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「助けて!」と言えない理由:子どもが「困っている」ことを伝えられるようになる方法とは
こんにちは!
千葉県柏市の放課後等デイサービス(主に発達障害・特性のある中高生対象・就労準備型:プログラミングコース、e-Sportsコース、就労準備コース)
「ハッピーテラス柏教室」です。

「うちの子、困っているはずなのに、なぜか『助けて』と言ってくれない…」
「学校で困ったことがあっても、先生に言えないみたいで心配…」
お子さまが自分の気持ちや困りごとを言葉にできず、一人で抱え込んでいる姿を見かけたことはありませんか? 子育てにおけるこうした悩みは、多くのご家庭から相談をお受けすることがあります。
こうした子どもたちの背景にある気持ちとして、「迷惑をかけたくない」「こんなことを聞いたら恥かしい」といった気持ちから、子どもが助けを求めるのをためらうことは少なくありません。しかし、その背景には本人の「優しい性格」や努力不足だけでなく、発達障害(ASD:自閉スペクトラム症やADHD:注意欠如・多動症など)の特性が関係している可能性もあります。
例えば、ASDの特性では、相手の気持ちや状況を読み取ることが苦手なために「今、話しかけてもいいのかな」とタイミングを逃してしまったり、そもそも「何が分からないのか」を自分でも整理できずに質問できなかったりすることがあります。
このような「助けを求められない」状態が続くと、お子さまは「できないのは自分が悪いからだ」と自分を責め、自己肯定感が低下してしまいます。最悪の場合、うつ病や不安障害といった二次障害につながるケースも一部でみられます。
(発達障害の子どもの「二次障害」について詳しくは『発達障害の子どもと二次障害|早期予防が大事【事例紹介】』の記事もご覧ください!)
この記事では、お子さまが「助けて」「手伝って」「困っている」と家庭や学校、友だちや家族にうまく言えない理由やその原因を、発達の特性という観点から詳しく解説します。さらに、ご家庭でできる具体的な関わり方や、お子さまが安心してヘルプサイン(=援助希求能力、援助要求)を出せるようになるための環境づくりのヒントを、療育の視点からご紹介します。お子さまの隠れたサインに気づき、適切なサポートをするための一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.なぜ自分の気持ちを言えないのか?考えられる3つの理由
2.「教えて!」「助けて」「困ってる」と言えるために:子どもがつまずく5つのステップ
3.援助要求と発達障害による特性との関係
4.【年齢別】子どもの成長・発達段階と「助けの求め方」の変化
5.家庭でできる!「助けて」を引き出すための具体的な関わり方
6.おわりに
1.なぜ自分の気持ちを言えないのか?考えられる3つの理由

① 言葉で表現する力が未発達
自分の「困った」という気持ちや状況を、的確な言葉にして相手に伝えることの難しさがあります。
② 心理的なハードルがある
「恥ずかしい」「負けた気がする」「怖い」といった感情や、「自分でやるべき」というプライドが、助けを求める行動を妨げていることがあります。こうした気持ちは自然なことだと思われる一方で、発達特性に加え、多くの子どもが共通して抱える心理的なハードルとして、援助を求める行動を妨げる大きな原因となっている可能性もあります。
他人の目を気にする気持ち
「できない子だと思われたくない」「恥ずかしい」といった、他者からのネガティブな評価を恐れる気持ちです。特に友人関係が重要になる思春期には、この「スティグマ」への恐れが、助けを求めることを妨げる最大の壁になることがあります。
「自分でやりたい」という気持ち
「人に頼るのは負けだ」「自分のことは自分で解決すべきだ」という「べき思考」「ハイコントラスト思考」、勝ち負けに対する「強いこだわり」も、助けを求めることをためらわせる一因です。この気持ちは、自立を目指すうえでは不可欠な価値観である一方で、適切にコントロールすることが発達特性によって難しい場合は、自分を追い詰めることにもつながりかねません。
過去の失敗体験
勇気を出して困っていることを伝えたり、助けを求めたのに、「後でね」と流されたり、「どうしてそんなことも分からないの?」と叱られたりした経験により、「学習性無力感」という状態になっていたり、「また否定されるかもしれない」という失敗に対する恐さがあるために次の「助けて」を言えなくさせてしまうこともあります。
③ 発達特性による困難がある
周囲の状況を読み取ったり、自分の状態を客観的に認識したりすることが苦手な場合、助けを求めるという発想に至りにくいことがあります。この点については、このあと詳しく解説していきます。
2.「教えて!」「助けて」「困ってる」と言えるために:子どもがつまずく5つのステップ

