interfaces: Parents’ Perspectives on Smart Speakers」, 『ACM Interaction Design and Children』


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