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発達障害の子どもの「偏食」|原因とサポート方法

更新日

障害の有無を問わず、食べ物の「好き嫌い」や「食べ渋り」があるお子さまは少なくありません。栄養面を心配して「どうにかして食べさせたい」と悩んでいる保護者の方も多いのではないでしょうか。

偏食」とは、特定のものだけを食べる、もしくは特定のものを一切食べないことを指します。
発達障害の中でも特にASD(自閉症スペクトラム障害)の特性のあるお子さまの場合には、偏食の原因が特性によるものであることがあります。
今回は、発達障害のあるお子さまの「偏食」の原因とご家庭でのサポートテクニックについて紹介します。

発達障害のある子どもの「食事」の苦手

発達障害があるお子さまの場合、その特性によって「食事」に関する苦手があることがあります。特性が原因である場合には、「わがまま」ではなく「どうしようもない」ことなのです。

そのため、一般的に語られている食事のしつけが通用せず、むしろ特性に配慮をしない指導をすることで、お子さまに大きなストレスや苦痛を与えてしまうことがあります。
お子さまの特性にあわせたアプローチをすることが大切です。

【偏食】好き嫌いをする子どもとそれを見て困っている母親

発達障害の子どもの「偏食」の原因

特定のものだけを食べる、特定のものを一切食べない「偏食」。単なる好き嫌いや食い渋りだと思われがちですが、その原因が特性にある場合には、苦手なものを無理に食べさせられるのが耐え難い苦痛になることがあります。
偏食の原因として考えられる特性について解説していきます。

ASD特性 感覚特性(感覚過敏) 

感覚特性(感覚過敏)」がある場合には以下のような「苦手な感覚」があります。

  • 味覚過敏:特定の味(苦い・甘い・しょっぱい等)
  • 触覚過敏:特定の食感(さくさく・ねばねば・どろどろ等)
  • 嗅覚過敏:特定のにおい(生臭い・青臭い・酸っぱい等)

その感覚に耐えられず、吐き出してしまったり、見るだけでも強い拒否感を感じてしまったりするケースがあります。
逆に、特定の感覚を過剰なほど好むこともあり、その刺激を求めることもあります。例えば、ざくざくした食感のものばかりを好むなどです。

感覚特性については「感覚特性」とは?感覚過敏・感覚鈍麻ってどんな症状?の記事もあわせてご覧ください。

ASD特性 こだわり

こだわり特性」がある場合には、特定の味や食感のものしか食べない(もしくは特定のものを食べない)ケースがあります。
「ハイコントラスト知覚(白か黒か、0か100かなど極端な捉え方)」がある場合は、今ある知識や過去一度の経験によって「すべてそうである」と思い込むなどの誤学習をしやすいと言われています。

例えば、「白い食べ物はおいしい・赤い食べ物はまずい」と見た目で条件付けしたり、「魚を食べると骨が必ず刺さる」と過去に起こった悪いことが毎回あると思い込んだりすることがあります。
発達障害の脳の特性により、嫌な記憶を思い返しやすい傾向がある場合には、ネガティブなイメージの紐づけがされやすくなることがあります。

また、「スープは温かくないと飲まない」「○○は学校でしか食べない」「サラダを食べたあとでないとおかずは食べない」「この食器でないと食べない」など食事のマイルールを譲れないケースもあります。

「見た目」に苦手を感じることもあり、野菜や果物の種が気持ち悪い、揚げ物の衣が突き刺さるように感じることがあります。原因となる特性はお子さまによってさまざまですが、先述した「感覚特性」「こだわり」は、「はじめて見るものへの拒否反応」などが考えられます。

魚の臭いに耐えられなかったり小骨が喉に刺さった嫌な記憶を思い出し、鼻をつまみ吐きそうな顔で「これは食べない!」と拒否する子ども

これらの原因の他に、口腔機能(噛む、舌を動かす、飲み込む等)や運動機能(箸やフォークを使う等)の発達が特性によって遅れている場合には、「飲み込みやすいもの」「手で食べることができるもの」ばかりを食べるというケースもあります。

家庭での「偏食への指導」テクニック

無理に苦手なものを食べさせたり、食べないことを叱ったりすると、「食事」をすること自体が嫌いになってしまうことがあります。
発達障害のあるお子さまは、脳の特性によって嫌な記憶が鮮明に残りやすい傾向があるため、サポートをするときには注意するようにしましょう。

保護者の方自身が、「好き嫌いなく食べられることが正しい」「偏食はわがまま」という考えを持たずに、お子さまに寄り添うことが大切です。とくに「感覚過敏」は、苦手なものに対して耐え難い苦痛や大きなストレスを感じることがあります。

無理に克服させようとせずに、どうすれば苦手な感覚を避けることができるのかをお子さまと一緒に考えていきます。

おかゆを見ながら「ドロドロした食べ物が苦手」と伝える子どもと、子どもの話を傾聴する母親

偏食へのサポート方法をステップごとに紹介します。

1.その食べ物が苦手な理由を確認する

味覚(どんな味)・触覚(どんな舌触り、口当たり)・嗅覚(どんなにおい)・視覚(どんな見た目)など、どの感覚がどのように苦手なのかをヒアリングしてみましょう。苦手な食材が複数ある場合には、共通点が見えてくることがあります。

