発達障害のあるお子さま向け|性教育のススメ【家庭での取り組み編】
前回のコラム「発達障害のあるお子さまへの正しい性教育【基礎知識編】」では、ご家庭で性教育をおこなうときに知っておくべき知識をお伝えしました。
今回は「家庭での取り組み編」として、ご家庭内で性教育をするときに心がけたいポイントと、「性的な問題」への対処法について紹介します。
これまでの経験を通して私が学んだ、「性教育の心得」をお伝えします!
我が家での性教育も、このポイントに沿っておこなっています。
目次
発達障害のあるお子さまの「性教育」のポイント
「性教育」をご家庭ではじめる前に、押さえておきたいポイントを紹介します。
- 保護者の方が「性教育」を学びなおす
- 「汚い」「いやらしい」はNGワード
- 嘘をついたり、ごまかしたりしない
- 子どもが「知りたい」タイミングで教える
- 子どもの発達段階にあわせた表現を使う
- 代替案を考える
それぞれ詳しく説明していきます。
1. 保護者の方が「性教育」を学びなおす
「性教育」とは性交や生殖のことだけではなく、思春期における心と身体の変化のこと、ジェンダーのことも含まれます。
お子さまの学校の教科書を見たり、性教育の本を読んだり、まずは保護者の方自身が「性教育」への正しい理解をしておく必要があります。
「ジェンダー」「性の多様化」に関するトピックは、近年とくに重視されています。「女らしく・男らしく」「恋愛対象は異性が当たり前」などといった固定的な考え方は、多様性を重視する現在の学校教育と矛盾してしまい、子どもが混乱してしまう可能性があります。
2. 「汚い」「いやらしい」はNGワード
身体の部位や性交に関することを説明するときに、「性器は汚いから触らない」「射精はいやらしいこと」などネガティブな表現を使うことは避けましょう。
保護者の方が後ろめたそうにすることや、言いづらそうにすることで、子どもは「性は汚い・いやらしいもの」で悪いことだと認識をしてしまいます。
「性器は子どもを作るために大切な身体の部位」「射精は子供を作るための仕組み」などと、保護者の方が冷静に堂々と説明をすることが大事です。
3. 嘘をついたり、ごまかしたりしない
お子さまから生殖や性交の質問をされたときに、動揺をしてしまう保護者の方は少なくありません。答えづらそうにすることや、その場しのぎの回答をしてしまうことは避けましょう。
例えば、「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」という説明は、子どもが幼いときには信じていても、大きくなればそれが嘘だと気が付きます。「答えづらいことを聞いたから、嘘をついてごまかした」と捉え、「性的な話題はNG」と解釈をしてしまいます。
悩みやトラブルがあったとしても、保護者の方に言えず、一人で抱え込んでしまうことに繋がりかねません。性的な問題行動を回避するのに、非常に重要なのは、行動が起こる前に「相談ができる相手がいたか」が重要なポイントとなります。
4. 子どもが「知りたい」タイミングで教える
子どもが性的な質問をしたときに、「性的な知識を知ることで、興味が高まってしまう」と懸念し、まだうちの子には早い…と教えない方もいるかと思います。
しかし「性教育は早いほど、10代の妊娠率が下がる」というデータがあります。正しい知識を早期に学ぶことで、性に対して慎重になります。
興味関心を持った「その時」に、適切な説明をすることが大切です。
5. 子どもの発達段階にあわせた表現を使う
「性教育は早い方がよい」とお伝えしていますが、説明の内容や単語は、お子さまの年齢や発達段階に応じたものにする必要があります。未就学児のお子さまにプライベートゾーンを説明するときには「水着で隠れている部分は、とても大事なところだから、人に触らせたり見せたりしてはいけない」などと、理解できる言葉を使うことが大切です。
6. 代替案を考える
人前で性器を触ってしまったとき、「触るのをやめなさい」と言っても、改善が難しいことがあります。とくに発達障害(自閉症スペクトラム障害など)や知的な遅れのあるお子さまは、性的な問題と行動がリンクできずに「なぜ触ったらいけないのか」が理解できないことがあります。
例えば、手持ち無沙汰で触っている・感触が好きだから触っているというケースがあります。その場合には、手遊びグッズ(スクイーズ、ハンドスピナー、キューブなど)を渡すなどの対処法があります。「特定の触感(さわりごこち)に執着する」という自閉症スペクトラム障害の特性によるものであるときにも有効です。
性的な発言を繰り返すときというのは、それを言うことで周りの反応を楽しんでいることや、言ってはいけないことを言っているという刺激を求めていることがあります。その場合には、欲求を満たせる別の方法をお子さまと一緒に考えるようにしましょう。
単に行動をやめさせるのではなく、なぜその言動をしたのかを確認し、適切に対応をすることが重要です。
教育を、お子さまが生きていくうえで必要となる「道徳の授業のひとつ」として捉えるようにすることがポイントです。