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自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?【知っておきたい基礎知識】

更新日

乳幼児期(0歳~2歳)にみられる特性例

  • 視線があいにくい
  • 抱っこを嫌がる
  • あやしても笑わないなど、反応が乏しい
  • 親の後追いをしない
  • いかにも泣きそうな場面(例:お腹が空いている、おむつが汚れている)なのに泣かない
  • お昼寝をしていないはずなのになかなか寝ない/寝てもすぐ目を覚ます
  • 名前を呼ばれても反応しない、返事をしない
  • 言語発達の遅れ(話し言葉だけではなく、ジェスチャーを含む)
  • オウム返しや同じことを繰り返す独り言(頻度が非常に高い)
  • 共同注意(興味あるものを指す、周囲が指さしたものを見る)がみられない
  • 特定の音に過剰に反応して不機嫌になる(ドライヤー、掃除機など)
  • 特定の感覚に執着する(好きな模様を眺めつづける、特定の音に聞き入るなど)
  • 特定のもの、いつも同じものしか食べない、偏食
  • 自分の体や特定のものを使った常同的な運動に没頭する(体を前後にゆする、回転する、手をひらひらさせるなど)

幼児後期(3~5歳)にみられる特性例

  • 「ちょうだい」「どうぞ」や「ただいま」「おかえり」といった異なる役割の言葉を逆転したり、混同して使う(3歳~)
  • クレーン動作(大人の手をつかんでほしい物のところへ連れていき、要求する)
  • 特定の玩具にこだわることや、玩具にあった遊び方ではなく独特の遊び方をする
  • ごっこ遊びをしない
  • 一人遊びが多く、他のお子さまと一緒にいても関わりを持とうとしない
  • 順序や配置などがいつも同じであることにこだわる、予想外の変化に弱く混乱しやすい
  • 数字や文字・キャラクター・天気図などの記号的なものや限定的なテーマにこだわる


児童期にみられる特性

就学前までは、身支度などの手助けをご家族がおこない、他のお子さまとの関わりの際にも、家族や園の先生など大人の目の届く範囲で過ごすため、困ることがないようにサポートをしてもらえたり、困ったことがでたときにもすぐに対応をしてもらうことができます。
しかし、就学するとお子さま自身が対応をしなければならないことが増え、周囲からのサポートを十分に受けられない場面も増えてきます。さらに、対人関係やコミュニケーションの機会が増え、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴がよりわかりやすく現れるようになり、「苦手さ」「困難さ」が表面化するようになることがあります。
児童期(小学生)の特性を説明しますが、中学生・高校生においても同様の特性がみられます。

児童期にみられる特性例

  • 忘れ物やなくしもの、気の散りやすさやケアレスミスが多い
  • 書字や読み・算数の困難や、説明を聞きながら板書内容を写せないなどの学習面でのつまずき
  • 指示されたことを正しく理解できない、わからなかったことを質問するなど援助を求めるのが苦手
  • 適度な距離感や加減をしながら他のお子さまと関わることが難しい
  • 相手の意図や気持ちを汲まずに、相手を怒らせるようなことを言ってしまう
  • 表情や態度などから、相手の感情を適切に推測できない
  • 文字どおりに受け止め、比喩や皮肉などの婉曲的な表現が理解できない
  • その場の文脈や暗黙の了解がわからない(空気が読めない)
  • 話し相手にかまわず、自分の話したいことを一方的に話す、割り込む
  • 自分のやり方や手順にこだわり、それを変えることを嫌がる

自閉症スペクトラム障害であっても、障害の特性と、もともとの性格は、分けて考える必要があります。
もともと人と関わるのが好きではない性格に、共感能力が弱いという特性が合わさると、人との関わりの中で、呼ばれても反応しない、同年代の子どもたちと一緒にいても関わろうとしないなどといったケースがよくみられます。
その一方で、人と関わるのが好きな性格にもかかわらず、共感能力が弱いと、積極的に他者に働きかけるものの、相手の反応を無視して一方的に話してしまうといったケースもみられます。
一人ひとり特性が異なるため、同じ自閉症スペクトラム障害(ASD)でも他者への関わりの中でみられる困難さもさまざまです。

4.自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴は性別によって異なる?

自閉症スペクトラム障害は女児よりも男児に多く見られることが報告されています。
しかし、性別差については、十分な知見が少ないこともあり、性別特有の障害特性の違いまで考慮に入れた研究はほとんど報告されていません。
ただし、行動面の特徴として、男児より女児の方が対人コミュニケーションの困難が目立ちにくく、一見問題が少なく感じられることがありますが、集団生活においては適応の問題を抱えやすく、抑うつや不安傾向が高くなる傾向が指摘されています。
診断基準にもなっている「こだわり」については、男児の方が当てはまるケースが多く、反復的、常同的な行動が多い傾向にあると報告されています。


5.自閉症スペクトラム(ASD)の治療法はある?