お子さまが「助けて」と伝えるまでには、いくつかの段階(ステップ)を踏んでいます。年齢によって多少の変化はありますが、基本的にはどの年齢・学年、発達段階でも同じ原則と言われています。どこでつまずいているのかを理解することで、お子さまにとって何が難しいかを判断し、的確なサポートにつなげていくことが重要です。
ステップ1:困っていることに気づく
そもそも自分が困っている状態だと認識できていないと、他人に援助要求を伝えることが難しいとされています。自分が困難な状況にあることを客観的に認識する最初の段階です。ここでは、「問題が解けない」「やり方がわからない」と自分の状態を把握します。発達の特性によっては、そもそも自分が困っていることに気づけない、または「まあいいか」と気にも留めないことがあります。
ステップ2:助けの必要性を判断する
次に、「自分でやるべきか」「人に頼るべきか」を判断することの難しさを感じる子どもがいます。これまでの経験・学習から「他人に助けを求めなくてもよい」と判断しがちになっている可能性もあります。「助けを求めるのは悪いこと」「自分でやるべき」という気持ちが強いと、この段階で援助を求める選択肢を消してしまいます。また、見通しを立てるのが苦手だと、困難の度合いを測ることができなくて、一人で抱え込みがちになることもあります。
ステップ3:どんな助けが必要か考える
何を手伝ってほしいのかを具体的に考え、言葉にする難しさがあることもしばしば。自分の困りごとを整理し、どんな助けが必要かを考えるワーキングメモリ(情報を一時的に記憶し処理する力)にも負担がかかります。この段階でつまずくお子さまには、思考を整理するための支援が効果的です。
ステップ4:誰に頼るか決める
誰なら助けてくれるか、どう思われるかを考えてしまい、頼る相手を決められないことがあります。具体的には、「断られたらどうしよう」「変に思われるかも」という不安や羞恥心(スティグマ)が、行動のブレーキになってしまうことが想定されます。また、ASDの特性があると、相手の状況や気持ちを推測することが難しく、誰に頼るべきかの判断に迷います。
ステップ5:助けてもらった経験を次に活かす
助けてもらったことで解決した、という経験が「次も頼ろう」という気持ちにつながるとされています。結果として「うまくいった」「次も困ったら頼んでみよう」と学習し、次の行動につなげる段階です。ここでのつまずきでは、「誰かのおかげで問題が解決した」という因果関係を捉えるのが苦手な場合、「助けてもらうと楽になる」という成功体験として蓄積されにくく、援助を求めるスキルが育ちにくいことがあります。
3.援助要求と発達障害による特性との関係

発達の特性によって、援助を求める際のつまずきやすいポイント(=見えない壁)が異なります。適切な支援のためには、その子の特性への理解が不可欠です。
自閉スペクトラム症(ASD)のお子さま
相手の気持ちや意図を想像する心の理論や、その場の空気を読む社会的認知の困難が大きく影響します。他者も自分とは違う考えを持つことが理解しにくいため、「誰が助けてくれそうか」「今頼んでも大丈夫か」という判断に迷います。また、共同注意(他者と注意を共有する力)の弱さから、そもそも「困ったら人に聞く」という発想に至らないこともあります。コミュニケーションの特性に合わせたサポートが求められます。
注意欠如・多動症(ADHD)のお子さま
計画を立て、感情や行動をコントロールする実行機能の困難が背景にあります。衝動性が強いため、「助けを求める」というステップを飛ばして感情的になったり、諦めてしまったりします。また、情報を一時的に記憶し処理するワーキングメモリの弱さから、何を質問したかったかを忘れてしまうことも、援助要求を妨げる一因です。
限局性学習症(SLD)のお子さま
学習上の失敗体験が重なることで、「どうせ自分にはできない」という自己効力感が低下しがちです。また、「できない」と知られることへの羞恥心や劣等感があるために、援助を避けることがあります。また、自分の困りごとを状況に合わせて的確な言葉で伝える「語用論的能力」の困難が影響することもあります。
感覚処理特性のあるお子さま
感覚過敏や感覚鈍麻による強い不快感やストレスが、助けを求める思考よりも先に立つことがあります。パニックや「フリーズ」によって言葉をうまく紡げなかったり、「回避行動」が先に出てしまうため、援助要求に至るまえに思考が停止してしまうことがあります。また、音や光、触覚などの感覚的な困難は本人も言語化しにくく、周囲に「困っていること」が伝わりにくいという課題もあります。
4.【年齢別】子どもの成長・発達段階と「助けの求め方」の変化

