【保護者向け】発達障害×働く|進路の選択肢と就労の支援制度
前回の記事「【保護者向け】発達障害×働く|仕事選びをサポートするときのポイント」では、お子さまの職業選択をサポートするときのポイントについて紹介しました。前回の記事でもお伝えしたとおり「幅広く新しい情報を集めること」が非常に大切です。
今回の記事では、障害のある方の「“働く”をサポートする法律や制度」と「就労の選択肢」について紹介をします。
発達障害のあるお子さまの進路アドバイスをするときに役立つ情報をまとめました。
目次
「発達障害」×「働く」の情報を知る
発達障害のある方の「働く」を考えるときに、押さえておくべき知識をお伝えします。
法律を知る
はじめに、障害のある方の「働く」を支える法律について、簡単に紹介します。法律の内容を詳しく知る必要はありませんが、どのようなものがあるのか理解しておくことをおすすめします。
お子さまの進路について情報収集するときによく目にする「障害者雇用枠」や「合理的配慮」は、これらの法によって定められた制度です。障害のある方の求人動向は、法の改正(障害者雇用率など)の影響を大きく受けることがあるため、最新の情報を知っておくとよいでしょう。
障害者総合支援法
障害者・障害児を対象に、日常生活や社会生活を営むことができるように、必要な障害福祉サービス(就労移行支援や自立訓練など)に関係する給付や支援を定めた法律
障害者雇用促進法
障害者の職業の安定を図ることを目的とし、事業主(企業などの雇用主)に、「障害者の雇用義務」や「合理的配慮の提供義務」、「職業リハビリテーションの推進」などを定めた法律
障害者差別解消法
障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とし、「不当な差別的取り扱いの禁止」や「合理的配慮をしないのが差別であること」などを定めた法律
発達障害者支援法
発達障害者の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を図るため、「就労の機会の確保」や「職場定着」などの支援を定めた法律
それぞれの法律ごとに、対象となる「障害者」や「発達障害者」の定義が個々に定められているため注意が必要です。
民間企業の法定雇用率が2021年3月に「2.2%」から「2.3%」に引き上げられました。雇用率を未達成の企業には、納付金や企業名公表などがあり、これを追い風に障害者雇用枠の求人が増え続けています。
実態を知る
障害のある方の雇用状況や採用動向を知ることも大切です。これらの情報収集をするのに役立つサイトをご紹介します。
厚生労働省サイト
厚生労働省では「障害者雇用状況の集計結果」や「障害者雇用実態調査」をサイトで公表しています。障害種別や業界ごとの採用実績や賃金などを知ることができます。
障害者雇用枠の求人サイト
ハローワークだけでなく、民間企業も障害のある方向けの求人に特化したサイトを運営しています。実際の採用条件(仕事内容、応募条件、雇用条件など)を見ることができるため、世の中の求人動向を知ることができます。
求人サイトには、実際の採用条件や募集要項に関する情報が掲載されているため、「どんな仕事があるのか」「どれくらいの給与がもらえるのか」などの実態を知ることができます。
さらに詳しく情報を知りたい方は、行政の就労相談窓口や就労移行支援など、障害のある方の働くサポートをしている支援機関に直接話を聞くこともおすすめです。
「発達障害」×「働く」の選択肢を知る
障害のある方の就労の選択肢は、企業への就職だけではありません。
一般就労:「障害者雇用枠」と「一般雇用枠」
「一般就労」とは、企業などに就職し雇用契約を締結して働くことです。
障害者雇用枠
「障害者雇用促進法」に則り、設けられている採用枠を「障害者雇用枠」といいます。障害者雇用枠で働くためには「障害者手帳」が必要です。障害のあることが前提であり、合理的配慮を提供することを想定したうえで採用されるため、障害への理解や特性への対応を求めやすい求人枠です。
【参考:特例子会社】
特例子会社とは、障害のある方の雇用を増やし、障害のある方が安定して働けるようにするための特別な配慮をおこなう子会社です。親会社は、いわゆる大企業と呼ばれる従業員数の多い企業であることが多いです。障害のある方の雇用を目的とした子会社であるため、「障害のある方の雇用管理を適正におこなう能力」が要件とされており、より手厚いサポートを受けやすいといわれています。
一般雇用枠
障害のない方と同じ条件で雇用される採用枠を「一般雇用枠」といいます。もちろん、障害者手帳の有無や、障害の開示は必須ではありません。
【参考:一般雇用枠でのオープン(障害開示)就労】
一般雇用枠であっても、障害があることを開示すれば(障害者手帳の有無は不問)、合理的配慮を求めることができます。ただし、職務内容や成果は他従業員と同じことを求められるため、配慮内容によっては雇用主側に依頼することが難しい(合理的配慮の提供は「企業側の負担が重すぎない範囲で、対応に努めること」と定められており、必ずしも依頼した配慮が受けられるわけではない)ことや、障害への理解が職場から得られづらいことがあります。
仕事をするうえで、特性による苦手や困難が生じる場合や、就職先に障害への理解と配慮を求めたい場合には、職場に障害を開示する「オープン就労」がおすすめです。仕事が特性に合っていて、特別なフォローがいらない場合には「クローズ就労」の選択もあります。
福祉的就労:「就労継続支援」「地域活動センター」
「福祉的就労」とは、福祉施設との利用契約を結び、就労の機会の提供を受けることです。
就労継続支援
障害により一般就労が難しい方に対し、就労支援をおこないながら働く場を提供する障害福祉サービスを「就労継続支援」といいます。就労継続支援A型(利用者と事業所が雇用契約を結び、最低賃金以上が支払われる)と就労継続支援B型(雇用契約は結ばずに、工賃(最低賃金よりも低いことが多い)が支払われる)があります。
地域活動センター
障害のある人を対象として創作的活動・生産活動・社会との交流促進などの機会を提供する支援機関を「地域活動支援センター」といいます。雇用契約は締結せず、工賃が支払われます。障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)の施行前は、「作業所(小規模作業所、共同作業所)」と呼ばれていた施設です。
まずは「福祉的就労」で経験を積みながら、働くことへの自信を身につけ、そのあとに「一般就労」を目指すという選択肢もあります。