過去の嫌な経験やマイルールによって食わず嫌いをしている場合には、誤学習へのアプローチとして学び直しのサポートをするようにしましょう。
「食わず嫌い」の学び直しのためには、「苦手なものを食べてみる」というチャレンジをさせることが必要です。
お子さまに「苦手だけど、頑張ってみたい」「我慢してでも、食べてみよう」と強いモチベーションを持たせることがポイントです。この強いモチベーションの源泉となるのが「ご褒美」です。いつもなら容易に要求を飲まないもの(例:ゲームを買ってあげる、遊園地に連れて行ってあげる等)で常日頃お子さまが強く希望しているものであると、より効果的です。
ただし、ご褒美欲しさに行動がエスカレートしていかないように気を付けましょう。(例:「食べるから、あのゲームも買ってよ!」等)また、ご褒美を与えるまでに、あまり間があいてしまうと、達成感が落ちてしまうので注意しましょう。

口腔機能や運動機能の未発達の場合には、発達段階に応じた「食事の練習」をしましょう。

2.苦手な感覚を感じづらくさせる調理方法を考える

すり下ろしたり、細かく刻んだりして、好きな食べものに混ぜるなどの工夫をすることで、苦手な感覚を感じづらくさせることができます。例えば、イチゴの「酸味」が苦手である場合には、ジャムにすることで酸味を和らげることができます。食感が苦手な場合には、揚げる・固める・煮るなど調理法を変えてみるのもよいです。

ただし、特性のある子どもの場合は少しの感覚でも敏感に感じ取ってしまうため注意しましょう。

3.スモールステップで食べる練習をする

まずは一口食べてみる、からスタートしましょう。飲み込むことができれば、その場ですぐに褒めてあげましょう。

一口食べられたらそこで練習は終わりにしてください。一口食べられたから、もう一口!とつい練習を続けたくなる方も多いですが、その日設定したゴールが達成できたら、その日の練習はそこで終了させるようにしましょう。

そのあとは「二口」「小さなお皿」「中くらいのお皿」などスモールステップでゴールを設定し、徐々に慣らしていくことで、苦手な食材を食べられるようになることもあります。
お子さまによって必要な工夫やサポートが異なるため、2と3を繰り返していくことが大切です。

4.それでも難しい場合は代替案を検討する

さまざまな工夫をしてもどうしても食べられないことも少なくありません。苦手な食材と似た栄養素のある食材を使う、サプリメントで必要な栄養素を補給するなどの代替案を検討することも必要です。

無理に食べさせようとすると偏食が悪化したり、食べることそのものが嫌いになったりするケースがあるため注意しましょう。お子さまのペースで、焦らず取り組んでいきましょう。

苦手なものを食べることが出来たら、好きなものを食べられるなど、ご褒美を設定するのもおすすめです。食事を楽しい時間だと思わせるためのアプローチも重要です。

ハンバーグに「実はにんじんが入っている」と説明する母親と、おいしそうにハンバーグを食べる子ども

子どもの特性を理解することが大切

発達障害は目に見えない障害と言われており、特性による困難さに周囲が気づかないことがあります。

さらに、今回紹介した「偏食」は特性がないお子さまにおいても多く見られることであるために、一般的に語られている「好き嫌いの克服方法」を試してしまいがちです。
特性が背景にある場合には、それではうまくいかなかったり、かえって状況が悪化してしまったりするケースがあります。

例えば、今回ご紹介をした「感覚特性」は、発達障害の特性によって「周囲の人と同じ感覚情報を受け取っても、脳が異なるとらえ方をする」ために起こります。単なる「好き嫌い」や「わがまま」だと考えてしまいがちですが、日常生活に支障が出るほどにその刺激に苦痛を感じてしまいます。

「感覚特性」のひとつである「味覚過敏」について、例を用いてかみ砕いて説明します。

新鮮な生野菜を食べたとき感じる味には「おいしい、みずみずしい、苦い、青臭い」などがあります。
(野菜が嫌いな方を除き)特性がない方の場合は、「おいしい、みずみずしい」とポジティブな感覚に自然と注意を向けることができるため「苦い、青臭い」が気にならないのですが、味覚過敏がある場合には、すべての味覚を同じレベルで感じます。

さらに、これらの感覚が鋭いために野菜の「苦い、青臭い」をより強く感じてしまうのです。
ただ単に味覚が敏感なのではなく、すべての味を強く感じてしまうということです。

特性による「苦手」は、お子さまにとっては努力してもどうしようもないことで、無理に頑張ろうとすることで体調を崩したり、心身に影響が出てしまったりすることがあります。
保護者の方が、お子さまの特性を適切に把握し、周囲に理解を求めることが大切です。

学校教育で食育をおこなう場合は、事前に学校の先生に障害について説明をすることなどが必要です。

児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、発達に課題のあるお子さまへの療育だけではなく、その保護者の方へのサポートもおこなっています。
お子さまの特性への理解を深めたい、家庭での療育の方法を知りたい、園・学校との連携について教えてほしいなどのご希望のある方は、ぜひお近くの教室にご相談ください。


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