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発達障害のある子どもは不安やストレスを感じやすい?

更新日

不安やストレスと密接なかかわりのある「セロトニン」をご存じでしょうか。
発達障害の特性がある場合、セロトニンが不足しやすいという研究結果があります。
セロトニンを増やすことで、精神を安定させることができると言われています。

今回の記事では、発達障害とセロトニンと関係性について分かりやすく解説し、ご家庭で実践できる「不安・ストレス」への対策となるセロトニンの増やし方を紹介します。

アイキャッチ

発達障害と「セロトニン」の関係

発達障害の特性がある方は、先天的にセロトニンの分泌量が少ないという研究結果がでています。
セロトニンが少ないことにより、「不安」や「ストレス」を感じやすいと言われています。

セロトニンとは

セロトニンとは、脳内の神経伝達物質のひとつで、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
セロトニンには、精神を安定させる働きがあり、具体的には以下のような作用があります。

● 脳を最適な覚醒状態にする(リラックスさせる、意欲・向上心や集中力を高める)
● 感情をコントロールする(怒りや恐怖・喜びや快楽など感情を調整する、平常心を保つ)
● 自律神経を整える
● ストレスを軽減させる
● 睡眠ホルモン「メラトニン」を作る

セロトニンが多くなるとリラックスできたりやる気アップにつながるイメージ図

セロトニンが不足すると以下のような症状が見られます。

● 脳の覚醒に異常が出る(多動や衝動性が起こる、意欲・向上心や集中力が低下する)
● 感情が高ぶる(いらだち、不安・恐怖の感情がコントロールできなくなる)
● 自律神経の乱れにより、倦怠感・頭痛・肩こり・吐き気・めまいなどの症状が出る
● 慢性的にストレスを感じやすくなる、疲弊しやすくなる
● うつや不眠の症状が出る

セロトニンが少ないと、不安やストレス、やる気ダウンにつながるイメージ図

発達障害のある方は、脳機能の特性によって「セロトニン」が不足してしまい、その結果、不安やストレスを感じやすくなります。詳しく解説します。

セロトニンが不足する原因

セロトニンが不足する原因には、ストレスや腸内環境の乱れ、不規則な生活習慣があります。

発達障害がある場合には、もともとセロトニンが少ないだけではなく、障害によって以下のような困りごとが生じやすいために、セロトニンが不足しやすいと考えられています。

 特性による「生きづらさ」によってストレスを感じやすい

ストレスがかかるとコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは、セロトニンを減少させる(セロトニンを合成するために必要なトリプトファンを減少させるため)と言われています。
発達障害の特性によって、日常生活に支障が出たり、対人関係がうまくいかなかったりするなどの生きづらさがあり、ストレスを感じる場面が多いことがあります。詳細は後述します。

 腸内環境が乱れやすい

セロトニンは腸管内で生成されます。腸内のバランスが乱れると、セロトニンの生成量が減少することがあると言われています。
ASDのある方は、腸内の善玉菌と悪玉菌に偏りが見られることがあり、下痢・便秘などの症状が起こりやすいと言われています。また、ストレスによって腸内細菌のバランスが崩れることもあります。

 睡眠障害が起こりやすい

睡眠障害があると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が減少し、それにともないセロトニンの分泌も低下することがあると言われています。セロトニンはメラトニンの原料となるためです。
ADHDのある方は、寝つきが悪い・眠りが浅く途中で何度も目覚める・日中の眠気・睡眠リズムの乱れなどの睡眠障害が起こりやすいとされています。不規則な生活で体内時計が乱れることでメラトニンの分泌が減少することもあります。

不安やストレスで脳のセロトニンが減り、腸内環境が悪くなっている女児

セロトニンは「社会性・協調性」にも影響をもたらすと言われています。
セロトニンを増やすことで、不安やストレスだけではなく、発達障害の特性を緩和する研究が進められています。

セロトニンを増やす方法

では、セロトニンを増やすためにはどうすればよいのでしょうか。
発達障害やうつ病の薬物療法で、セロトニンを増やす効果のある薬を処方されることもありますが、今回はご家庭で実践ができる方法を紹介します。

セロトニンを増やす食事

セロトニンを作るために必要なトリプトファンを摂取するようにしましょう。セロトニンの合成にはビタミンB6、マグネシウム、亜鉛などの栄養素も必要です。
具体的な食材は以下です。

 トリプトファンを多く含む食材

大豆製品(豆腐・納豆・味噌・醤油等)、乳製品(チーズ・ヨーグルト・牛乳等)、ナッツ類(アーモンド・くるみ・カシューナッツ等)、卵、バナナ、レバー など

 ビタミンB6を多く含む食材

赤身の魚・肉、鶏肉、さつまいも、玄米 など

 マグネシウムを多く含む食材

穀類(玄米・雑穀・そば等)、海藻類(ひじき・昆布・わかめ等)、ナッツ類、大豆製品、ほうれん草 など

 亜鉛を多く含む食材

魚介類(牡蠣・ほたて・にぼし・たらこ等)、赤身の肉、レバー、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類 など