困っているサインを伝えるスキルは、お子さまの発達と共に少しずつ変化していきます。言葉の発達や心の成長に合わせて、直接的な表現方法はから、間接的で社会的なものへと変化していきます。ここでは、お子さまの年齢ごとの「助けの求め方」の発達の目安と、見逃したくないヘルプサインの具体例をご紹介します。お子さまなりのSOSに気づき、成長をサポートするためのヒントとしてお役立てください。
乳幼児期(1~3歳):体全体で直接伝える
この時期のお子さまは、まだ言葉で気持ちを表現するのが難しいため、体全体を使ってSOSを発信します。おもちゃが取れないと大声で泣き叫んだり、できないことがあると床に突っ伏して固まってしまったり。また、大人の手をぐいっと引っ張って問題の場所へ連れていくのも、お子さまなりの立派な「助けて」という援助要求・メッセージです。
特に発達に特性のあるお子さまの場合、小さな表出があっても、気づかれにくいこともあります。例えばASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さまは、困っていても大人と視線を合わせたり、指差しで要求したりする行動が少ない傾向があります。一方で、ADHD(注意欠如・多動症)のあるお子さまは、言葉で伝えるよりも先に、物を叩いたり投げたりといった行動でネガティブな気持ちを伝えることがあります。
就学前~前期(4歳~小学生前半:):「ことば」と「態度」で揺れている段階
集団生活が始まり、言葉でのコミュニケーションが豊かになるこの時期。「できない!」「手伝って!」と、直接的な言葉で助けを求められる場面が増えてきます。その一方で、先生に手を挙げてもなかなか発言できなかったり、先生ではなくこっそり隣の席の友達に聞いたりすることもあります。
言葉にならないサインも多く見られ、授業中に分からないことがあると黙って固まってしまう、友だちとのトラブルでどうしていいか分からず一人でうろうろしてしまう、といった態度の変化も「困った」というメッセージです。
この段階でASDのお子さまは、そもそも「何を」「どう聞けばよいのか」が分からず、混乱してパニックになってしまうことがあります。また、ADHDのお子さまは、課題でつまずいても先生に聞くという発想に至らず、他のことを始めたり、「もうやらない!」と投げ出してしまったりすることが見られます。
学童後期(小学校高学年)
高学年になると物事を論理的に考えられるようになり、「○○が苦手なので手伝ってほしい」「ここまで自分でやってみたのですが、ここから先が分かりません」と、理由や状況を説明して援助を求められるようになります。
その一方で、自尊心が高まり、「できない自分」を見せることへの恥ずかしさも芽生えてきます。そのため、本当は分からなくても周りの目を気にして「わかったふり」をしたり、ノートが白紙のままでも質問できなかったりすることも。宿題や忘れ物が増えたり、苦手な活動を避けたりする傾向も、助けを求められずにいる心のサインかもしれません。学校での悩みが深刻化する前に、家庭でのサポートが重要になります。
特にSLD(限局性学習症)のあるお子さまは、周りと比べて劣等感を抱き、「助けを求めたらバカにされるのでは」と思い込みがちです。また、過去に失敗を叱られた経験のあるADHDのあるお子さまは、大人への不信感から他人を頼ったり、質問したりすること自体を避けてしまう傾向があります。
思春期(中学生~高校生)
心も体も大きく大人へと近づくこの時期は、「自分の力で解決したい」という自律性への欲求が強まり、「この資料、ありませんか?」といった間接的な表現を使うなど、援助の求め方がより戦略的になります。
しかし、その裏返しで、友人関係のトラブルや勉強の悩みも「相談するのは格好悪い」というプライドから一人で抱え込み、結果的に孤立してしまうケースも少なくありません。進路や心の健康問題といった重要な課題に直面しても誰にも相談できず、SNSなど匿名の場でしか本音を吐き出せないのも、この時期特有の複雑な援助要求の形と言えるでしょう。
この傾向は、発達の特性によってさらに強まることがあります。ASDのあるお子さまは自立志向がより顕著になり、自分の困り感を他者に見せることを極端に嫌がることがあります。ADHDのあるお子さまはプライドの高さから助けを求める行為自体を避け、問題を深刻化させてしまうこともあります。
5.家庭でできる!「助けて」を引き出すための具体的な関わり方