自閉症スペクトラムは、現代の医学では障害を根本的に治すことは不可能とされています。
自閉症スペクトラムのお子さまへのサポートは、心理社会的療法をベースに、お子さま一人ひとりにあわせた療育が必要です。

薬物療法

主症状である社会的コミュニケーションの苦手さに対する薬物療法は、残念ながらありません。ただし、特性の一部や併発する症状に対して、処方がされることがあります。

リスペリドン(®リスパダール)
アリピプラゾール(®エビリファイ)
自閉症の乱暴、興奮を抑える
ピモジド(®オーラップ)
*本来は統合失調症の治療薬
小児の自閉性障害、精神遅滞に伴う以下の症状:動き・情動・意欲・対人関係等にみられる異常行動・睡眠・食事・排泄・言語等にみられる病的症状、常同症等がみられる精神症状を抑える

心理社会的なサポート

「心理社会的」とは、気持ちなどの精神面や生活環境に起因するものを指し、お子さまの社会生活をサポートするためにおこなう治療法(療育)として下記があります。

環境調整
お子さまの特性に応じて、生活環境を整え、困難さの解消や軽減を目指す
<例>
・暗黙のルールをくみ取ることが難しいため、その場で守るべきルールを明文化し、掲示をしたりメモ等を携帯させたりする
・感覚過敏に応じた部屋にするため、間接照明を用いる。家具や壁紙は過激色(赤やオレンジなどビビッドカラー)を避け、落ち着いた色味にする。
行動療法
・応用行動分析:お子さまの行動を客観的に捉え、行動を変えることを目指す
・認知行動療法:お子さまの考え方や認知に働きかけ、気持ちを楽にしたり、行動コントロールをすることを目指す
・ソーシャルスキルトレーニング:社会で暮らしていくための対人スキル習得を目指す
保護者の方への支援
(ペアレントトレーニング)
子育てに取り組む保護者の方が、お子さまとの適切な関わり方(指導の方法や褒め方など)を学ぶことや、子育てにおける困りごとの解消などを目指す

6.さいごに お子さまの発達が気になったら…

児童期によく見られる特性の例でも紹介をしましたが、表情や態度から相手の感情を正しく推測できなかったり、暗黙のルールが理解できなかったり、他者との関わりの中でとくに困難さがみられることがあります。言葉を文字通り受け取ってしまうため「冗談が通じない」などと思われてしまうこともあります。
また自分のルールへのこだわりが強く、それを他者に強要することや、他のやり方や手順を受け入れないことなどがあります。
いずれも特性からくる困難さによるものではあるものの、他のお子さまには理解がされず、「空気が読めない」「わがまま」などと思われ、自信をなくしてしまうことに繋がってしまう可能性もあるのです。
お子さまが自信をなくしてしまう前に、療育(発達支援)を通し、適切なアプローチをおこなうことで、自己肯定感を守っていくことができます。
「もしかしたら…」と感じている保護者の方は、ぜひ一度医療機関を訪ねてみてはいかがでしょうか?

この記事では自閉症スペクトラム障害の「苦手」や「困難さ」について紹介をしましたが、特性が「長所」や「才能」になることもあります。
歴史的人物や世界的な著名人の中にも、発達障害の特性を活かして功績をあげている方、活躍している方が多くいます。
「こだわり」や「ルールの遵守」は、ITエンジニアに求められる素養と言われていることもあり、「シリコンバレー症候群(IT企業の多く集まるシリコンバレーでは、そこで働くエンジニアの少なくとも1割、グレーゾーンを含めると半数以上が発達障害または発達障害の傾向があると言われています)」という言葉も言われているほどです。
お子さまの「良い面」に気づいてあげるためにも、まずは障害に対する正しい知識を持つことが大切です。

参考文献
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD) 主な症状とは?
  • 1.Ferri, S. L., Abel, T., & Brodkin, E. S. (2018). Sex Differences in Autism Spectrum Disorder: a Review. Curr Psychiatry Rep, 20(2), 9
  • 2.Lai, M. C., Lombardo, M. V., & Baron-Cohen, S. (2014). Autism. Lancet, 383(9920), 896-910.
  • 3.Fombonne, E. (2003). Epidemiological surveys of autism and other pervasive develop mental disorders: an update. J Autism Dev Disord, 33(4), 365-382.
  • 4.Werling, D. M., & Geschwind, D. H. (2013). Sex differences in autism spectrum disorders. Curr Opin Neurol, 26(2), 146-153.
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準とは?
  • 倉澤・立山他、日本における自閉症スペクトラム障害の診断年齢, 保健医療学雑誌 10 (1): 34-41, 2019
  • 孤立/受動的・受け身/積極・奇異な人との関わり
  • Autism Speaks : Learn the Signs of Autism
  • https://www.autismspeaks.org/signs-autism
  • 日本語版 M-CHAT (The Japanese version of the M-CHAT): https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/aboutus/mchat-j.pdf
  • 国立精神・神経センター精神保健研究所(2010)
  • ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴は性別によって異なる?
  • 1. 大村一史, ASDの認知機能における性差(2020),山形大学紀要(教育科学)17(3),135-147
  • 2. Werling, D. M., & Geschwind, D. H. (2013). Sex differences in autism spectrum disorders. Curr Opin Neurol, 26(2), 146-153.
  • 3. Kirkovski, M., Enticott, P. G., & Fitzgerald, P. B. (2013). A review of the role of female gender in autism spectrum disorders. J Autism Dev Disord, 43(11), 2584-2603.
  • 4. Werling, D. M. (2016). The role of sex-differential biology in risk for autism spectrum
    disorder. Biol Sex Differ, 7, 58.
  • 5. 大橋圭・齋藤伸治. (2016). 自閉症スぺクトラム障害と性差. 小児科臨床, 69(8), 1327-1330
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