セロトニンを生成するためには炭水化物も必要となるため、日々の食事にこれらの食材をプラスするとよいでしょう。

バナナ、レバニラ、納豆ごはんを食べている男の子脳内でセロトニンが増えている様子

感覚特性(味覚過敏)やこだわり特性があり、紹介した食材が苦手な場合には、無理に食べさせようとせずに、サプリなどで補うこともおすすめです。

セロトニンを増やす生活

リズムがある運動や太陽を浴びることで、セロトニンの分泌を促すことができます。

 適度な運動をする

動きや呼吸などのリズムが一定の運動をすることで、セロトニンの分泌を活性化する効果が期待できます。5~30分程度の運動を習慣的におこなうことがポイントです。
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スクワット、ストレッチ、ヨガ など

 太陽の光を浴びる

日光を浴びることで、セロトニンを分泌する神経を活性化させることができます。蛍光灯などの照明の光の強さでは、この神経に働きかけることができません。屋外で直接太陽の光を浴びることがポイントです。30分の日光浴で、セロトニンの活性化が起こると言われています。

朝起きて太陽を浴びながら、適度な運動を短い時間でも続けていくことが重要です。規則正しい生活を送ることも、セロトニンを増やすのに必要なことであるため、生活習慣を見直すようにしましょう。

ニコニコで日光を浴びながらランニングしている子ども+脳内でセロトニンが増えている様子

不安やストレスによって体調を崩しているとき、引きこもりがちになるお子さまは多いと思いますが、外で運動をすることはリフレッシュにもなるため、ぜひ取り入れてみてください。

特性による「苦手」へのサポートも大事

先述した通り、発達障害の特性による「苦手」が「生きづらさ」となり、不安やストレスに繋がることもあります。
特性へのフォローをおこなうことも非常に重要です。

特性へのアプローチ方法は以下のコラムもあわせて読んでみてください。

ストレスに繋がりやすい特性による「苦手」の例を紹介します。

 急な予定変更が苦手

「行動の切り替えが苦手」「想定外のことへの対処が難しい」などの特性がある場合には、一日のスケジュールが当日に変わるなど「急な予定の変更」が大きな不安やストレスになることがあります。
自分が予想していたこと以外の出来事が起こることで、非常に強い不快感があったり、混乱してしまったりするためです。
予定変更がある場合には、「事前に」「変更内容を具体的に」「変更の理由を明確に」伝えることがポイントです。

 感覚特性がある

「視覚過敏(例:日の強い光が苦手)」「聴覚過敏(例:電車や掃除機など特定の音が苦手)」などの感覚特性(感覚過敏)がある場合には、日常生活の中で耐え難いほどの苦痛を感じることがあります。
特性のない方にとっては何らストレスのない環境であっても、感覚特性がある場合には、強いストレスがかかることがあるということです。
特性に応じたサポートや対処が必要になります。詳細は 「感覚特性」とは?感覚過敏・感覚鈍麻ってどんな症状? をご覧ください。

特性による「苦手」は、本人にとってはどうしようもないことであり、日々の生活の中で起こる困難に不安やストレスを感じているお子さまも少なくありません。

また、特性による苦手でネガティブな経験をしたお子さまの場合は、自己肯定感が低いことがあります。「また失敗するかもしれない」「怒られたり笑われたりするかもしれない」と不安な気持ちが出てくることもあります。
「記憶障害」がある場合、ネガティブな経験が鮮明に思い出されてしまうこと(フラッシュバック)もあります。

スモールステップで、「できた」という成功体験を積み重ね、不安な気持ちを自信に変えるためのサポートをおこなうことも非常に重要です。

聴覚過敏で苦痛を感じている子ども+脳内でセロトニンが減っている様子

セロトニンを増やすだけではなく、減らさないために「不安・ストレス」の原因になりやすい発達障害の特性にアプローチすることも大切です。

健やかな日常を送るために

発達障害のあるお子さまは、今回ご紹介をしたように、さまざまな要因によってストレスや不安を感じやすいと言われています。

  • セロトニンを増やすための日々の食事や生活の改善
  • セロトニンを減らさないための特性へのサポート

を保護者の方が意識することで、お子さまの健やかな日常生活の実現を目指すことができます。

リフレッシュや気分転換も大事ではありますが、そもそもストレスや不安の原因となるものにアプローチをして、お子さまが過ごしやすい環境を作り出すことがポイントになります。
ご家庭だけではなく、学校生活や余暇時間(放課後や休日)においてもサポートをすることが大切です。

学校に発達障害へのサポートを求める「合理的配慮」もあわせて検討してみてください。
詳細は 発達障害のあるお子さまへの合理的配慮【事例紹介】の記事をご覧ください。

不安やストレスによって、不登校や行き渋りになるお子さまは少なくありません。
今、大きな問題を感じていない場合でも、予防をしておくことが大切です。児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」放課後等デイサービス「ハッピーテラス」では、発達に課題のあるお子さまの、「できる」を増やし「自信」をつけるための療育を提供しています。
お子さまの特性への理解を深めたい、特性へのアプローチ方法を知りたいという方は、ぜひお気軽にお問合せください。


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