ここでは、お子さまの「助けて」という気持ちを安心して引き出すために、お子さまの特性や発達段階を理解した上で、かかわり方のヒント・コツを療育の視点も交えてご紹介します。
① 発達段階に応じた「伝えやすい方法」を一緒に見つける
言葉で気持ちを伝えるのが苦手なお子さまには、言葉以外の選択肢を用意してあげることが有効です。大切なのは、「こうすれば伝わるんだ」という成功体験を積ませてあげることです。
例えば、言葉の発達がゆっくりなお子さまには、イラストや写真を使った絵カード(PECS®など)や、マカトンサインのような簡単なジェスチャーが助けになります。お子さまが何かを伝えようとしている時には、「○○がしたいんだね」「“てつだって”って言いたいのかな?」と、気持ちを先回りして代弁してあげることで、お子さまは表現の方法を学んでいきます。
② 大人が「助けて」のモデルになり、見本を見せる
「あれ、この漢字どう書くんだっけ?教えてくれる?」とお子さまを頼ったり、お子さまに役割を与えて「ありがとう、助かったよ!」と伝えられたりする経験は、「自分も誰かの役に立てる」という自信を育み、助けを求めることへの抵抗感が小さくなると考えられます。「大人でも困ることがあるし、助けを求めていいんだ」という安心感を、伝ることがポイントです。
③ 「最低限だけ」手伝って成功体験を積む
お子さまの「全部自分でやりたい」というこだわりや自立心を尊重しつつ、小さな成功体験を積ませてあげることも大切です。療育ではこれを「スモールステップ」と呼んでいます。
特にASDの特性でこだわりが強いお子さまには、どこまで手伝われるのが許容範囲かを見極める必要があります。「言葉でやり方を教える」「一緒にやってあげる」「一部分だけ手伝う」など、支援のレベルを調整することがポイントです。例えば「すべてをやってあげる」のではなく、最低限のサポートで「助けてもらったら、できた!」という経験を重ねることが、「次も困ったら頼ってみよう」という前向きな気持ちにつながります。
④ ヘルプサインが出るのを「待つ」姿勢と「見つける」意識
お子さまが困っている様子を見ると、つい先回りして手を出したくなりますが、ほんの少しだけ「待つ」姿勢も時には必要です。お子さまが自分で考え、助けを求めるサインを出すための時間を作ってあげることがポイントです。
もちろん、パニックになるまで放置するわけではありません。お子さまの視線がこちらを向いたり、ため息をついたり、そわそわし始めたり、何らかのサインが出たら、すぐに「どうしたの?」と声をかけて援助しましょう。「困ったときはちゃんと見ていてくれるし、助けてくれる」という信頼関係を築くことが、自発的な援助要求につながっていきます。
6.おわりに
もし、ご家庭での対応や子育てに悩みを感じたら、児童発達支援や放課後等デイサービスのような専門機関に相談するのも一つの大切な選択肢です。
「わからない」と伝えること自体が、発達障害による特性や、これまでの経験から、一部のお子さまにとっては非常に高いハードルになっていることをご理解いただければ幸いです。
ハッピーテラスでは、一人ひとりのお子さまの発達の特性に合わせたプログラムを提供し、「できた!」の成功体験を積み重ねるサポートをしています。どうぞお気軽にお問い合わせください。
ハッピーテラス柏教室では、現在「金曜:就労準備コース」「火曜:プログラミングコース」に空きがございます。発達障害の特性のあるお子さまの「就労・進路」にお悩みの小学校高学年~中学生・高校生の方がいらっしゃいましたら、些細なことでも結構ですのでぜひ、ご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新もお楽しみに!
【ハッピーテラス柏教室】
メール:kashiwa@happy-terrace.com
電話:04-7160-1130

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